『えっ! 私が貴方の番?! そんなの無理ですっ! 私、動物アレルギーなんですっ!』

伊織愁

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9話

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 リジィの寝室で少女たちの楽しそうな会話が聞こえてくる。シアーラは、リジィが友人と話している様子を寝室のガラス扉、居間側に立って聞いていた。 

 リジィの全てを報告しろと言われてはいるが、リジィのプライバシーもあるので、全ては話していなかった。

 リジィの寝室にアヴリルの声が響く。 

 いつもの近況報告会だ。

 『ふ~ん、じゃ、働くこと許してもらえたんだ?』
 「うん、そうなの。船代を稼がないとね」
 『船代は結構かかるもんね。うちの商会も、数か月に一度は人族の大陸に行くらしいんだけど、大変みたい』
 「そうなんだ」
 『あ、そうだ!うちの商会も人族とちょっとだけど取引があるのよ。えと、カルタシア王国だっけ?リジィが生まれた国』
 「うん、アーヴィング領を運営してたって……今はマッケイ? だったかな?名前は変わってるみたい」
 『そっか、リジィか良ければ叔父様に調べてもらうよ』
 「う~ん、でも申し訳ないし」
 『大丈夫だって、大陸へ行くにしても予備知識が必要でしょ?』
 「……それはそうなんだけど……アヴリルたちは大丈夫なの?」
 『大丈夫だって、叔父様の商会はカウントリムでは結構、大きいんだ。任せてよ、それに知りたいんでしょ?本当にリジィのご両親が悪事を働いていたのか』
 「うん、知りたい。でも気を付けてね。 無理しないでよ!」
 『うん、危険回避はリジィよりはあるからね』
 「ありがとう、アヴリル」
 『私たちは親友だもん。お礼なんていいよ』

 人攫いに簡単に攫われてしまい、何も言えないリジィは素直にアヴリルに頼むことにした。何か分かったら報告してもらうようにした。

 ◇

 「リジィちゃん、エールを三番テーブルにお願い!」
 「は~い!」

 エールのジョッキを二本ずつ両手に持ち、リジィは三番テーブルへ向かった。

 オアシスにある唯一の居酒屋、狼の寝床は今日も冒険者や旅人たちが立ち寄り、お店は盛況だ。

 「お待たせしました!エール四本です!」

 エールを置いて、冒険者からお金を受け取る。すぐに計算をして、お釣りを冒険者に渡すと彼らから声がかかった。 

 彼らが少しだけ頬を引き攣らせているのは、リジィの肩にラトの妖精が乗っているからだ。ラトの妖精は鋭い眼差しで冒険者たちを睨みつけていた。

 「ありがとよ、治療院の受付のお姉ちゃん。今日はこっちで働いてるんだな」
 「大丈夫なのか?」

 冒険者たちには有名になりつつあるラトの妖精。恐る恐るラトの妖精を覗き見ている。見えにくいが、リジィの手首には番の刻印が刻まれている。リジィは眉尻を下げて、困ったように口を開いた。

 「大丈夫ですよ。ここで働くのは今日だけなので。アデレードさんが風邪で倒れてしまって、人手が足りなくて」

 狼の寝床には、従業員がライオネルの妻、アデレードを含めると五人いる。

 今流行りの風邪で半分がダウンしてしまった。オアシスに季節外れの風邪が流行していた。
 
 「そうか、風邪が流行ってるからな」
 「じゃ、イアン先生の治療所、今は忙しんじゃないのか?」
 「イアン先生の所には、シアーラが手伝っているので大丈夫ですよ」
 「ああ、あの無表情なねぇちゃんか」

 冒険者の人たちは分かりやすく頬を引き攣らせた。本当は、狼の寝床の手伝い依頼はシアーラに来ていた。昔馴染みのアデレード経由で。しかし、女将のキーリーがシアーラではお客から苦情がくるとリジィに白羽の矢が立ったのだ。無表情なシアーラでは、冒険者と旅人を怯えさせてしまう。

 今まさに、治療院では怪我を負った冒険者が受付で立つ無表情なシアーラに怯えていた。リジィは気づいていないが、大丈夫だろうと勝手に思っている。

 自身が無表情なシアーラに慣れてきた事と、ギャップである喜怒哀楽が激しい声音に麻痺している事にも気づいていない。

 無表情で声だけは喜怒哀楽があるのは、余計に怖いという事に。

 冒険者の皆と話しているとそばで苛立つラトの妖精から舌打ちが聞える。

 『リジィ、すまない。総団長に呼ばれてしまった。リジィが危険な時に』
 「大丈夫ですよ、ラト様。冒険者の皆さんは優しいですから」
 『しかしっ』

 何か言いかけたが後ろを向いたラトの妖精から再び舌打ちが鳴った。総団長の命令には逆らえないらしく、ラトの妖精はすぐに戻ると言い捨て、伝書の妖精は消えた。

 「リジィちゃん、ビーフスープ上がったよ。二番テーブルにお願い」
 「はい!」
 「その後、五番テーブルの片づけもお願い」
 「はい!」

 リジィが狼の寝床で忙しく働いている頃、オアシスの門前では騒動があった。 

 転送魔法陣から現れた人影に詰め所の騎士団員たちは瞳を大きく見開き、驚愕の表情を浮かべていた。

 ◇

 一方ラトは、後ろ髪を引かれながら伝書の妖精の通信を切った。ラトの執務室の扉前では、王城からの使いが来ていた。

 彼は早く出発したくて落ち着きなく狼の尻尾を揺らしている。

 ラトは「仕方ない」と深いため息を吐いた。重い腰を上げたラトは転送魔法陣の間へ向かった。

 しかし、ラトが転送された場所はいつもの王宮の転送の間ではなかった。転送された場所は王太子宮の転送の間だった。 

 王宮の使いは総団長の使いではなく、王太子の使いのようだ。ラトの胸に嫌な予感がよぎり、徐々に不安が広がっていく。

 (あまり王宮には来たくなかったんだが)

 「ヴォールク第二騎士団長、お急ぎを。 オフィーリア殿下に見つかっては面倒なことになりますので」

 使いに先を促されラトは無言で頷き、歩く速度を上げた。奥の王太子の私室に辿り着いたラトは使いが数回、ノックする様子を眺めた。すぐに従者の返事があり、中から扉が開けられた。

 すぐさま部屋の中へ入ると、王太子は居間で会うとのこと。ラトは入ってすぐの執務室で良かったのだが、もしも第三王女が部屋へ入って来た時のため、居間で話したいのだと、王太子は言っているという。

 「分かった、案内してくれ」ラトはため息を吐いて、従者に手を振って案内を促した。従者はラトの言葉を聞き、笑顔を浮べる。

 「はい、こちらです」

 中庭を覗ける渡り廊下を進み、ラトは使いに先導されるまま歩いた。何度か曲がった後、居間に辿り着く。

 使いが扉をノックすると、「入れ」と今度こそ宮の主である王太子の声が聞こえた。

 「久しぶりだな。ラト」

 居間へ入ると王太子であるレジナルド・ウールブルが豪奢なソファーに腰かけていた。レジナルドは白銀の銀髪が煌めく白狼族だ。

 銀色の毛並みが美しい尻尾を親し気に揺らしている。国王も白銀の白狼族で、二人は性格も容姿もよく似ている。

 王妃が黒狼族で、生まれた王子王女は五人いるが、黒白が大体半々だ。

 私室の居間は流石に王太子の宮、一級品の装飾や絵画が飾られていた。

 レジナルドはにこやかな笑みを浮かべていた。ラトは促されるままに向かいのソファに座る。

 「お呼びと聞き、ラトウィッジ・ヴォールクが参じました。王太子殿下もお変わりなくご健勝のことで何よりです」
 「堅苦しい挨拶はいい。それよりも、もうフィーが限界を超えそうだ」
 
 ラトとレジナルドの顔に暗い影が落ち、緊張が走る。フィーとは第三王女の愛称で、オフィーリアの事を差す。

 「……っそれは、私の番のお披露目を早くという事でしょうか」
 「まぁ……後はラトの番に一言物申したいんだろうな」
 「……っあの我儘姫はリジィに何の用があるんだ!」

 ラトの憤った様子にレジナルドは「申し訳ない」と表情に出していた。

 「フィーは、ずっとお前のことが好きだったからな。動物アレルギーがあるから諦めていたのに……。お前の番が自分と同じ動物アレルギーがある。しかも人族だったからなぁ」

 大きく息を吐き出したレジナルドは本当に参っていた。綺麗な銀髪の耳と尻尾が垂れている。

 ラトに番ができてからオフィーリアは私室で暴れまくり、メイドや侍従に当たり散らしているらしい。レジナルドたち王家の家族がずっと抑えてきたが、もう限界だという。

 「第三王女のことは妹にしか思えませんので、気持ちを打ち明けられたこともありますが、ずっと断ってきました」
 「そうか……まぁラトがフィーのことを妹としか思っていないのは知っていたがな。フィーも分かっているはずなんだ。今はラトに内緒で番をフィーのお茶会へ連れて来いと騒いでいる」
 「……っな!リジィは貴族ではないんですよ。うまく立ち回れるわけがありません!」
 「分かっている。動物アレルギーの件もあるだろう?皆がラトの番のために耳と尻尾は引っ込めないぞ。顔の布も取ることを強要されるだろう」
 「……っ薬を飲んでいるので、発作は抑えられますが」
 「それも分かっている。イアンが診てくれているのだろう?なら、お前の番はフィーと同じ状態だろう」
 「はい」
 「はぁ~っ、どうしたものか。絶対に連れて来いってうるさいんだよ。フィーは絶対に大人しくしていないだろうし、ラトの番にマウントを取りにいくに決まっている!」
 「……っ」

 二人が我儘姫であるオフィーリアの対応をどうすればいいのか悩んでいた頃、オアシスでもひと悶着あった事が報告された。

 「殿下!」
 「なんだ、慌てて……って、何があった?まさか、またフィー絡みじゃないだろうな」
 「それが……ジャイルズ殿下がオアシスへ向かいました!オフィーリア殿下に言われて転送魔法陣に押し込まれ……そのままオアシスへ飛びました!」
 
 「ジャイルズの方か」とラトとレジナルドは安堵の息を吐いた。

 オフィーリアがオアシスへ突撃したのかと、肝を冷やしたのだ。同時に第二王子であるジャイルズで良かったとソファーで脱力した。

 「……そうか。まぁジャイルズなら上手くやるだろう。ラト、お前は王都の屋敷に、いや、オアシスへ行った方がいいんじゃないのか?フィーはトラウマがあるし、王城から絶対に出ないからな」
 「そうですね。ジャイルズ殿下にオアシスで会って来ますよ」
 「ああ、そうしてくれ。ジャイルズもお前に会ったからと逃げやすいだろうから」

 「はい。後、畏れ多いですが」と前置きしたラトの金色の瞳が鋭さを増し、金色を色濃く滲ませて忠告を口にする。

 「姫様のこと、あまり甘やかさない方がよろしいかと」
 「分かってはいるんだけどな。申し訳ないが、番のお披露目のこと考えておいてくれ」

 ラトに痛いところを刺され、レジナルドは困ったように苦笑をこぼす。だが、ラトの進言は不敬には問われなかった。

 ◇

 オアシスの転送魔法陣から現れたのは、シェラン国の第二王子であるジャイルズだった。オアシスに入って来る冒険者や旅人たちの荷物検査をしていたダレンや騎士団員は、自国の第二王子の姿を見て仰天した。王子は変装もしておらず、高級そうな服装に、腰に差している剣は眩い装飾がされていた。

 いち早く動いたのは副団長であるダレンだった。

 「そこの者、止まれ。オアシスに入る時は荷物検査が必要だ(ジャイルズ殿下!なんて格好で来られたんですか!カモにされますよ!)」
 「そうなのか?しかし私は何も荷物を持っていないが?(おお、ダレンか?そんな恰好だから分からなかったぞ)」
 「とりあえず、こちらへ来てもらおう。 そんな格好で歩かれたら問題が起きる。(どうしてこちらへ来られたんです?お忍びにしては目立ちすぎですよ!)」
 「分かった。(仕方ないだろう。フィーに無理矢理転送されたんだから)」

 小声でジャイルズと話したダレンから深いため息が出そうになった。ダレンに保護されたジャイルズは詰め所に連行されていく。扉を閉めるとダレンが大きく息を吐き出した。

 ジャイルズが第三王女の名前を出したことで、大体の理由を察したダレンは、奥の部屋から自身が使っている冒険者用の予備の服を取りに行った。

 「こちらのお召し物にお着替えを。私の服で我慢なさって下さいませ。そのままの格好だと、確実に愚か者にカモられますから」
 「悪いな、ダレン」
 「いいえ。何となく予想がつきますので。もしかしなくても……オフィーリア殿下が団長の番を連れて来いとか言われたのでしょうか?」
 「ご名答だ、ダレン。私の執務室に突撃して来たフィーが「お茶会を開くからラトの番を連れて来い」と何の用意もさせずに私を転送魔法陣へ放り込んだんだ。酷い妹だと思わないか?」

 ダレンから渡された冒険者の服に着替え、姿見に映してジャイルズは自身の服装を確かめている。

 「じゃ、ダレン。ラトの番の所まで案内しろ」

 訝し気な表情を浮かべたダレンに、ジャイルズは軽い様子で手を振った。

 「大丈夫だ。ラトの番を王城には連れて行かない。連れて行ったらフィーが何をするか分からないからな。ただ、私がラトの番に会ってみたいだけだ」
 「承知致しました、ジャイルズ殿下。ご案内致します」

 小さく息を吐いたダレンは、面倒が起きないようにと内心で祈った。
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