4 / 9
4
しおりを挟む
咲奈は無事 元気になったが やはり 今度は史郎が熱を出した
これ以上 周りに迷惑をかける訳にも行かず 今回も解熱剤を飲んで出社した
マスクをして咳き込みながら仕事をこなしていると 部長に呼ばれた
「何でしょうか? ゲホッ」
「移動だ 来週から登坂に勤務だ よろしく頼む 荷物をまとめたら もう帰っていい 週末はゆっくり休みなさい」
やはり そうなってしまったか・・・
史郎は ある程度 覚悟していた
登坂にある会社は 部長の妹が経営していると言われている
史郎が今務めている会社でも「出産してから働きたい」と思う女性も少なからずいた
しかし そのことを会社に物申すと 必ず登坂に勤務と言われ 自宅からの距離を考えると 辞めざる終えないことが殆どだ
史郎の自宅からは 今勤務している会社の逆方向なので 距離は 今より遠くなるが通えなくもない
まぁ 関連会社に左遷ということだ
咲奈を養っていかなくてはならない
それに 史郎の年齢では 転職も難しい
移動を受けるしかない
「承知しました・・・ゲホッ」
史郎は 咳き込みながら 力なく答えた
「役職も無くなるので給料も下がるが 子育てしやすい環境だから 君にピッタリだと思うぞ さあ 今日は もう帰っていい 引継ぎは必要ない ここ数年 みんなで君の仕事もしていたからな ハハハハハ」と部長は笑った
慰めのつもりか⁉
腹が立つだけなので 咳き込みながら さっさと準備を始めた
史郎は 順調に課長まで昇進していた
金曜日に部下を連れて 飲みに行くのも大好きだった
子育てが始まってからは それもできない
大好きな酒は 咲奈を引き取ってから 飲む時間がない
『俺の人生って なんなんだろう』と史郎は思いながら 職場のみんなに挨拶をした
同僚たちは 気まずい顔をして 軽く「お疲れ様・・・」と言って すぐに仕事に戻った
冷たいものだ・・・
また熱が上がってきた
解熱剤が切れる時間か
咲奈を迎えに行く前に また飲んでおこう
こんなことも慣れたもんだ と史郎は情けなくなる
☆☆☆☆
「あら 咲奈ちゃんのお父さん 今日は早いですね」
時間まで保育園に預けようかとも思ったが 近くの公園に連れて行ってあげようと思い迎えに来た
週末は いつも咲奈を泣かしながら スムーズに進まない家事をこなすことで終わる
なので 公園で遊ばすことも できなかった
風邪でしんどいが やはり 娘の喜ぶ顔が見たいと史郎は思うので頑張る
公園に着くと 咲奈と同い年ぐらいの子どもたちが たくさんいて 周りには母親たちも たくさんいた
史郎は 少し後悔したが 咲奈が喜んで公園で遊びだした
知らない子どもたちばかりなのに 咲奈は もう溶け込んでいる
とても 楽しそうにしている咲奈を見ると 連れてきてよかったな と史郎は嬉しく思う
人見知りしないんだな と史郎は思った
どちらかというと 史郎は 人見知りする方だ
咲奈のように 人の中に溶け込むのが上手かったら 子育ても少しは楽だったのかな?と史郎は考える
家の中で あんなに我儘な咲奈が 滑り台の順番を ちゃんと守っている
史郎は そのことに驚いた
保育園で ちゃんと教えてもらっているのかな?と思った その時・・・
「いや! とまってるの!」
咲奈が大声で叫びだした
滑り台の順番が回ってきた咲奈が 滑ろうとしない
咲奈の後ろは 子どもたちで大渋滞だ
史郎は焦って 滑り台の所まで走って行った
「こら! 咲奈! 滑りなさい! ゲホッ」
「いや! とまってるの!」
何が「止まってるの!」だ 意味が分からない!と史郎は焦る
「降りてきなさい!咲奈! ゲホッ・・・こんな事したら 2度と公園に連れて行かないぞ! ゲホッ」
「いや!」
またもや 脅しても逆効果なのは分かるが 周りに迷惑をかけている我が娘が 恥ずかしくて仕方がない
こんなことなら連れてこなければよかった と咳き込みながら史郎は後悔した
仕方がないので 逆から滑り台を上り 咲奈を引きずり降ろして 泣き叫ぶ娘を抱えて 周りに謝りながら公園を後にした
もう しんどい
もう・・・いやだ・・・
いやだと思っても 時間は過ぎていく・・・
これ以上 周りに迷惑をかける訳にも行かず 今回も解熱剤を飲んで出社した
マスクをして咳き込みながら仕事をこなしていると 部長に呼ばれた
「何でしょうか? ゲホッ」
「移動だ 来週から登坂に勤務だ よろしく頼む 荷物をまとめたら もう帰っていい 週末はゆっくり休みなさい」
やはり そうなってしまったか・・・
史郎は ある程度 覚悟していた
登坂にある会社は 部長の妹が経営していると言われている
史郎が今務めている会社でも「出産してから働きたい」と思う女性も少なからずいた
しかし そのことを会社に物申すと 必ず登坂に勤務と言われ 自宅からの距離を考えると 辞めざる終えないことが殆どだ
史郎の自宅からは 今勤務している会社の逆方向なので 距離は 今より遠くなるが通えなくもない
まぁ 関連会社に左遷ということだ
咲奈を養っていかなくてはならない
それに 史郎の年齢では 転職も難しい
移動を受けるしかない
「承知しました・・・ゲホッ」
史郎は 咳き込みながら 力なく答えた
「役職も無くなるので給料も下がるが 子育てしやすい環境だから 君にピッタリだと思うぞ さあ 今日は もう帰っていい 引継ぎは必要ない ここ数年 みんなで君の仕事もしていたからな ハハハハハ」と部長は笑った
慰めのつもりか⁉
腹が立つだけなので 咳き込みながら さっさと準備を始めた
史郎は 順調に課長まで昇進していた
金曜日に部下を連れて 飲みに行くのも大好きだった
子育てが始まってからは それもできない
大好きな酒は 咲奈を引き取ってから 飲む時間がない
『俺の人生って なんなんだろう』と史郎は思いながら 職場のみんなに挨拶をした
同僚たちは 気まずい顔をして 軽く「お疲れ様・・・」と言って すぐに仕事に戻った
冷たいものだ・・・
また熱が上がってきた
解熱剤が切れる時間か
咲奈を迎えに行く前に また飲んでおこう
こんなことも慣れたもんだ と史郎は情けなくなる
☆☆☆☆
「あら 咲奈ちゃんのお父さん 今日は早いですね」
時間まで保育園に預けようかとも思ったが 近くの公園に連れて行ってあげようと思い迎えに来た
週末は いつも咲奈を泣かしながら スムーズに進まない家事をこなすことで終わる
なので 公園で遊ばすことも できなかった
風邪でしんどいが やはり 娘の喜ぶ顔が見たいと史郎は思うので頑張る
公園に着くと 咲奈と同い年ぐらいの子どもたちが たくさんいて 周りには母親たちも たくさんいた
史郎は 少し後悔したが 咲奈が喜んで公園で遊びだした
知らない子どもたちばかりなのに 咲奈は もう溶け込んでいる
とても 楽しそうにしている咲奈を見ると 連れてきてよかったな と史郎は嬉しく思う
人見知りしないんだな と史郎は思った
どちらかというと 史郎は 人見知りする方だ
咲奈のように 人の中に溶け込むのが上手かったら 子育ても少しは楽だったのかな?と史郎は考える
家の中で あんなに我儘な咲奈が 滑り台の順番を ちゃんと守っている
史郎は そのことに驚いた
保育園で ちゃんと教えてもらっているのかな?と思った その時・・・
「いや! とまってるの!」
咲奈が大声で叫びだした
滑り台の順番が回ってきた咲奈が 滑ろうとしない
咲奈の後ろは 子どもたちで大渋滞だ
史郎は焦って 滑り台の所まで走って行った
「こら! 咲奈! 滑りなさい! ゲホッ」
「いや! とまってるの!」
何が「止まってるの!」だ 意味が分からない!と史郎は焦る
「降りてきなさい!咲奈! ゲホッ・・・こんな事したら 2度と公園に連れて行かないぞ! ゲホッ」
「いや!」
またもや 脅しても逆効果なのは分かるが 周りに迷惑をかけている我が娘が 恥ずかしくて仕方がない
こんなことなら連れてこなければよかった と咳き込みながら史郎は後悔した
仕方がないので 逆から滑り台を上り 咲奈を引きずり降ろして 泣き叫ぶ娘を抱えて 周りに謝りながら公園を後にした
もう しんどい
もう・・・いやだ・・・
いやだと思っても 時間は過ぎていく・・・
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました
cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。
そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。
双子の妹、澪に縁談を押し付ける。
両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。
「はじめまして」
そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。
なんてカッコイイ人なの……。
戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。
「澪、キミを探していたんだ」
「キミ以外はいらない」
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる