彼は溺愛という鎖に繋いだ彼女を公私共に囲い込む

花里 美佐

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第一章 入社と出会い

自覚ー2

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【俊樹side】

 その日の午後。

 俊樹は秘書の森川が買い物に出たところで新村を呼び出した。
 
 トントン。
 
「はいどうぞ」
 
「失礼します」

 キョロキョロする、新村。森川を探しているな。
 
「新村君、そこに座って」
 
 彼が座るのを見ると、僕も前のソファへ腰を落ち着けた。

「森川さん?彼女なら買い物に出てる。手土産を買いにデパートへ行ったよ」
 
「いえ……そうですか」

「新村君。森川さんだけどね、来年三月からはおそらく僕の秘書一本になると思う」
 
「え?」
 
「彼女にはまだ言っていないがね。ほぼ決まりだ。僕はね、役員室の方へ上がる予定だ」
 
「それをどうして僕に話されるんでしょうか?森川には言わないで……」
 
「それはね。君ならわかるだろう。理由はふたつ。ひとつは業務部での彼女の仕事の引き継ぎについて。君の意見を聞いて調整しておきたいんだ。君の意見なら彼女は素直に従いそうだからね。もうひとつは……何だと思う?」
 
「……牽制ですか?」
 
「牽制ね。当たらずとも遠からじってとこかな……」
 
 新村は深呼吸をして話し出した。
 
「僕が彼女に告白したこともご存じなんですね?」
 
「悪いね。言っておくけど聞き出したわけじゃない。彼女はそういうのすぐ顔に出るし、行動に出てしまうんだよ。免疫ないみたいでね」
 
 新村はため息をつく。
 
「そうでしょうね。隠すこともできないし。仕事以外は恐ろしくウブです」
 
「そうだな。それが魅力でもある」
 
 俊樹は新村をじっと見つめた。
 
「単刀直入に言う。悪いがね、彼女はもらうよ。公私共に。宣戦布告と思ってくれ」
 
 新村は目を見開いた。
 
「ずいぶんと強気なんですね。自信があるんですね」
 
「そうだな。君と違って、年齢もそこそこいってるんでね。待ったりしないんだよ、君みたいに。僕は決めたんでね、彼女をものにすると……」
 
 すごいオーラを出して、新村を牽制する。
 
「わかりました。お手並み拝見といきましょう。僕も本部長にはない、彼女との共有財産がある。それでも負けるようなら諦めますよ、潔く」
 
「さすが、業務部エース。君は非常に女子社員から人気があるからね。森川さんは敵だらけだ」
 
「それを言うなら本部長でしょ?嫌みですか?」
 
「悪いが、僕は興味のない人には何も感じないんでね。正直、森川さんも最初はいけ好かない娘だと思っていたが、噛めば噛むほどいい味を出す、スルメみたいな娘だよ」
 
「……それ、本人に言ったら殴られますよ」
 
「そうだな。そこがいいんだよ。おべっか使ったり絶対しないからね」
 
「……なるほど。分かってきました、本部長が彼女に固執する理由」
 
「君だから特別に教えてるんだよ。と言うわけで、彼女の仕事の割り振り表、今月末までに頼みます。内密でね」
 
「わかりました」
 
 そう言うと、立ち上がって一礼し背中を向けた。

 扉を開けるときに一瞬止まると、振り向いた。
 
「彼女のこと。俺も本気です。最後まで戦わせてください」
 
 そう言うと、彼は出て行った。
 
 
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