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二章 後輩冒険者

龍と相対すメイド

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さて、勇者と一緒にゴブリンを殺しに行くなら、返すわけにも行かないんだよな。
今の賢者で、神龍まで来られたらどうしようもないと思うし。

コウマも同じように考えていたらしく、拳に風を纏わせる。
「ごめんね、やっぱり君を帰すことはできそうにないよ。」
「なに?」神龍が圧をかけるように反応する。
「私達は今勇者に襲われているゴブリンを救出するために来ている、国際議会の使節なんだよね。だから、これからゴブリンを蹴散らしに行く君とは敵でこれ以上ゴブリンに損害を与えられると困るんだよね。」
神龍は殺される事を察知して先手を打った。全身から光を放ちこちらを目くらましで怯ませて、逃げる算段なのだろう。
まぁ俺はとっさのことでがっつり食らった。目が焼けて失明したらどうするんだよ本当に。
神龍が飛び去ろうとする進行方向に木製の剣が飛んできて、神龍の動きを止める。フーロが投げた神樹の剣だろう。
「なんのつもりだ小娘?」
神龍も天狗ではなく人に退却の邪魔をされると思ってなかったらしい。物凄く睨みつけている。
「こちらはあなたを帰すことはできないと言ったはずです。」フーロが神龍を見上げてはっきりと言う。
「貴様に俺を止めることができると?」神龍がフーロを見下ろして高圧的に問う。おそらく今の実力でも人間には負けると思ってないから、この態度の変わり具合なのだろう。
「できます!ご主人様!ここは私におまかせください。」そう言って、フーロは7個のサイコロをてから滑り落としていく。
地面に落ち目が確定したサイコロからそれぞれ光を放ち消えていく。
俺はまだ目くらましで視覚がおぼつかない。
できれば、俺はフーロに戦って欲しくはない。止めようとしたがコウマが俺を遮って許可を出した。
おそらく今のフーロなら負けないだろう。でもわざわざ殺生に行かなくてもいいと思う。

「なんで許可した?」俺はコウマに聞く。
「あなたは少し彼女を甘く見過ぎ。たとえ傷ついて欲しくないとか過保護な理由でも、ここまで付いて来てまで自分の役目を果たそうと決意を固めている子に失礼。やる気があるってほぼ勝てるなら経験を積ませるべきよ。ずっとあの館に籠ってるわけじゃないなら、生きてくためにも必要な事よ。」
一理あるが、、ここで俺がやれば問題ないとかいったら、居なかったらどうすると並行線になりそうなので言わない。いざ本当に必要になった時に初めてじゃ遅いのは十分わかってる。

俺はまだ頭の中で葛藤をしているものを端に追いやり、フーロのことを見守ることにした。
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