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第一章
四ノ巻ー楓姫①
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「楓姫様。古部様がお見えになられました」
白髪の女房頭が御簾内で囁いた。
「お通しなさい」
「はい。それでは古部様。こちらへどうぞ」
御簾の内に入れて下さる。萩野は女房頭が別室へ連れて行こうとしたが、縁側で控えると言って固辞した。権太との約束を守るためだ。
「その方は古部様のお付きのものですか?」
「はい。乳母子でございます。一番信用できます」
「それならば、御簾内にお入れしましょう。もうそろそろ夜は冷えますゆえ」
「お心遣い感謝致します。萩野、入りなさい」
「はい。ありがとう存じます。それでは失礼致します」
「古部様。一枚几帳の内にお入り下さいませ」
楓姫の小さな声がした。
「え?それは……」
「小さい声でお話しいたしますれば、お入り下さいませ。誰に聞かれるかもわかりませぬ故」
私は萩野に目配せし、自分だけ扇を使って顔を隠しながら几帳の内へ入った。ゆかしい香が焚かれている。
一枚几帳内に入ったが、その目の前にも几帳がおかれており、楓姫の姿を上手く隠していた。部屋の調度品は見事なものだ。静姫のところにあるものと同等かそれ以上。彼女の身分を再認識できた。姫は脇息に寄りかかっておられるのだろう。萌黄色の裳裾が見える。
「今日は直接お目もじする失礼をお許し下さり、誠にありがとうございます」
「いえ、こちらこそ。文を下さるのは大変だったことでしょう。左大臣家の若様も姉君のためとはいえ、このようなところへ文をお持ちになるなんて頭が下がります。わたくしにもこんな兄弟がいたらと思わずにはおれませんでした」
「……楓姫様……」
「東宮殿にはまだ入られていませんよね。もうわたくしをお訪ねになるような心配事がございましたか?」
「いえ。ご存じかもしれませんが、朱雀皇子は今帝とご一緒に伊勢へ行幸中です。お戻りは早くとも来月になるかと思います。戻られる前に準備をして東宮へ入り、整えておくようにと触れがございまして」
「そうでしたか。静姫はおそらく、私がいた寝殿に入られるはずです。東の対ですよね?」
「そのとおりです」
「今日は全てお話しします。実は私も古部様ではなく、父の懇意にしている幽斎様に少しご相談し、祈祷をしていただいたことがあるのです」
幽斎様とはお坊様だ。神社の兄とはまた違うが、右大臣家ではお寺と親しくしていると聞いた。
「祈祷していただかねばならないことがあったということですね」
「まだ朱雀皇子に直接お目にかかっていないのならわからないかもしれませんが、皇子ご自身は決してちまたで言われているような悪い方ではありません。皇后が朱雀皇子をそれは厳しくお育てになったようですので、その反動でしょう、皇子ご自身はとても甘えたがりなのです」
私はすぐにピンときた。そうか。女性に母親の愛を求めているのね。
「それで女性の影が多いということですね。楓姫様と朱雀皇子は仲が悪かったわけではないということですか?」
「ここだけの話ですが、皇子様からの私を正室にしたいという気持ちはほとんど感じられませんでした。相手に愛を求めるばかりでご自身からはほとんど与えてはくださらない。そして飽きっぽいのです」
最悪かもしれない。そういう男君は苦手だ。
「時間がありません。聞きたいことをまず伺います。桔梗は皇子の何ですか?」
楓姫が息をのむ様子がわかった。
「さすがに古部家の姫。すでに当たりをつけていたんですね。彼女は皇子のふたつ年上で、筆頭侍従である忠信の子です。昼はまるで皇子の姉のようで、夜は情人です」
やはりそうだったのか。
「そのことは東宮にいるものは皆知っています。そして、帝と皇后もご存じです。彼女を側に置くことで彼がきちんと政務をこなしているので離すことができないでいました」
「楓姫さまが正室となれば、それも終わりだと皆様思われていたんですよね」
「そうですね。あちらに上がる前、皇后からそれとなくそういうお話しを頂戴しました。でも、実体はもっと深刻でした」
「え?」
「東宮殿で仕えているものたちのほとんどの弱みを握り、困っているものたちに金子を与え、牛耳っていたのです」
「ええ!?」
「朱雀皇子の伽を一度でもして、その寵愛を独占しようとする女房は、桔梗により東宮を出されたり、実家へ戻る前に手を下されたりということもあったようです」
小さい声で話された。
「楓姫様にも何かするような不届き者だったなら、排除してしまってもよかったのではありませんか?皇后様もきっと望んでおられたなら手を貸して下さらないのですか?」
「各御殿に間者を入れているのです。あとで気づいたのですが私達のことは彼女に筒抜けでした。ある日私の腹心だった乳母子の女房を朱雀皇子の目につくところへわざわざ呼んで、興味を持たせました。その夜、皇子は彼女に伽をさせたのです」
「え!」
「彼女は私に申し訳ないと思ったのでしょう。何も言わなかった。でも日に日に顔色が悪くなる。おかしいと思っていながら聞けなかった私も悪いのです。彼女は何度も皇子に……そして……」
「病になったのですか?」
「それは表向きです。子を宿していたことがわかり、実家へ返しました」
「そうだったんですね」
「でも……彼女は結局、子を産めませんでした。戻ってから流れてしまったのです。それも本当かわかりません。桔梗が手を回したのかもしれないからです」
「……」
「私は、退出する前の彼女から桔梗の手引きで朱雀皇子が彼女を孕ませたことを聞き、心底怒りが収まりませんでした。それ以降、私は皇子を受け入れることができませんでした」
「朱雀皇子に直接言ったのですか?」
「いいえ。彼は拒絶し出した私を見て何かわかっていたと思います。皇后の耳にも入り、彼女は自分のお付き女房ひとりを皇子に差し上げたくらいで騒ぐのは論外だとしかられました。将来の皇后になる身なのだから寛容になるようにと言われたのです」
白髪の女房頭が御簾内で囁いた。
「お通しなさい」
「はい。それでは古部様。こちらへどうぞ」
御簾の内に入れて下さる。萩野は女房頭が別室へ連れて行こうとしたが、縁側で控えると言って固辞した。権太との約束を守るためだ。
「その方は古部様のお付きのものですか?」
「はい。乳母子でございます。一番信用できます」
「それならば、御簾内にお入れしましょう。もうそろそろ夜は冷えますゆえ」
「お心遣い感謝致します。萩野、入りなさい」
「はい。ありがとう存じます。それでは失礼致します」
「古部様。一枚几帳の内にお入り下さいませ」
楓姫の小さな声がした。
「え?それは……」
「小さい声でお話しいたしますれば、お入り下さいませ。誰に聞かれるかもわかりませぬ故」
私は萩野に目配せし、自分だけ扇を使って顔を隠しながら几帳の内へ入った。ゆかしい香が焚かれている。
一枚几帳内に入ったが、その目の前にも几帳がおかれており、楓姫の姿を上手く隠していた。部屋の調度品は見事なものだ。静姫のところにあるものと同等かそれ以上。彼女の身分を再認識できた。姫は脇息に寄りかかっておられるのだろう。萌黄色の裳裾が見える。
「今日は直接お目もじする失礼をお許し下さり、誠にありがとうございます」
「いえ、こちらこそ。文を下さるのは大変だったことでしょう。左大臣家の若様も姉君のためとはいえ、このようなところへ文をお持ちになるなんて頭が下がります。わたくしにもこんな兄弟がいたらと思わずにはおれませんでした」
「……楓姫様……」
「東宮殿にはまだ入られていませんよね。もうわたくしをお訪ねになるような心配事がございましたか?」
「いえ。ご存じかもしれませんが、朱雀皇子は今帝とご一緒に伊勢へ行幸中です。お戻りは早くとも来月になるかと思います。戻られる前に準備をして東宮へ入り、整えておくようにと触れがございまして」
「そうでしたか。静姫はおそらく、私がいた寝殿に入られるはずです。東の対ですよね?」
「そのとおりです」
「今日は全てお話しします。実は私も古部様ではなく、父の懇意にしている幽斎様に少しご相談し、祈祷をしていただいたことがあるのです」
幽斎様とはお坊様だ。神社の兄とはまた違うが、右大臣家ではお寺と親しくしていると聞いた。
「祈祷していただかねばならないことがあったということですね」
「まだ朱雀皇子に直接お目にかかっていないのならわからないかもしれませんが、皇子ご自身は決してちまたで言われているような悪い方ではありません。皇后が朱雀皇子をそれは厳しくお育てになったようですので、その反動でしょう、皇子ご自身はとても甘えたがりなのです」
私はすぐにピンときた。そうか。女性に母親の愛を求めているのね。
「それで女性の影が多いということですね。楓姫様と朱雀皇子は仲が悪かったわけではないということですか?」
「ここだけの話ですが、皇子様からの私を正室にしたいという気持ちはほとんど感じられませんでした。相手に愛を求めるばかりでご自身からはほとんど与えてはくださらない。そして飽きっぽいのです」
最悪かもしれない。そういう男君は苦手だ。
「時間がありません。聞きたいことをまず伺います。桔梗は皇子の何ですか?」
楓姫が息をのむ様子がわかった。
「さすがに古部家の姫。すでに当たりをつけていたんですね。彼女は皇子のふたつ年上で、筆頭侍従である忠信の子です。昼はまるで皇子の姉のようで、夜は情人です」
やはりそうだったのか。
「そのことは東宮にいるものは皆知っています。そして、帝と皇后もご存じです。彼女を側に置くことで彼がきちんと政務をこなしているので離すことができないでいました」
「楓姫さまが正室となれば、それも終わりだと皆様思われていたんですよね」
「そうですね。あちらに上がる前、皇后からそれとなくそういうお話しを頂戴しました。でも、実体はもっと深刻でした」
「え?」
「東宮殿で仕えているものたちのほとんどの弱みを握り、困っているものたちに金子を与え、牛耳っていたのです」
「ええ!?」
「朱雀皇子の伽を一度でもして、その寵愛を独占しようとする女房は、桔梗により東宮を出されたり、実家へ戻る前に手を下されたりということもあったようです」
小さい声で話された。
「楓姫様にも何かするような不届き者だったなら、排除してしまってもよかったのではありませんか?皇后様もきっと望んでおられたなら手を貸して下さらないのですか?」
「各御殿に間者を入れているのです。あとで気づいたのですが私達のことは彼女に筒抜けでした。ある日私の腹心だった乳母子の女房を朱雀皇子の目につくところへわざわざ呼んで、興味を持たせました。その夜、皇子は彼女に伽をさせたのです」
「え!」
「彼女は私に申し訳ないと思ったのでしょう。何も言わなかった。でも日に日に顔色が悪くなる。おかしいと思っていながら聞けなかった私も悪いのです。彼女は何度も皇子に……そして……」
「病になったのですか?」
「それは表向きです。子を宿していたことがわかり、実家へ返しました」
「そうだったんですね」
「でも……彼女は結局、子を産めませんでした。戻ってから流れてしまったのです。それも本当かわかりません。桔梗が手を回したのかもしれないからです」
「……」
「私は、退出する前の彼女から桔梗の手引きで朱雀皇子が彼女を孕ませたことを聞き、心底怒りが収まりませんでした。それ以降、私は皇子を受け入れることができませんでした」
「朱雀皇子に直接言ったのですか?」
「いいえ。彼は拒絶し出した私を見て何かわかっていたと思います。皇后の耳にも入り、彼女は自分のお付き女房ひとりを皇子に差し上げたくらいで騒ぐのは論外だとしかられました。将来の皇后になる身なのだから寛容になるようにと言われたのです」
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