秘密を忘れぬ ~僕はもう一度歩き出す~

青空 蒼空

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 部屋の中に リラとガータが入って来た

 ガータは ライターで囲炉裏に火をつけた 
 ライターは あるんだと奏太は思い この国は なんだか不思議だな?と思った

 手際よく火をおこし 先程 捌いていた 兎を焼き始めて 奏太は目を反らした

 リラは 収穫した食料を 隠し扉にいくつか入れた
  唯一 奏太が食べられそうな トマトも そこに入れていたので 今日は食べられそうにないなと残念に思った

 兎の焼ける匂いは 意外に 美味しそうな匂いがした

 お腹が空いているからだろうか・・・小学校で飼っている かわいい兎を思い出しながら 奏太は そんな自分に対して複雑な気持ちになった

 ひと段落ついて ガータが 兎が焼けたから 食事にするかと言った

 4人で 囲炉裏を囲み 薄い敷物に座った
 敷物の座り心地は 悪い
 ほぼほぼ 土の上と変わらないので 奏太は お尻が痛いなと思ったが仕方がない 
 この国では これが 普通なのだ

 囲炉裏には 兎の串刺しが 4本突き刺してあり 奏太の分も ちゃんと用意されている

 「ほら 奏太 食えよ お前は 体が小さいから しっかり食べなきゃな」
 シュウリが笑顔で言ったが この国でも奏太が言われるセリフは 同じなんだなと思った

 違うのは 食事の量だ 一羽の兎を4人で分ける そして少しの野菜 
 この国では 今日は 兎があるだけ まだ多い方らしい 
 奏太が 普段 食べている量を考えると足りないだろうな とは思ったが これも仕方がない

 リラが 食料が減ると 文句を言うのも頷ける
 しかし 奏太は お腹が空いていたので 兎だけど 遠慮なく頂くことにした

 「いただきます」と奏太がいうと 3人は 不思議な顔で奏太を見た
 「何かの呪文か?」シュウリが 肉を齧りながら問いかける
 「違うよ 作ってくれた人への感謝の気持ちと 食材への感謝の気持ちを込めて 手を合わせて『いただきます』終わったら『ごちそうさま』と僕の国では言うんだ」
 「へー 作った人と食材に感謝か いいな それ 俺もやろう」

 そう言ってシュウリは 手をパチンと合わせ「いただきます!」と大きな声で言った
 リラもガータも 奏太と話すことは しないが これだけは 無表情ながら真似をした
 奏太は ずーっと 馬鹿にされていた気持ちだったので 自分も自分の国も 認められた感じで 何だか嬉しくなった

 その時 突然 扉が蹴破られ 大柄な男たちが3人 入ってきた
 折角 鍵をかけていたのに あっけなく壊れたようだ

 奏太は びっくりして 目を見開いた 
 しかし シュウリとガータは 冷静にリラを庇いながら対峙した

 「見ての通り 食料は今 目の前にある これだけだ」とシュウリが話す

 この3人が 先ほど話に出た サボス国の役人か
 スキンヘッドにモヒカン 
 役人というより 山賊の方が似合っている

 男たちは 目の前にある 奏太たちの夜ごはんを あっという間に食べてしまった
 そして 部屋を物色するため歩き回り 奏太の前で立ち止まる

 「お前は 見ない顔だな」

 男の一人が 奏太の顎を 人差し指で上げる
 奏太は 怖くて 動くことも声を出すこともできない

 「お前は この家の 秘密を知っているか?」
 奏太は 震えながら首を横に振るが・・・隠し扉が見つかるのではないかとドキドキして そちらに視線が いきそうになったところで・・・

 「奏太!」 シュウリが突然 大声を出して 男3人が そちらに目を向ける
 「お前の国の話を 聞かせてやれ! 何でもいい!」

 シュウリは 何を言っているのだ
 男3人に 奏太の国の話をして どうなる?
 嫌な汗が どんどん流れる

 「聞かせろ」
 奏太を見て 1人の男が言う

 今 思い浮かぶ話なんて おばちゃまに話した不満ぐらいだ
 この状況でそんな話 しょぼすぎて相手を怒らすだろう と奏太は焦る
 
 「聞かせろ」
 「聞かせろ」
 「聞かせろ」

 3人に 言われてしまった・・・
 
 しょうがない どうにでもなれ と開き直り 奏太は おばちゃまに話した内容と同じ 本当のお父さんに暴力を振るわれたこと 新しいお父さんは 自分を邪魔だと思っていること お母さんは妹の方が可愛いと思っていること アコーディオンや騎馬戦のオーデションでの出来事 同級生から嫌がらせをされること 友達がいないこと など話した

 話しているうちに奏太は 何故か違和感が出てきた 本当に これは嫌なことなのか? 確かに暴力を振るわれた事実は許せない 
 だけど お父さんとお母さんが 本当に そう思っているのか聞いたわけではない 奏太が勝手に そう思っているだけではないのか?
学校でのことも 理不尽さを感じるが それは奏太の意見で・・・

 「騎馬戦って なんだ」

 奏太が 考え事をしていると 突然 そんな質問が来た
 気になるとこが そこなのか?と不思議に思いながら しどろもどろと説明をする

 「組んだ騎馬に一人が上に乗り 敵味方に分かれ 上に乗った者を落としたり 鉢巻きや帽子を奪い合うものです」
 
 3人の男が 顔を見合わせる

 「やりかた 教えろ」
 「やりかた・・・? 結構 危険なスポーツだから 止めておいた方が・・・僕の学校も 今年が最後と言っていたので・・・」

 なにも 男3人に諭す内容でもないが 先生から言われた危険なことを しっかりと伝えなければ 怪我をすると 奏太は 真面目に思った

 「いいから 教えろ」
 「わかったよ・・・」

 奏太は 恐る恐る 男3人の手を 掴みながら説明する

「右後ろの人は 右手を前の人とつなぎ 左手は 前の人の左肩に置いてください 反対に 左後ろの人は 左手を前の人とつなぎ 右手を 前の人の右肩に置きます そして しゃがんでくれますか? 僕が 上に乗りますね」

 奏太は 男たちの 騎馬に乗った

 「立ち上がってください」

 男たちは 立ち上がる

 「これで 相手を落としたり 鉢巻きや帽子を奪い合います」と奏太が説明する

 「これは 面白そうだぜ さそっく 帰って みんなで やろうぜ」
 「もう 格闘や 剣は 飽きたとこだったんだ」
 「酒を飲んで 誰が勝つか 賭けようぜ」

 楽しそうに 3人は 喜んで帰っていった
 まさか こんな話が役に立つなんて 奏太は 思いもしなかった

 「奏太 ありがとう! 食料取られずに助かったぜ」
 シュウリが 奏太の肩に手を置いた

 「あんな話で 何とかなると思わなかったよ」
 「俺も! 奏太の夢の国の話が 役に立つとは思わなかったが 奏太の目線が隠し扉に向きそうになって焦ったんだ あいつら目ざといからな 隠し扉を知られるわけには いかなかったんだ」
 「なんだよ それ 僕は見殺しかよ」

 シュウリは「怒るなよ」と言って 大笑いしたが 奏太は 腑に落ちなかった

 「だけど 夢の国でも 色々あるんだな」
 「いや・・・この国に 比べたら たいしたことないかもだけど・・・」
 「そんなことないよ 奏太は 頑張ってんだな」

 シュウリは 奏太に笑顔で そう告げた
 彼が こんな言葉をかけてくれるなんて 奏太は驚く
 奏太の同級生には 考えられない みんな自分のことばかりだ
 
 「お腹空いただろ こんな時のための 隠し扉だ 食事をしよう」

 3人は 隠し扉を開け 食事をやり直した

☆☆
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