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噂と決意1~玖生side
しおりを挟む玖生はアメリカへ行く前に親友の鷹也と会った。
「玖生。清家総帥がとうとうお前になるらしいと財界ですでに噂になってる。俺と会うということは、決心したんだな」
「ああ」
ツインスターホテルのオーナールームへ来ていた。他人に聞かれたくないので、ここを選んだのだ。
「ということは、彼女に結婚を申し込んだんだろ。まさか断られた?」
「いや……結婚前提で付き合うことになった」
鷹也は満面の笑みで祝福してくれた。
「そうか、よかったな玖生。お前の幸せを見届けられて俺も安心だ。だが、付き合ってる時間なんてないだろ?結婚は条件だっただろ」
「だが……彼女にも都合がある」
「玖生。耳に入れておきたいことがある。そしてお前にわびておく」
「なんだ?」
「うちのこの間の創業パーティーで織原さんを使ったことが悪い噂になっている」
「なんだと?」
玖生は鋭い目で鷹也を見た。
「神田と彼女が付き合っていたことが諍いの言葉から漏れた。あのとき、俺はお前が心配で、彼女がきちんとした女性か確認したくて仕事を頼んだ。実はその後今までうちのホテルで花の契約をしていた五十嵐流の家元が俺と彼女の仲を勘違いして、仕事を取られたと吹聴して回っている。神田と付き合っていたことをほのめかして、神田の仕事も彼女が色仕掛けで取ったかのように言い、俺がまた彼女に惑わされて仕事を回したかのように言われているんだ」
玖生はギリギリと手を握りしめた。
「それは……お前、噂を撤回したんだろうな?」
「もちろんだ。すぐに撤回した。だが、彼女を使った理由は当初五十嵐流の家元には個人的理由と言ってしまったのが憶測を呼んだようだ。だが、事実を話すのも彼女のためにならない。適当にごまかしたが、すでに遅かったようだ。本当にすまない」
鷹也は頭を下げた。
「わかった。由花はそのことを知っているのか?」
「どうだろう……お前に何も言ってなかったか?」
「彼女は俺が大事な時期だとわかっているから何も言わないだろう」
「悪いな、玖生。こんなことになるとは思わなかったんだ」
「いや、お前のせいじゃないだろ。その五十嵐流とやらをまた使っているんだろう?」
「ああ」
「次に花を活けにくるのはいつだ?」
「ちょっと待て。調べてくる」
そう言って鷹也は部屋から担当に連絡した。
「玖生。ちょうど今日来るらしい」
「いつ来る?」
「いつもは昼時だ。これから来るだろう」
「噂を流したその家元が来るのか?」
「ああおそらくは。俺に他へ依頼させないよう、釘を指すために、あれ以降必ず家元がわざわざ来る」
「わかった」
俺は由花へ電話すると、昼をツインスターホテルで一緒にとらないかと誘った。アメリカへ行くまであまり間がないので、出来るだけ会いたいと言ったら何とかして行くと可愛いことを言ってきた。
「玖生、何する気だ?」
「荒療治といこう」
玖生がニヤリと笑う。鷹也はこういう玖生に逆らえないとわかっているのでため息をついた。
「わかったよ。その代わり、あまり派手にやるなよ」
「ああ。任せろ」
そう言うと、由花がくるまでエントランスへ降りて少し話しをした。
すると入り口から由花が入ってきたのが見えた。俺と鷹也が一緒にいるのを見つけるなり、すぐに鷹也へ向かって駆けてきた。そして深々と頭を下げた。
「中田さん、きっとご迷惑をおかけしてますよね。私のせいで変な噂になってしまっているようで、本当に申し訳ありませんでした」
やはり、知っていたのか。俺が鷹也をひと睨みすると、鷹也は慌てて由花の頭を上げさせた。
「いや、こちらこそ悪かった。君に頼んだ理由を個人的な理由と言ってしまったせいだ」
「私もそういったことに思い至らず、未熟だからです。以前いた神田ホテルのこともこんなに噂になっていたなんて知らずに……」
由花は唇を噛んだ。
「由花。どうしてお前に鷹也が依頼したのか、その本当の理由を噂を流した元凶に教えてやろう」
「え?」
鷹也は今日が二週間に一度の花を代える日で、五十嵐流の家元が来ると話した。
由花が驚いて立ち止まり、俺たちの顔を不安げに見た。
「由花は俺にエスコートされとけ」
そう言って、自分の腕に彼女の手を引っ張り絡ませた。
「玖生さん、や、やだ、何するの……?」
彼女はびっくりして、手を引こうとした。
そうはさせじと上から手を重ねた。
「い、いや、ダメよ。あなたまで巻き込みたくない。それにあなたは今、継承前の大事な時期よ。お願いやめて。スキャンダルになる」
「いいか、由花。お前は俺と結婚前提で付き合うことになったはずだが、間違いか?」
ちろりと睨むと、驚いた顔をしてこちらを見た。
「……まさか、公表するつもり?」
「ああ。俺の覚悟を内外に見せるいい機会だ」
「だめよ、こんなやり方。私のせいで……」
「だからやるんだ」
インカムで何階に家元がいるか、鷹也が確認した。目配せした鷹也の後をついていく。由花は俺の腕を引っ張り、行かせまいとする。
手を叩き、顔を覗きこみ、笑顔を見せてやる。
それでも泣きそうな彼女を見て、わざと頬に軽くキスしてやった。
びっくりしたのだろう、真っ赤になった。彼女の腕の力がそのとたんに抜けた。
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