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少し小太りの おばあちゃん
小洒落た帽子から見える髪は真っ白 花柄のワンピースを着て 薄いピンクの口紅に お星さまの小さなイヤリングを 付けている
お星さまの小さなイヤリングは 太陽の光を浴びてキラキラ光り 空から降ってきた 本当のお星さまで作ったイヤリングではないか? と奏太は思った
今日は 暖かくて気候もいい
ベンチに座っている おばあちゃんも 気持ちよさそうに寛いでいる
奏太は お星さまのイヤリングが気になって その 優しそうなおばあちゃんの前を 行ったり来たり しながら 様子を見ていた
「こんにちは 可愛い坊や」
おばあちゃんが ゆっくりとした口調で 奏太に話しかけてきた
「可愛くない! 僕は男だ!」
「あら あら ごめんなさいね かっこいい坊やの 間違いね」
おばあちゃんは クスクス笑いながら 「お隣に どうぞ」 と横を空けてくれた
奏太は 遠慮なく 隣に座った
「君の名前は?」
「奏太」
「奏太君 いいお名前ね いくつかな?」
「12歳」
「そう まだ 人生始まったばかりね これから 色んな事が出来るから 楽しみね」
穏やかに話す おばあちゃんの声は 聞き心地がいいが 奏太は その言葉に納得がいかなかった
「もう 12年も生きたよ・・・今日まで 長かったし 嫌なことばっかりだよ!」
「まあ! それは 大変だったわね そんなに 嫌なことばっかりだったの?」
「嫌なことばっかりだよ!」
奏太は 唇をかみしめ俯いた
「わたしは もう 80歳になる おばちゃまよ おばちゃまって 呼んでね」
おばちゃまは ニコッと笑う
「80年間生きてきた おばちゃまに 奏太君の12年間を 教えてちょうだい」
「80年?」
「そう 80年」
80年間生きてきた おばちゃまに 奏太の12年間の話をしても 分かってもらえる気がしなかったので 黙っていた
「どうしたの?」
おばちゃまが 奏太の顔を覗き込む
「おばちゃまは 生きてて 嫌なことあった?」
「もちろん 嫌なことは たくさんあったわ」
「なのに 何で 元気なの?」
「元気にみえる?」
「みえる・・」
「そうね 今日は 気候もいいし 草花は一段と綺麗だし 川の流れる素敵な音も聞こえるから 心も体も 元気ね」
「そんなことで 元気になるの?」
「なるわよ それに 暖かい風が 奏太君とおばちゃまの体を包んで 気持ちいいと思わない?」
おばちゃまは 奏太の顔を見て 軽くウインクした
「そうかな・・・」
「年を取ると その日 その日で 体調が変わるからね お天気にも 感謝したくなるのよ」
と おばちゃまは 笑った
「だったら・・・おばちゃまに比べたら 僕の 嫌なことなんて たいしたことないかも・・・」
「あら 賢い子ね そんなこと 気にしなくてもいいのよ 奏太君が 嫌なことと思っているのは 事実なんだから 言葉に出して 話をすることは とても大事なことよ」
「ほんとに?」
「ほんとうよ」
奏太は おばちゃまの顔を 暫く伺った
「じゃあ 聞いてくれる?」
「もちろんよ」
奏太は 優しく微笑む おばちゃまに 一呼吸おいて 話し出した
本当のお父さんに 暴力を振るわれたこと
新しいお父さんは 自分を邪魔だと思っていること
お母さんは 妹の方が可愛いと思っていること
学校で頑張っても 報われないこと
同級生から 嫌がらせをされること
友達がいないことなど 色んなことを話した
そんな風に 話を聞いてもらったことがなかった奏太は 嬉しくなり 今まで辛かったことを おばちゃまに 全部吐き出した
おばちゃまは 奏太が 一生懸命話す言葉を 一つ一つ丁寧に 最後まで聞いてくれた
話し終わった奏太は おばちゃまから たいしたことないって言われるかも・・・と思い 少し怖かった
どんな 反応を示すかと思ったが 「奏太君は ここまで よく頑張ったわね 関心するわ」 と誉めてくれた
「そうかな?」
「そうよ まだ小学生なのに ほんと 努力家で我慢強い子ね びっくりよ」
自分は よく頑張っているんだ! と思うと 奏太は 嬉しくなった
「ありがと! 今度は おばちゃまの話を聞かせて」
「そうね では おばちゃまの秘密を 教えてあげようかしら」
「秘密?」
おばちゃまは ニコニコしながら ベンチから立ち上がった
「そう 秘密よ それっ‼」
かぶっていた帽子を ブーメランの如く投げた
河川敷に生える草花が 帽子が飛んでいく勢いに合わせてなびく
静かな川も 水しぶきを上げる
奏太は 目を大きく見開き 驚いた
さっきまでニコニコした 柔らかい雰囲気のおばちゃまが 凄い勢いで帽子を飛ばしたことに びっくりする
帽子が川の向こうまで飛んでいくと Uターンして 奏太のもとに 凄いスピードで戻ってきた
ぶつかる‼
奏太は両手を頭に抱え うずくまった
ボン‼ と凄い音がしたが・・・奏太の体は無事だ
そーっと 目を開けると 目の前に 大きな両開きの扉があった
その木製の扉には バラの花が咲き誇り たくさんの蝶が 飛び回っていた
「さあ 秘密の扉を 開けましょ」
「秘密の扉?」
小さい頃から 知らない人には 付いて行ってはいけないと 誰もが教えられた
この 不思議な状況を どう考えたらいいのか 奏太は悩んだ
「大丈夫よ 怖がることは無いわ 奏太君なら 必ず 戻ってこられる冒険よ」
「冒険?」
冒険・・・小学生の子どもにとって とても 魅力的な言葉
おばちゃまの言葉を 信じても大丈夫なのか? 迷う・・・
「戻ってきたときには きっと 世界が変わっているわ もちろん 良い方向にね」
「おばちゃまも 一緒に行くの?」
「もちろんよ」
「わかった! 行くよ!」
奏太は 考える
このまま生きていても 理不尽な環境は 変わらない
だったら 一歩踏み出したら 何かが 変わるかもしれない
おばちゃまと一緒なら 大丈夫だろうと 奏太は判断した
「奏太君が 扉を 開けてちょうだい」
おばちゃまは 奏太の背中を そっと押す
奏太は 頷き 両手を使い ゆっくりと扉を開けていく そして 足を踏み入れた瞬間 闇に包まれた
小洒落た帽子から見える髪は真っ白 花柄のワンピースを着て 薄いピンクの口紅に お星さまの小さなイヤリングを 付けている
お星さまの小さなイヤリングは 太陽の光を浴びてキラキラ光り 空から降ってきた 本当のお星さまで作ったイヤリングではないか? と奏太は思った
今日は 暖かくて気候もいい
ベンチに座っている おばあちゃんも 気持ちよさそうに寛いでいる
奏太は お星さまのイヤリングが気になって その 優しそうなおばあちゃんの前を 行ったり来たり しながら 様子を見ていた
「こんにちは 可愛い坊や」
おばあちゃんが ゆっくりとした口調で 奏太に話しかけてきた
「可愛くない! 僕は男だ!」
「あら あら ごめんなさいね かっこいい坊やの 間違いね」
おばあちゃんは クスクス笑いながら 「お隣に どうぞ」 と横を空けてくれた
奏太は 遠慮なく 隣に座った
「君の名前は?」
「奏太」
「奏太君 いいお名前ね いくつかな?」
「12歳」
「そう まだ 人生始まったばかりね これから 色んな事が出来るから 楽しみね」
穏やかに話す おばあちゃんの声は 聞き心地がいいが 奏太は その言葉に納得がいかなかった
「もう 12年も生きたよ・・・今日まで 長かったし 嫌なことばっかりだよ!」
「まあ! それは 大変だったわね そんなに 嫌なことばっかりだったの?」
「嫌なことばっかりだよ!」
奏太は 唇をかみしめ俯いた
「わたしは もう 80歳になる おばちゃまよ おばちゃまって 呼んでね」
おばちゃまは ニコッと笑う
「80年間生きてきた おばちゃまに 奏太君の12年間を 教えてちょうだい」
「80年?」
「そう 80年」
80年間生きてきた おばちゃまに 奏太の12年間の話をしても 分かってもらえる気がしなかったので 黙っていた
「どうしたの?」
おばちゃまが 奏太の顔を覗き込む
「おばちゃまは 生きてて 嫌なことあった?」
「もちろん 嫌なことは たくさんあったわ」
「なのに 何で 元気なの?」
「元気にみえる?」
「みえる・・」
「そうね 今日は 気候もいいし 草花は一段と綺麗だし 川の流れる素敵な音も聞こえるから 心も体も 元気ね」
「そんなことで 元気になるの?」
「なるわよ それに 暖かい風が 奏太君とおばちゃまの体を包んで 気持ちいいと思わない?」
おばちゃまは 奏太の顔を見て 軽くウインクした
「そうかな・・・」
「年を取ると その日 その日で 体調が変わるからね お天気にも 感謝したくなるのよ」
と おばちゃまは 笑った
「だったら・・・おばちゃまに比べたら 僕の 嫌なことなんて たいしたことないかも・・・」
「あら 賢い子ね そんなこと 気にしなくてもいいのよ 奏太君が 嫌なことと思っているのは 事実なんだから 言葉に出して 話をすることは とても大事なことよ」
「ほんとに?」
「ほんとうよ」
奏太は おばちゃまの顔を 暫く伺った
「じゃあ 聞いてくれる?」
「もちろんよ」
奏太は 優しく微笑む おばちゃまに 一呼吸おいて 話し出した
本当のお父さんに 暴力を振るわれたこと
新しいお父さんは 自分を邪魔だと思っていること
お母さんは 妹の方が可愛いと思っていること
学校で頑張っても 報われないこと
同級生から 嫌がらせをされること
友達がいないことなど 色んなことを話した
そんな風に 話を聞いてもらったことがなかった奏太は 嬉しくなり 今まで辛かったことを おばちゃまに 全部吐き出した
おばちゃまは 奏太が 一生懸命話す言葉を 一つ一つ丁寧に 最後まで聞いてくれた
話し終わった奏太は おばちゃまから たいしたことないって言われるかも・・・と思い 少し怖かった
どんな 反応を示すかと思ったが 「奏太君は ここまで よく頑張ったわね 関心するわ」 と誉めてくれた
「そうかな?」
「そうよ まだ小学生なのに ほんと 努力家で我慢強い子ね びっくりよ」
自分は よく頑張っているんだ! と思うと 奏太は 嬉しくなった
「ありがと! 今度は おばちゃまの話を聞かせて」
「そうね では おばちゃまの秘密を 教えてあげようかしら」
「秘密?」
おばちゃまは ニコニコしながら ベンチから立ち上がった
「そう 秘密よ それっ‼」
かぶっていた帽子を ブーメランの如く投げた
河川敷に生える草花が 帽子が飛んでいく勢いに合わせてなびく
静かな川も 水しぶきを上げる
奏太は 目を大きく見開き 驚いた
さっきまでニコニコした 柔らかい雰囲気のおばちゃまが 凄い勢いで帽子を飛ばしたことに びっくりする
帽子が川の向こうまで飛んでいくと Uターンして 奏太のもとに 凄いスピードで戻ってきた
ぶつかる‼
奏太は両手を頭に抱え うずくまった
ボン‼ と凄い音がしたが・・・奏太の体は無事だ
そーっと 目を開けると 目の前に 大きな両開きの扉があった
その木製の扉には バラの花が咲き誇り たくさんの蝶が 飛び回っていた
「さあ 秘密の扉を 開けましょ」
「秘密の扉?」
小さい頃から 知らない人には 付いて行ってはいけないと 誰もが教えられた
この 不思議な状況を どう考えたらいいのか 奏太は悩んだ
「大丈夫よ 怖がることは無いわ 奏太君なら 必ず 戻ってこられる冒険よ」
「冒険?」
冒険・・・小学生の子どもにとって とても 魅力的な言葉
おばちゃまの言葉を 信じても大丈夫なのか? 迷う・・・
「戻ってきたときには きっと 世界が変わっているわ もちろん 良い方向にね」
「おばちゃまも 一緒に行くの?」
「もちろんよ」
「わかった! 行くよ!」
奏太は 考える
このまま生きていても 理不尽な環境は 変わらない
だったら 一歩踏み出したら 何かが 変わるかもしれない
おばちゃまと一緒なら 大丈夫だろうと 奏太は判断した
「奏太君が 扉を 開けてちょうだい」
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