【完結】守護龍の寵愛、傭兵ステラの長い旅路〜次期守護龍候補の赫き竜〜

久遠れん

文字の大きさ
14 / 38

14話・イヤリング

しおりを挟む
 一週間ほど歩き続ければ次の村に出た。

 村の名前はエーデルといい、規模は前の村より少し大きい程度だが、人口の密度が違う。

 ルーデルカンスとの違いにリースがきょろきょろとしていれば、気付いたステラが教えてくれた。

「ここは各農村への経由所になっているから、それなりに人が多い。その分、性質が悪いのも多いから、気をつけろ」

 そういって、リースの腰に下げる剣を指差す。

「いいか、ソレは決して人に向けるな」

 短く告げられた言葉に頷く。ステラはすぐに周りを見回して「知り合いのところに顔を出してくる」とつげ別行動を取るといった。

 シェリアとリースにはそれぞれ「好きに使っていい」という言葉とともにステラから硬貨が渡された。

 さっさと人ごみに紛れていくステラを見送り、リースはどうしたものかと手渡された硬貨を見つめていると、隣からずいっと小袋が差し出される。

「アンタ、財布持ってないんでしょ。とりあえず、それにいれとけば?」

 相変わらずつっけんどんな言い方だが、小袋は素直にありがたいので戴いておく。

 短く礼も告げれば「別に」とそっぽを向いてこれまたすたすたと歩き出してしまった。

「あ、おい!」
「ここ、宿屋は一つしかないから夕食前にそこに集合ね。じゃあ」

 ひらりと手を振ってこれまた人ごみに紛れてしまったシェリアを一人取り残されたリースは立ち尽くしたまま見送った。

 なにをするにも珍しい。厳しい鍛練と歩き通しだったこともあり、体は休息を求めていたが、それも好奇心の前には抗えない。

 あっちをみて、こっちをみて。屋台を冷やかして回る。

 あっという間に時間は過ぎて、夕暮れが顔をのぞかせた頃だ。

店仕舞いを始める店もある中、ぶらぶらと宿屋に向かって歩いていたときに、それを見つけた。

 軒先に出されていたのは、群青色の中に星空のように金色の粉がちりばめられた丸いガラス玉をチェーンの先につけたイヤリングだった。

 それは、なぜかシェリアを髣髴とさせて、なぜだろうと店先で考え込んでいると店主らしい若い男が奥から出てきた。

「にーちゃん、そのイヤリングが気に入ったのかい?」
「え?えっと」
「彼女サンへの贈り物かな? 中々にいい出来だろう。まだ見習いのガラス職人が作ったものだから値段は低いがね、それなりにいいモンだよ。にーちゃんは目がいいなぁ」

 からからと人受けする笑みで笑う店主に眉を寄せて困った表情をしていると、バンといきなり背中を勢いよく叩かれた。

「なーにをまよってる。こんだけいいモンみつけたんなら、かわなきゃソンだぞ、ソン」
「あー、いや、でも」
「んん? 手持ちの金がたりないのか?」
「あ、いや、それは、大丈夫、なんだけど……」

 このイヤリング一つを買うくらいの金額はステラから貰っているし、何に使えばいいかわからなくてあっちをみてこっちをみてを繰り返し、結局何も買わなかったからステラからもらった小遣いは丸ごと残っているのだ。

 第一、店主の男の言うとおり見た目に反して値段が酷く安い。

 とはいっても、それは今日一日色んな店を冷やかしたからいえる言葉であって、以前の、それこそ生まれた村からでたことがなかったリースには途方もない金額でもあっただろう。

 なにしろ、リースは生まれてこの方、小遣いなどもらったことがないものだから。

「なら買っちまえ! 次にこの職人のヤツ仕入れるときは、零が一個ふえとることを商人として確信してるぜ」

 そんな風に押せ押せでこられると、リースではどう対応していいかわからない。

 今日一日店を冷やかして回れたのも、リース以外の客が多かったからだ。

 夕食時も間近となった今、リースしかいない店内で他に客はいない。

 困ったなぁと思いつつも、リースの脳裏にはやっぱりシェリアの顔がちらついて仕方なくて。後はなにかにつけ、世話を焼かれていることもやっぱり気になっていて。

「……じゃあ、もらおうかな」

 つい、そんな言葉が口をついてでていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

【完結】魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?

灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。 しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

【完結】『推しの騎士団長様が婚約破棄されたそうなので、私が拾ってみた。』

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
【完結まで執筆済み】筋肉が語る男、冷徹と噂される騎士団長レオン・バルクハルト。 ――そんな彼が、ある日突然、婚約破棄されたという噂が城下に広まった。 「……えっ、それってめっちゃ美味しい展開じゃない!?」 破天荒で豪快な令嬢、ミレイア・グランシェリは思った。 重度の“筋肉フェチ”で料理上手、○○なのに自由すぎる彼女が取った行動は──まさかの自ら押しかけ!? 騎士団で巻き起こる爆笑と騒動、そして、不器用なふたりの距離は少しずつ近づいていく。 これは、筋肉を愛し、胃袋を掴み、心まで溶かす姉御ヒロインが、 推しの騎士団長を全力で幸せにするまでの、ときめきと笑いと“ざまぁ”の物語。

婚約破棄された宰相です。 正直、婚約者も宰相も辞めたかったので丁度よかったです

鍛高譚
恋愛
内容紹介 「婚約破棄だ! そして宰相もクビだ!」 王宮の舞踏会で突然そう宣言したのは、女性問題を繰り返す問題王太子ユリウス。 婚約者であり王国宰相でもあるレティシアは、静かに答えた。 「かしこまりました」 ――正直、本当に辞めたかったので。 これまで王太子の女性問題の後始末、慰謝料交渉、教会対応、社交界の火消し…… すべて押し付けられていたレティシアは、婚約も宰相職もあっさり辞任。 そしてその瞬間―― 王宮が止まった。 料理人が動かない。 書類が処理されない。 伝令がいない。 ついにはトイレの汚物回収まで止まり、王宮は大混乱。 さらに王太子の新たな女性問題が発覚し、教会は激怒。 噂は王都中に広がり、王宮は完全に統治不能に。 そしてついに―― 教会・貴族・王家が下した決断は、 「王太子廃嫡」 そして。 「レティシア、女王即位」 婚約破棄して宰相をクビにした結果、 王宮を止めてしまった元王太子の末路とは――? これは、婚約破棄された宰相が女王になるまでの 完全自業自得ざまぁ物語。

処理中です...