叱られた冷淡御曹司は甘々御曹司へと成長する

花里 美佐

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噂と決意2~玖生side

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 それをいいことに、引きずるように連れて行く。

 「任せておけ」

 そう小さく言いおいた。エレベーターに三人で乗り、クラブフロアのある二十五階に着いた。エレベーターの開いた先にクラブフロアという看板と、洒落た家具、その上に花が花器に活けてある。

 そう、今まさに活けている最中だ。横には花を持ったまま、花器を見つめる中年の女性がいた。

 鷹也を見ると頷いた。
 
 進もうとしたら、また由花が引っ張り、頭を左右に振っている。
 
 「大丈夫だ」
 
 耳元で囁いたが、その声に家元が気づいて振り向いた。

 三人を見比べるように見て驚いている。
 由花が手を離そうと後ろへ下がる。しょうがないから上から抑えたまま進んだ。

 鷹也が口火を切った。

 「五十嵐さん。今日もご苦労様です」

 「あ、ああ、オーナー。いえ、いつもの事ですから」

 「今日は親友が来てましてね。ご紹介しましょう、清家財閥の清家玖生さんですよ。お隣の彼女はあなたもよくご存じでしょう」

 「え、あ、織原流の次期家元ですよね。清家さん、初めまして。華道五十嵐流の家元をしております、五十嵐梅子と申します」

 厚化粧のおばさんが俺に頭を下げた。すぐに頭を上げて由花をじっと見ている。

 「いつも由花がお世話になっているそうで、今日は是非ともお礼のご挨拶をさせていただこうと思いましてね」

 俺がそう言うと、家元は驚いた顔をして鷹也と俺の顔を見比べている。

 「あ、あの……オーナー、あの」

 鷹也に説明を求めた。

 「何か大きな誤解があるようですね、五十嵐さん」

 鷹也が低い声で言った。

 「え?」

 家元は固まっている。

 「あなたの噂のせいで、俺は親友から絶縁されそうになりました。彼は親友であり、大事な取引のある清家の御曹司ですよ。訂正して頂かないと、このホテルグループの危機です」

 「……どういう意味でしょう?」

 家元は胸を張り、言い返した。

 「五十嵐さん。織原由花は、私と結婚前提で付き合っているんですよ。鷹也は私のために彼女を周年パーティーに抜擢した。それをなんだか確認もせず勘違いして鷹也とそういう関係だと吹聴なさっているとか……」

 家元は青くなった。そして、由花を見て指さした。

 「……あ、あなた、何なの?仕返しにしてはやり過ぎじゃない?今度は清家財閥?怖すぎるわ」

 「五十嵐さん、由花は私が必死で口説いてようやく最近付き合ってもらえるようになりました。オーナーとは何もありませんよ。それと、由花が誘惑して仕事を取ったとかろくでもない嘘をさも本当のように言いふらしておられるようだが、根拠のないことをあまり知らない相手を見ないで言わないことですね。自分ひとりで責任を取れますか?」

 「……そんな、でも神田ホテルだって、本当のことでしょ」

 由花が口を開いた。

 「五十嵐さん。神田さんとは確かにお付き合いしていました。でも、ご存じの通り、彼は現在別な女性と婚約されています。私はいいとして、神田さんのことを話に出すのはよくないと思います。あちらがお聞きになったらさぞお怒りになると思います」

 「そうだ、色仕掛けに落ちたのかと神田に直接聞いてみるといいですよ。真面目な由花がそんなこと出来るわけない。彼女を知っている人なら皆わかっている。それにどれだけ俺が苦労して彼女と付き合ったか教えてさしあげましょう」

 「……そんな……わ、わかりました」

 家元は俺の顔を見て真っ青になった。

 鷹也が最後に言った。

 「五十嵐さん。うちとしても、根拠のない噂を流す人を使うほど取引相手に困っているわけじゃない。これを機にやめて頂いて結構ですよ。他にも流派はありますから。ねえ織原さん」

 鷹也の痛烈なひと言に、震えている。由花が言った。

 「五十嵐さん、申し訳ございません。私も未熟で神田さんとのそういった噂が流れていることを知らずにいました。神田さんが私と別れたのはそういうこともあってのことだったのだと思います。今まで祖母が庇って私の耳へ入らないようにしてくれていたんだと思います」

 「……もういいわ。悪かったわね。オーナーごめんなさいね。誤解だったと皆にはよく言っておきます」

 俺は呆れて彼女を見ていた。ごめんなさいね?それで済むと思うなよ。鷹也は彼女をじろりと見ている。

 「五十嵐さん。あなたの今後の言動を見て、これ以降の契約は考えさせてもらう。また連絡します」

 鷹也が言い放つと彼女はおびえた顔をしてうなずいた。

 由花が鷹也に何か言おうとしたので、俺は彼女の口を塞いだ。
 そんな俺の仕草を見て、五十嵐さんは言った。

 「清家さん。彼女のことでは大変失礼しました。お許し下さい」

 「……謝る相手が違う」

 「……織原さん、ごめんなさいね」

 「いいえ」

 俺たちは意気消沈したおばさんを置き去りにして、最上階のレストランフロアへ移動した。

 「由花。何だ、その目は……」

 「……だって。また、噂の種を蒔いたようなものだもの。結局相手が違うだけで、同じ事言われそう。あなたに迷惑かけたくなかったのに」

 「お前と俺とは一蓮托生。何が迷惑だ。今後お前をどうこう言う奴は俺に喧嘩をふっかけているということを教えてやったんだよ。目にもの見せてやる」

 「お願い、やめて。私のことで何かあなたに迷惑かけたら大奥様にも顔向けできない。きっとまた清家の方々に嫌われて私……」

 下を向いている由花を見て、隣で手を握った。

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