ウチの学校の番長は特進科2年生

夏輝

文字の大きさ
8 / 20

「イク」というのは、どういうことなんだろう?

しおりを挟む
 八章
 
 2人の初体験の翌日から夏休みが始まった。特進科の律輝は夏休みでも月曜日から金曜日までの午前中、学校で夏季講習がある。それが終わって午後からは、自宅から少し離れたホームセンターでアルバイトをすることにした。
 恋人たちには1年に3回、ビッグイベントがある。お互いの誕生日とクリスマスだ。紗里の誕生日は5月5日なので、2人が付き合う前に過ぎてしまったが、律輝の誕生日はトラブルがあったものの紗里が祝ってくれた。残るはクリスマスだ。
 律輝から見れば18歳の紗里は大人の女性なので、安っぽいクリスマスプレゼントを贈る訳にはいかない。小遣いを少しずつ貯めても大した額にならない。そこで、少し早いがクリスマス資金を稼ぐため、アルバイトすることにしたのだ。
 そして、夜は夏休みの課題に取り組む。やっていることはハメを外すこともあるが、これでも律輝は特進科の生徒だ。
 一方の紗里も予定があった。車の運転免許を取るため自動車学校に通うのだ。紗里の父、健蔵が「車の免許は一生ものの資格だから、金は出してやる」と言ってくれたからだ。
 免許を取ったら、父の経営する九重塗装店のライトバンを借りて、律輝と小旅行をするつもりだ。ライトバンでドライブとは見栄えは良くないが、2人で行くなら車など何でもよかった。
 お互いに予定が詰まっていても、それでも週の半分は会って、何度か体を重ねていた。今ではもう紗里は「痛い」とは言わなくなっている。
 
 
 アルバイト先での律輝の仕事はバックヤードの作業だった。トラックが運んで来た商品を店舗内の倉庫に納め、商品の種類ごとに棚に整理して並べる。そして、店内の商品棚に並んでいる在庫の数をチェックして、棚の商品が足りなければ裏の整理棚から補充する。商品の数が多いので、結構忙しかった。
 律輝の指導係には、戸川真紀という女性が付いてくれた。真紀は37歳のシングルマザーで、働きながら9歳の娘を育てているという。明るくて、笑顔が爽やかで、責任感の強い女性だった。
 当初、17歳の律輝にとって37歳の真紀は、異性として見る相手ではなかった。
 しかし、アルバイトを初めて一週間ほど経った頃、バックヤードで、棚から落ちてきたトイレットペーパーの入った大きな段ボール箱が、ちょうど近くを通りかかった真紀を直撃しようとした。それを一緒にいた律輝が自分の方に引き寄せて、事なきを得た。
 そのとき、助けるためとはいえ真紀の体を抱きしめた。紗里の細い体と違い、むっちりとした体は成熟した女性を感じさせた。それ以来、律輝は真紀のことを大人の魅力を持った女性だと思っている。

 盆休みが近づいたある日のこと。律輝は地元の商店街で中学時代の同級生、横山智也とばったり会った。智也は以前、キスからセックスまで、どんな流れで進めて行けばいいのか、一緒に考えてくれた友人だ。
 近くのファストフード店でお互いの近況報告をする。智也は興味津々で聞いてきた。
 「いつか相談してきた彼女、うまくいってる?」
 律輝は少し頬を赤らめる。
 「うん、順調。あのときはいろいろ考えてくれてありがとう」
 智也は少し声を低くした。
 「セックスできた?」
 律輝も同様に低い声になった。
 「うん、できた。いろいろ考えたのに、結局きっかけを作ってくれたのは彼女だった」
 「そうかそうか、よかったな」
 腕を組んで、智也は偉そうにうなずいている。しかし、まだ智也は童貞だ。ただ、友達に聞いたりネットで調べたりして、情報だけはたくさん持っている。言ってみれば“セックスの耳年増”のようなものだ。
 「リッキ、セックスというのはな、単にアレを入れて腰を動かすだけじゃないんだぞ。ちゃんと相手をイカせなきゃ。そうでないと本当の意味で、セックスをやったことにはならないんだ」
 「イカせる?」
 「そうさ。ちゃんと相手をイカせて満足させないと、本当の心のつながりはできない。そういうもんだ」
 「心のつながり‥‥」
 考え込む律輝に智也は追い討ちをかけるように言った。
 「女の中には、『彼氏は会えばセックスばかりして、自分の体が目当てで付き合ってるんじゃないかと思ったから別れた』って言う子もいるんだぞ」
 律輝は黙ってしまった。男性の場合、絶頂は射精という形でわかる。だが、女性の場合は本人の感覚なので、聞いてみないとわからない。相手の表情や仕草でわかるほど、律輝はまだ経験を積んでいない。
 智也と別れてから、律輝は本気でこの問題を悩み始めた。
 自分はちゃんと紗里を満足させているのか? もしかしたら、自分勝手に快楽を味わっているだけではないのか? そうだとしたら、自分は紗里を性欲のはけ口に使っているのではないのか?
 ―違う! 僕は本当にサリが好きなんだ!―
 しかし、紗里の絶頂を自分が感じる訳ではないので、自分とのセックスを彼女がどう思っているのかわからない。紗里はセックスではなく、本当は楽しくおしゃべりしたいだけなのかもしれない。仕方なく自分に付き合っているだけかもしれない。律輝の頭の中は混乱してきた。
 
 
 盆休み明け、律輝は地元の商店街を歩いていた。今日は母の美智が友人と夕食を外で食べてくるため、何か食べに行けと言って食事代をもらっている。
 しかし、商店街の店を一通り見てみたが、これといって食べたい物はなかった。仕方なく、弁当屋で弁当を買って帰る途中だった。
 帰り道でアルバイト先の上司である戸川真紀と出会った。真紀は両手に大きな買い物袋を持っている。
 「戸川さん、すごい荷物ですね」
 「うん。スーパーで安売りしてたから、つい買いすぎちゃった」
 笑顔で言っているが、真紀の荷物は大きいだけでなく重そうだった。
 「良かったら荷物持ちましょうか?」
 だが、真紀はすまなさそうに首を横に振る。
 「いいよ、悪いから。ウチ、近くだし」
 「じゃあ、やっぱり持ちます。近いなら自宅まで持っていきますよ。僕、結構力持ちなんです」
 笑顔でそう言って、律輝は真紀の両手から荷物を取り上げた。真紀はますます申し訳なさそうな顔になる。
 「2つもいいよ。1つはわたし持つから」
 「じゃあ、戸川さんはこれを持ってください」
 律輝は自分の弁当の袋を差し出した。
 「ホント、ごめんね」
 そして、2人は真紀の自宅への道を歩き出した。
 
 真紀の自宅は商店街から10分ほど歩いたところにある、5階建ての瀟洒なマンションだった。3階の真紀の部屋の玄関に荷物を下ろして、律輝は帰ろうとした。だが、
 「待って。お礼に茶でも飲んでいって」
 と引き留められた。どうせ家に帰っても1人で弁当を食べるだけだと思った律輝は、真紀の招きに応じた。
 ダイニングテーブルの椅子に腰を下ろし、律輝は部屋を見回す。
 「今日は娘さんはいらっしゃらないんですか?」
 真紀はコーヒーを入れ始めた。
 「うん。去年から始めたんだけど、お盆で実家に帰ったとき、そのまま娘は一週間、実家に預けることにしてるの。実家は田舎の大家族で、娘と仲の良い従姉妹がいるから、普段はわたしと2人暮らしのあの子にとって、新鮮で楽しいらしいの」
 そう言ってコーヒーカップを持ってきながら、テーブルに置いてある律輝の弁当を見た。
 「それ、晩ご飯?」
 「はい。今日は母が友達と食事に行ったので、適当に食べろってお金もらったんです。でも、食べたい店がなかったから、これにしました」
 「そうなんだ」
 真紀は少し考え込む顔になって、笑顔で言った。
 「じゃあ、ウチで食べていかない?」
 「えっ?」
 「娘がいない間、わたし、料理手抜きしてるの。今日の晩ごはんはスーパーのお惣菜。でも、テレビ見ながら1人でお惣菜食べるのってさみしいじゃない。2人で食べる方が楽しいかなって思って」
 大人の魅力を持っている女性だと思っている真紀との食事は、律輝も願ったりだった。
 
 真紀の夕食のメニューは総菜のメンチカツと刻んだキャベツにご飯、それとインスタントのカップスープだった。スープは律輝の分も出してくれた。
 アルバイト先でも仲はいいので、食事中の会話は弾んだ。食後のお茶を飲みながら、真紀は興味津々といった顔で聞いてきた。
 「矢村君って、彼女はいるの?」
 女性はいくつになっても、こんな話題が好きなようだ。律輝は少し照れた顔になる。
 「‥‥一応、います」
 「やっぱりいるんだ。矢村君、かわいい顔してるから、いるんじゃないかと思ってた」
 ますます真紀は興味を持ってくる。
 「彼女って、どんな人?」
 律輝は紗里の顔を思い浮かべた。
 「僕より1つ年上で、僕より背が高くて、手足が長くて、顔が小さくて、モデルさんみたいな体形です」
 真紀は笑い出した。
 「何それ? 彼女自慢? わたしだって昔はかわいかったんだから」
 「戸川さんは今でもかわいいですよ。大人の女性のかわいらしさって言うか‥‥」
 照れながらも、真紀はうれしそうな顔になった。17歳の男子高校生から、かわいいと言われると、くすぐったいような気分になる。
 「うまくいってる?」
 「ええ、まあ‥‥」
 言葉の中に、真紀はどこか迷いがあると思った。この辺りは長年、女をやっている勘だ。
 「何か悩みでもあるの? 恋愛相談なら受けるよ。君より人生経験が長いから、いいアドバイスができるかも」
 真紀の洞察力の鋭さに律輝はギクリとした。だが、セックスで女性がイクときは、どんな様子になるのかなど、相談できることではない。
 「別に、何もありません」
 そう答えるしかなかった。しかし、律輝の様子に真紀はなぜかうなずいている。
 「もしかしたら、エッチなこと?」
 鋭い指摘に律輝は一瞬、肩が揺れた。真紀はそれを見逃さなかった。
 「そうか‥‥そうよね。君ぐらいの年頃はそっちのこと、すごく気になるもんね。でもね、言いにくいとは思うけど、そっち方面の知識はちゃんと身につけないと、後で大変なことになるかもしれないよ」
 律輝の頭の中は迷いでグラグラ揺れていた。アルバイト先の上司に相談できることではない。しかし、大人の女性の真紀ならば、今の自分の悩みに適切なことを言ってくれるかもしれない。
 迷いに迷い、律輝は決断した。
 「‥‥あの‥‥絶対に秘密にしてくれますか?」
 「約束する」
 律輝は少し赤い顔でうつむいた。
 「女性がセックスでイクときって、どんな様子になるんでしょうか?  表情とか、仕草とか」
 これは真紀にとっても予想外の話だった。驚いている彼女に律輝は真摯な目を向けた。
 「僕と彼女は本当にお互いのことを大切に思ってます。だから、大切な人が欲しくて男女の仲になりました。でも、僕はわからないんです。セックスは最高レベルの愛情表現のはずなのに、ちゃんと気持ちが伝わっているんだろうか。もし、自分勝手な愛情の押し付けでやってるなら、彼女に対して、とんでもなく失礼なことをしてるんじゃないか」
 そして、真紀の目を真っすぐ見た。
 「僕は彼女を性欲のはけ口なんて思っていません。本当に大好きで大切な人なんです。だから彼女には、僕の気持ちがしっかり伝わる、満足のいくセックスをしてほしいんです」
 真紀は律輝の言葉に驚きながら感動していた。こんなにも女を大切に思い、優しく扱おうとする男を見たことがない。別れた夫は律輝ほど女を大切にしなかった。こんな男と結婚していれば、自分は離婚などしなかっただろう‥‥
 彼女のことが大好きで、それ故に悩んでいる彼の力になりたくなった。歳の差を考えると葛藤はあるが、それでも何とかしてあげたかった。
 「‥‥イクときの様子なんて自分じゃわからない。教えてあげるから、わたしで試してみる?」
 真紀は驚く律輝に優しく微笑んだ。
 「彼女のための勉強よ」
 律輝の心は決まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件

こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。 ・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。 ・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。 ・物静かで儚げな美術部員。 ・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。 ・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。 拓海の生活はどうなるのか!?

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

処理中です...