君と歩く、この道を ~助け合い育みあって~

青空 蒼空

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 咲奈は もうすぐ3歳 ここまでよく育ってくれたと思うが 史郎の思うようには いつも動いてくれない
 2歳になってからは 特にそれを感じる

 赤ちゃんの時は 夜泣きもあり 史郎は まともに睡眠もとれずに仕事に向かった
 離乳食が始まると 食べてくれなくて 頭を抱えた
 1歳に なったときには 好き嫌いが激しく 唯一食べられる白飯と納豆を 毎日与えた時もあった
 さすがに これではダメかと思ったが 仕事も忙しくて 食事の工夫なんて史郎には出来なかった

 一番困るのは やはり 体調を崩すことだ
 子どもは 体が弱い
 すぐに熱を出す
 保育園は 熱が出たら 預かってはもらえない
 その時は 今日のように 会社を早退して 娘を迎えに行かなくてはならない
 挙句の果てには 疲れている史郎は 娘の風邪が移ることもしばしば
 解熱剤を飲み フラフラになりながら 仕事に行くことも多かった

 「咲奈ちゃん お父さんが迎えに来たよ」

 女性の保育士が 咲奈に声をかける
 赤い顔をした咲奈を見ると 熱があるのがわかる
 このまま病院に行くか と史郎は考える
 こんな時のために 咲奈のマイナンバーカードは 持ち歩いていた

 「ありがとうございました 咲奈 行こうか」
 「いや」
 「いやじゃないだろう 熱があるんだから 病院に行こう」
 「いや!」

 また はじまった・・・史郎はため息を吐く

 「ほら 行くぞ!」

 言うことを聞かない咲奈を 無理やり抱え上げ 保育士に頭を下げ連れて行く
 抱え上げた咲奈は体が熱い かなり熱があるのだろう

 「いやー‼」

 大声で泣き暴れだす咲奈を 落とさないように しっかりと抱えながら前に進む

 「助けて!!」
 「咲奈! 静かにしなさい!」

 行きかう人々の視線が痛い

 最近 咲奈は よく 助けてと叫ぶ
 正義の味方が助けに来る 某アニメのヒロインの真似だ
 自分の思い通りにならないと このように叫ぶ
 本当に困りものだと 史郎は うんざりする

 家でも このように叫ぶので 虐待の疑いで通報され 警察が訪れたことも何度かある

 病院に着いたが 咲奈が五月蠅いので 周りに迷惑になると思い外で待つことにしたが さすがに熱もあり疲れたのか 診察前に寝てしまった

 咲奈が熱を出したことに対して心配するより 静かになったことに対してホッとしてしまう自分に 父親失格だな と史郎は落ち込む

 診察の時に咲奈は また泣き叫んだが なんとか 無事に終わり 薬も処方され 帰宅した 
 だが 寛いでる暇はない

 咲奈は 熱があるからか 家に着いて すぐ眠ってしまった
 薬を飲ませたいと思ったが 今のうちに家事を済ませてしまおう と史郎は考える

 洗濯をして ご飯の用意をしている時に 咲奈が起きて大声で泣き出した

 「もう・・・いい加減にしてくれよ・・・」と史郎は呟く

 史郎は 綺麗好きで 咲奈が生まれるまで 部屋は綺麗なものだった
 1人暮らしが長かったからなのか? 史郎の性格なのか? 家事全般得意で 潔癖まではいかなくとも それに近いところはあった
 今は 咲奈のおもちゃが散乱し 畳まれていない洗濯ものが あちこちに散らばり 洗ったものか 汚れたものか 区別もつかないぐらいだ
 
 料理も得意で なんでも手作りしていたが 今は そうはいかない
 スーパーの お惣菜の世話になることも増えてきた

 子どもと生活をしているので 意識を変えなきゃいけないのは 分かっているが 長年培った 完璧な生活を崩すのは 史郎にとって苦痛で 今の この部屋の状況は 自分自身が許せなくて 時折 大声で叫びたくなる

 仕事に関しても同じだ 人に頼ることが苦手な史郎は 咲奈のために周りに頼らざるを得ない
 そうやって 皆に迷惑をかけていることが辛くて仕方がなかった
 しかも 部長からの嫌味も付いてくる
 同僚は 気にするなと言ってくれるが 史郎が休むと 周りの人たちの仕事が増え 残業を余儀なくされる
 
 そんなことも 史郎には 辛くて どうしよもなかった

 史郎は手を止め 咲奈の所に ご飯と薬を持っていく
 好き嫌いが激しい咲奈は おかずをあまり食べようとしない
 だが白飯は食べてくれるので 取り敢えずは それを食べさせるためにスプーンですくい 咲奈の口元に持っていくが・・・やはり食べてくれない
 薬を飲ませたいので 少しでも食べてほしいと 史郎は思うのだが 大泣きしてダメだ

 「食べないと 薬飲めないだろう! 薬 飲まないと死ぬぞ!」

 ダメだと思いながらも 史郎は 咲奈を脅してしまう
 どうやったら 言うことを聞いてくれるのか・・・
 脅しても いい方向にはいかないと もう 何度も経験しているのに また やってしまう
 そして自己嫌悪に陥る
 その繰り返し

 「もう・・・どうしたら いいんだよ‼」

 スプーンを投げて 史郎は 大声で怒鳴ってしまった
 それを聞いて咲奈は 余計に泣き叫ぶ

 「泣きたいのは 俺だよ・・・」 

 すると 咲奈が泣き止んだ・・・?
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