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第14話・聖女の真意
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謁見の間での騒動から一晩間をおいて、落ち着いた頃。カークから手紙が届いた。
内容を要約すると、フレーレと話してみるといい、ということで、わたしはお父様の許可をとって、王城にきている。
くれぐれもクーには内密に、とも書かれていたので、クー絡みの話だと思う。
王城に入ってすぐにシーフルが出迎えてくれて、シーフルに案内されるまま、物珍しい王城の中を歩いていく。
一つの部屋の前で止まったシーフルに「どうぞ、お入りください」と示されて、部屋に入った。
「少々お待ちください」と言われたので素直に待っていると、フレーレが侍女もつけずにやってきたのだ。
お付きの人がいないことにものすごく驚いたんだけど、フレーレははにかみながら微笑んでいて、とても突っ込める雰囲気ではない。
フレーレの傍にはカークがいて、シーフルに給仕をさせたあと部屋から追い出すと、三人でのお茶会が始まった。き、きまずぅ……。
紅茶を飲んで場を誤魔化しながら、わたしがカークとフレーレの間で視線を彷徨わせていると、カークから切り出してくれた。
まってました!
「ライラ嬢、フレーレ姫の話を聞いて貴方にも共有しておくべきだと思ったんだよ」
「フレーレさまのお話、ですか?」
「ああ」
わたしがフレーレに視線を向けると、フレーレはカップをソーサーに戻して、真剣な顔をした。
「ライラさま、わたくしのせいでいらぬ騒動を起こし、申し訳ありませんでした」
「まってください! 頭をあげてください!!」
下げられた頭に動揺する。いくらわたしが公爵家の令嬢とはいえ、相手は一国のお姫様だ。頭を下げていいはずがない。
わたしがあたふたしていると、フレーレはゆっくりと頭をあげて、小さく微笑んだ。
「あなたはやさしい方ですのね」
「え?」
「わたくしのやり方がまちがっていたのだと、昨日気づきました。ありがとうございます」
微笑むフレーレは文句なしの美少女で、わたしが話についていけずきょとんとしていると、カークがこほんと咳払いをした。
「ライラ嬢はご存じかな、フレーレ姫が救国の聖女と呼ばれる預言者だということに」
「ええっと……はい、知っています」
「まぁ、わたくしの能力は国でも一部のものしか知りませんのに……」
お上品に手を口元に当てて驚くフレーレに前世知識ですとも言えず。
何とも言えない顔でカークを見上げると、カークは「ああ」と頷いた。
「父上の昨日のあれは私の入れ知恵だ」
「やっぱりですか……」
そうだろうとは思っていたけど、肯定されるとなんだかちょっともやっとする。
まぁ、情報共有は大事ですよね。多分。
「わたくしがみた未来では……クーリストさまは亡くなってしまわれるのです」
「……」
知ってる。海底洞窟で。仲間たちに先に行けと叫んで。
国に裏切られて死んでしまう、悲運の王子様。それが、クーだ。
黙り込んだわたしの前で、フレーレが悲しそうに言葉を紡いでいく。
「わたくしはその運命を変えたかった。クーリストさまが亡くなってしまわれると、あの人が悲しむから」
「あのひと……?」
「わたくしがお慕いしている方ですわ」
ふんわりと、頬を染めて。恋する乙女の眼差しで。
フレーレがそんなことをいうから、わたしはびっくりして目を見開いた。
「え? え?! 好きなひとがいるのに、クーに求婚したんですか?!」
「わたくしは、そうやってあの方のかなしみをとりのぞくしか、お力になれないと思って……」
「そんなの間違ってるわ!!」
わたしが大声を出したからか、フレーレはびっくりして目を丸くしている。わたしはイスから降りて、フレーレの傍に駆け寄った。
フレーレの手を取る。真っ白な白魚みたいな手。でも温かい手。クーを救おうとしてくれた手。
「好きなひとがいるなら、そのひとにアタックしなくちゃ! その人が悲しまないのも確かに大事だけど、その人を諦める理由にはならないわ!!」
「……はい」
フレーレがわたしの手を握り返す。両手で握りしめて、額にあてた。祈るようだ、とわたしは思う。
「クーのことはまかせて! わたしが絶対しあわせにしてみせるわ!!」
「はい」
祈るように、願うように。
まるで神聖な儀式の一場面のように。
ほろほろと涙を流しながら、フレーレは一つ頷いた。それこそ、神の託宣を受け取るかのような静謐さをもって。
「約束よ。わたしはクーを守るわ。だから、フレーレさまは自分の恋を大切にして。ね?」
「ええ、ええ……!」
わたしたちの約束。クーを救う。そしてフレーレの恋する人の心を守る。
大切な約束を、交わした。
内容を要約すると、フレーレと話してみるといい、ということで、わたしはお父様の許可をとって、王城にきている。
くれぐれもクーには内密に、とも書かれていたので、クー絡みの話だと思う。
王城に入ってすぐにシーフルが出迎えてくれて、シーフルに案内されるまま、物珍しい王城の中を歩いていく。
一つの部屋の前で止まったシーフルに「どうぞ、お入りください」と示されて、部屋に入った。
「少々お待ちください」と言われたので素直に待っていると、フレーレが侍女もつけずにやってきたのだ。
お付きの人がいないことにものすごく驚いたんだけど、フレーレははにかみながら微笑んでいて、とても突っ込める雰囲気ではない。
フレーレの傍にはカークがいて、シーフルに給仕をさせたあと部屋から追い出すと、三人でのお茶会が始まった。き、きまずぅ……。
紅茶を飲んで場を誤魔化しながら、わたしがカークとフレーレの間で視線を彷徨わせていると、カークから切り出してくれた。
まってました!
「ライラ嬢、フレーレ姫の話を聞いて貴方にも共有しておくべきだと思ったんだよ」
「フレーレさまのお話、ですか?」
「ああ」
わたしがフレーレに視線を向けると、フレーレはカップをソーサーに戻して、真剣な顔をした。
「ライラさま、わたくしのせいでいらぬ騒動を起こし、申し訳ありませんでした」
「まってください! 頭をあげてください!!」
下げられた頭に動揺する。いくらわたしが公爵家の令嬢とはいえ、相手は一国のお姫様だ。頭を下げていいはずがない。
わたしがあたふたしていると、フレーレはゆっくりと頭をあげて、小さく微笑んだ。
「あなたはやさしい方ですのね」
「え?」
「わたくしのやり方がまちがっていたのだと、昨日気づきました。ありがとうございます」
微笑むフレーレは文句なしの美少女で、わたしが話についていけずきょとんとしていると、カークがこほんと咳払いをした。
「ライラ嬢はご存じかな、フレーレ姫が救国の聖女と呼ばれる預言者だということに」
「ええっと……はい、知っています」
「まぁ、わたくしの能力は国でも一部のものしか知りませんのに……」
お上品に手を口元に当てて驚くフレーレに前世知識ですとも言えず。
何とも言えない顔でカークを見上げると、カークは「ああ」と頷いた。
「父上の昨日のあれは私の入れ知恵だ」
「やっぱりですか……」
そうだろうとは思っていたけど、肯定されるとなんだかちょっともやっとする。
まぁ、情報共有は大事ですよね。多分。
「わたくしがみた未来では……クーリストさまは亡くなってしまわれるのです」
「……」
知ってる。海底洞窟で。仲間たちに先に行けと叫んで。
国に裏切られて死んでしまう、悲運の王子様。それが、クーだ。
黙り込んだわたしの前で、フレーレが悲しそうに言葉を紡いでいく。
「わたくしはその運命を変えたかった。クーリストさまが亡くなってしまわれると、あの人が悲しむから」
「あのひと……?」
「わたくしがお慕いしている方ですわ」
ふんわりと、頬を染めて。恋する乙女の眼差しで。
フレーレがそんなことをいうから、わたしはびっくりして目を見開いた。
「え? え?! 好きなひとがいるのに、クーに求婚したんですか?!」
「わたくしは、そうやってあの方のかなしみをとりのぞくしか、お力になれないと思って……」
「そんなの間違ってるわ!!」
わたしが大声を出したからか、フレーレはびっくりして目を丸くしている。わたしはイスから降りて、フレーレの傍に駆け寄った。
フレーレの手を取る。真っ白な白魚みたいな手。でも温かい手。クーを救おうとしてくれた手。
「好きなひとがいるなら、そのひとにアタックしなくちゃ! その人が悲しまないのも確かに大事だけど、その人を諦める理由にはならないわ!!」
「……はい」
フレーレがわたしの手を握り返す。両手で握りしめて、額にあてた。祈るようだ、とわたしは思う。
「クーのことはまかせて! わたしが絶対しあわせにしてみせるわ!!」
「はい」
祈るように、願うように。
まるで神聖な儀式の一場面のように。
ほろほろと涙を流しながら、フレーレは一つ頷いた。それこそ、神の託宣を受け取るかのような静謐さをもって。
「約束よ。わたしはクーを守るわ。だから、フレーレさまは自分の恋を大切にして。ね?」
「ええ、ええ……!」
わたしたちの約束。クーを救う。そしてフレーレの恋する人の心を守る。
大切な約束を、交わした。
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