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5話・鍛錬
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翌日朝日の昇らぬ内に起き出して、井戸の冷たい水で顔を洗っているとシェリアに続いてリースが起き出してきた。
手ぬぐいで顔を拭い、少しばかり以外に思っていれば顔に出ていたのか、リースが真面目な表情で告げる。
「シェリアに起こしてもらったんじゃないです。昨日のうちにシェリアに何時に起きるか聞いておいたんです」
その言葉にシェリアをみれば、シェリアはつんと表面上は冷たい表情でそっぽを向く。
「聞かれたから答えただけです。先生の意向を無視する気はありませんから」
「そうか、ありがとう」
「……いいえ」
微笑んで礼を言えば、僅かに頬を朱に染めてシェリアが小さく頷く。かわいらしいものだとその様子を眺めて、井戸を指差す。
「まずは顔を洗え。目をきちんと覚ましたら、朝稽古だ」
告げたステラに二人は真面目な顔で頷いた。
ステラがリースに課したのはまずは剣術をするための体を作るための基礎、ということで腹筋五百回、背筋五百回、腕立て伏せ五百回の三セットだった。
最初にこれを告げた時点で、反応は二分される。
隣のシェリアの眼差しが厳しいことをステラも感じつつリースをみていると、リースは素直に「わかった」と頷いてその場で腹筋を始めた。
関門とも呼べないが、第一関門は問題なくクリアだ。
「ステラは私と手合わせからやろう」
「はい!」
本来ならば手合わせの前に一通り剣の型を練習させているが、あえて手合わせを選んだのはこれもリースの反応をみるためだ。
「はっ」
ステラの得物は身の丈もある大剣だが、シェリアの得物は正反対にレイピアだ。
鋭い踏み込みと突きの攻撃を半歩右足を下げることで優雅にかわして、ステラは軽い仕草で大剣を振った。
身の丈とその腕力に見合わないように見えるが、ステラは悠々自在に己の身長ほどもある大剣を軽々と操る。それはステラの文字通り血を吐くような鍛練の結果だ。
ステラが本気を出してしまえば、一瞬でシェリアは真っ二つになる。だから、基本的にステラは手合わせのときは受身に徹する。
シェリアはステラをその場から完全に動かせれば一本というルールなのだが、シェリアがステラから一本を取ったことはいまだにない。
幾合かのやりとりをシェリアとしつつ、ちらと視線を時折リースに向ける。リースはこちらに眼を向けることなくステラの課した課題を黙々とこなしている。
流石に基礎的な体力はあれど、いきなり腹筋背筋腕立て伏せ五百回ずつの三セットは厳しいだろうと思ったが、額に汗をかきつつもゆっくりとそれでも確実にこなしている。
三十分ほどシェリアと打ち合い、シェリアもまた汗だくになったところでひとまずシェリアとの手合わせを切り上げる。続いてシェリアに剣の型を一通りさらわせる。
厳しい眼差しでシェリアが次々に繰り出す剣の型をみる。それも十分ほどで終わった。そしてシェリアもまた筋力作りの腹筋背筋腕立て伏せ、こちらは基礎が出来上がっているので百の三セット。ここまでがシェリアの朝稽古だ。
普段なら逆の順番なのだが、リースの反応を見たかったため、あえてこの順番にした。
リースがもしステラが言いつけたことを投げ出して剣の稽古をしたいだとか、剣の稽古に釘付けになるようだったら、そこでステラはリースを半分投げ出す気だった。
だが、リースはステラの危惧とは正反対に黙々と汗を流しながら腕立て伏せをしている。
ステラがみていた限り、これがワンセット目だ。
「シェリア、軽く汗を流してこい」
「はい」
荒い息のシェリアに声をかけ、宿屋のなかに姿を消したシェリアをおいて、リースから少し距離を置いた場所で背中に剣を下げたまま片手で腕立て伏せをはじめる。
ステラの操る剣の重量は中々のものだ。それを軽々と操るためには、いや、剣術を扱うにあたっていつだって基礎は大事だ。
それは剣の型でもあるし、基本の基本、今リースに課している腹筋背筋腕立て伏せなどもだ。
ステラは流石になれたもので剣を背負っていようが腕立て伏せのスピードは速い。
それぞれ百回三セットを十分たらずで汗もかかずに終わらせたステラに、戻ってきたシェリアが声をかける。太陽はようやく全て顔をだした頃だ。
「先生、朝食をキャラバンの方達が一緒に食べようと」
「わかったと伝えてくれ」
「はい」
そういってすぐに宿屋にもどったステラを見送って、荒い呼吸で先ほどよりゆっくりとそれでも確実に腕立て伏せを続けるリースに声をかける。
「リース、お前はどうする?」
それも、一つの試しだった。
果たして、リースの答えは。
「お、れは、まだ、おわって、ない、ので……っ、いい、ですっ」
言葉を紡ぐのも辛いだろうが、それでも腕立て伏せをとめようとはしない。
その姿勢はステラにとって喜ばしいものだ。満足げに一つ頷いて、そうか、と告げる。
「終わったら戻ってこい。出発はそれからにする」
「は、い」
ちょうど腕立て伏せ五百回がすんだのか再び腹筋をしだしたリースを置いてステラも宿屋にひっこんだ。
手ぬぐいで顔を拭い、少しばかり以外に思っていれば顔に出ていたのか、リースが真面目な表情で告げる。
「シェリアに起こしてもらったんじゃないです。昨日のうちにシェリアに何時に起きるか聞いておいたんです」
その言葉にシェリアをみれば、シェリアはつんと表面上は冷たい表情でそっぽを向く。
「聞かれたから答えただけです。先生の意向を無視する気はありませんから」
「そうか、ありがとう」
「……いいえ」
微笑んで礼を言えば、僅かに頬を朱に染めてシェリアが小さく頷く。かわいらしいものだとその様子を眺めて、井戸を指差す。
「まずは顔を洗え。目をきちんと覚ましたら、朝稽古だ」
告げたステラに二人は真面目な顔で頷いた。
ステラがリースに課したのはまずは剣術をするための体を作るための基礎、ということで腹筋五百回、背筋五百回、腕立て伏せ五百回の三セットだった。
最初にこれを告げた時点で、反応は二分される。
隣のシェリアの眼差しが厳しいことをステラも感じつつリースをみていると、リースは素直に「わかった」と頷いてその場で腹筋を始めた。
関門とも呼べないが、第一関門は問題なくクリアだ。
「ステラは私と手合わせからやろう」
「はい!」
本来ならば手合わせの前に一通り剣の型を練習させているが、あえて手合わせを選んだのはこれもリースの反応をみるためだ。
「はっ」
ステラの得物は身の丈もある大剣だが、シェリアの得物は正反対にレイピアだ。
鋭い踏み込みと突きの攻撃を半歩右足を下げることで優雅にかわして、ステラは軽い仕草で大剣を振った。
身の丈とその腕力に見合わないように見えるが、ステラは悠々自在に己の身長ほどもある大剣を軽々と操る。それはステラの文字通り血を吐くような鍛練の結果だ。
ステラが本気を出してしまえば、一瞬でシェリアは真っ二つになる。だから、基本的にステラは手合わせのときは受身に徹する。
シェリアはステラをその場から完全に動かせれば一本というルールなのだが、シェリアがステラから一本を取ったことはいまだにない。
幾合かのやりとりをシェリアとしつつ、ちらと視線を時折リースに向ける。リースはこちらに眼を向けることなくステラの課した課題を黙々とこなしている。
流石に基礎的な体力はあれど、いきなり腹筋背筋腕立て伏せ五百回ずつの三セットは厳しいだろうと思ったが、額に汗をかきつつもゆっくりとそれでも確実にこなしている。
三十分ほどシェリアと打ち合い、シェリアもまた汗だくになったところでひとまずシェリアとの手合わせを切り上げる。続いてシェリアに剣の型を一通りさらわせる。
厳しい眼差しでシェリアが次々に繰り出す剣の型をみる。それも十分ほどで終わった。そしてシェリアもまた筋力作りの腹筋背筋腕立て伏せ、こちらは基礎が出来上がっているので百の三セット。ここまでがシェリアの朝稽古だ。
普段なら逆の順番なのだが、リースの反応を見たかったため、あえてこの順番にした。
リースがもしステラが言いつけたことを投げ出して剣の稽古をしたいだとか、剣の稽古に釘付けになるようだったら、そこでステラはリースを半分投げ出す気だった。
だが、リースはステラの危惧とは正反対に黙々と汗を流しながら腕立て伏せをしている。
ステラがみていた限り、これがワンセット目だ。
「シェリア、軽く汗を流してこい」
「はい」
荒い息のシェリアに声をかけ、宿屋のなかに姿を消したシェリアをおいて、リースから少し距離を置いた場所で背中に剣を下げたまま片手で腕立て伏せをはじめる。
ステラの操る剣の重量は中々のものだ。それを軽々と操るためには、いや、剣術を扱うにあたっていつだって基礎は大事だ。
それは剣の型でもあるし、基本の基本、今リースに課している腹筋背筋腕立て伏せなどもだ。
ステラは流石になれたもので剣を背負っていようが腕立て伏せのスピードは速い。
それぞれ百回三セットを十分たらずで汗もかかずに終わらせたステラに、戻ってきたシェリアが声をかける。太陽はようやく全て顔をだした頃だ。
「先生、朝食をキャラバンの方達が一緒に食べようと」
「わかったと伝えてくれ」
「はい」
そういってすぐに宿屋にもどったステラを見送って、荒い呼吸で先ほどよりゆっくりとそれでも確実に腕立て伏せを続けるリースに声をかける。
「リース、お前はどうする?」
それも、一つの試しだった。
果たして、リースの答えは。
「お、れは、まだ、おわって、ない、ので……っ、いい、ですっ」
言葉を紡ぐのも辛いだろうが、それでも腕立て伏せをとめようとはしない。
その姿勢はステラにとって喜ばしいものだ。満足げに一つ頷いて、そうか、と告げる。
「終わったら戻ってこい。出発はそれからにする」
「は、い」
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