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第十九話
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「無理よ」
無表情な美少女から無情にも放たれた言葉が吹き抜けの廊下に響き、マリーは固まった。
「デーヴィッド殿下には指名して頂いたけど、生徒副会長なんてやる気ないわ。 貴方が私の分の仕事をやっておいて頂戴。 これから婚約者と観劇を観に行くのよ」
学院で準王族であるマリーの次に高位貴族であるクローディア・アステリア侯爵令嬢の言葉である。 昨日の放課後、新学年が始まっても生徒会室に現れない生徒副会長から、素気無く3年の教室から追い返された。 クローディアの後ろでは、女子生徒の忍び笑いが拡がっていた。
マリーの目の前で教室の扉がピシャリと閉じる音が廊下に響き、中央に設置されている吹き抜けの螺旋階段まで響いた。
(門前払いを喰らってしまったっ)
デーヴィッドが言うように簡単には行かない様で、前途多難だと、情けない顔を晒して項垂れた。
◇
少し冷たい風が吹き、マリーの頬を撫でる。 枯れ木の枯れ葉が舞う季節、新学年が始まった。
マリーは2年生となり、慣れないながらも、元は真面目な性格なので、何とか生徒会長として周囲の協力もあって立ち回れている。 カラムの騒動以降、素行の悪い生徒たちが大人しくなった事もある。 しかし、元は新興貴族のフランネル家、中々、高位貴族の令嬢子息には認められていない。
デーヴィッドと話した後、改めて引継ぎがあり、『マリーなら大丈夫だよ。 簡単、簡単』とデーヴィッドが軽く宣った事は衝撃だった。 マリーは青ざめて頭を抱え、クレイグは少しだけ呆れた様な表情をしていたが、兄であるデーヴィッドの言葉をしんじている様だ。
そして、マリーを置いて、クレイグはあっさりと留学して行った。 慣例なら仕方ないが、寂しくて胸が痛い。 1週間に1度、近況報告と甘い言葉が綴られたクレイグの手紙がマリーの元へ届く。
手紙の内容は……。
『親愛なるマリーへ。 元気だろうか、俺は元気にやっている。 友人も出来た。 こちらは騎士科の教育が熱く、男女関係なく鍛えられている。 勿論、学業の方にも力を入れられていて、新しい事を学ぶ事も楽しい。 学園生活は楽しいが、マリーがいないのは、とても寂しい。 会いたい、会いたい、会いたい。 マリーのいい香りがする髪に触れたい……』
以上、砂糖を吐く様な甘い言葉や卑猥な言葉が続くので、自重の為、割愛する。
『いや、貴方は誰?』とクレイグとは思えない手紙の内容を思い出すと、背中に悪寒が走ったが、元気にやっている様で自然と表情が緩んだ。
(髪フェチ? いいや、香油フェチね……)
「えぇ、アデラ様がクレイグ殿下の留学先にっ?!」
中庭を歩いていると、東屋で令嬢たちが話し込んでいる内容がマリーの耳に飛び込んで来た。
「何でも、同じ学園の大学院に入学されたらしいですわ。 隣国の大学は女性も多く入学されてますし」
「まぁ、ではクレイグ殿下を追いかけられて?」
「あの方って、デーヴィッド殿下狙いではなかったかしら?」
寝耳に水だ。 クレイグの手紙にはアデラの事は何も書いていなかった。 きっとクレイグの事だ、知らせる事もないと思ったのだろう。
屈んだ視線の先で枯れ葉が風で舞っている。
突然、クレイグの話が聴こえて来たので、無意識に隠れてしまった。 中庭の枯れ葉が多くなってきたようで、そろそろ掃除をしなくてはと思い、中庭の状態を確認しに来たのだ。
(……っ失敗したわっ、放課後に来ればよかったっ)
美化委員は相変わらず、人数が少ない。 美化委員会と相談して、執行委員にも手伝ってもらい、掃除のスケジュールを組まないといけない。 思わず隠れてしまうのは、1年時に美化委員で培った習性である。
「だと思いますわ。 だって、あちらではクレイグ殿下とずっとご一緒に居るとか。 とても仲睦まじい様子らしいですわ」
噂話に花を咲かせている令嬢たちは、隠れているマリーに気づかず、楽し気に囀っている。
「デーヴィッド殿下が婚約者候補の皆さまを解散させましたしね。 アデラ様は王族に入りたくて仕方がないんではないかしら」
「アデラ様、必死過ぎますわっ」
「いい気味ですわ。 アデラ様も、フランネル伯爵令嬢も」
1人の令嬢が馬鹿にした様な笑い声を立てる。 わざとらしく同情した様な声で話す令嬢の甲高い声がマリーに響いた。
「まぁっ、フランネル伯爵令嬢はご存じなのかしら?」
「流石に、知らない訳ないんじゃない? こんなに噂になっているんですもの」
(えぇ、えぇ、こんなに噂になってますものねっ! 全く、存じておりませんわっ! ……っクレイグさまっ……私は聞いてませんよっ!!)
背後で東屋から出て行く令嬢たちの足音が響いた後、扇子の木が折れる音と布が無残にも引きちぎられる音が響いた。
◇
アデラがクレイグの留学先に行った理由は何となく想像できた。
王太子であるデーヴィッドが学院を卒業する前、マリーとクレイグの婚約式で王子の婚約者候補たちを解散させたからだ。 次はデーヴィッドの番だと思っていた貴族たちは、驚愕の表情で呆然としていた。
『弟のめでたい席で、こんな話をするのは申し訳ないのだが……婚約者候補のご令嬢たちと、交友関係を続けていて、私の気持ちがはっきりと決まった。 この場を借りて報告したいと思う。 私は、婚約者候補の中から誰も妃を選ばない。 クレイグもフランネル嬢と婚約した事もあり、解散させようと思う。 ご令嬢方には責任を以って、王家から新たな婚約者候補を紹介する』
会場は悲鳴と驚きの声が響き、泣き出してしまう令嬢、集まった貴族たちは騒然としていた。
『そ、そんなぁ、デーヴィッド殿下っ!』
『嫌ですわっ! 考え直してくださいませっ』
悲嘆にくれる令嬢たちの中で、いつも微笑みを浮かべてデーヴィッドのそばで寄り添っていたアデラが荒れに荒れた。 持っていたワイングラスを床に叩きつけ、デーヴィッドに詰め寄ったのだ。
『わたくし、信じられませんわっ! では、どなたなら、次期王妃に相応しいと仰るのっ!』
騒ぎ立てたアデラへ冷めた目で見つめ、デーヴィッドから低い声が出された。
『君ではない事は確かだよ、アデラ。 私はね、王妃には私と同じ目線で王国の事を考えてくれる令嬢を求めるている。 隣で着飾って微笑んでいるだけの王妃は要らないんだ』
アデラの瞳が見開かれた後、デーヴィッドを一瞥し、けたたましく会場を出て行った。
今までのアデラからは想像できないくらい荒れ、周囲がドン引きしたくらいだ。 アデラのご乱心にクレイグはショックを受けていたみたいだ。
『……今のは本当にアデラなのか……』
『……っビックリですわね』
解散させた理由は他にもあったようで、デーヴィッド1人に令嬢たちが今まで以上に、群がって来る事が嫌だったに違いないと、クレイグが溜め息を吐いていた。
『兄上はそういう所があるからな。 でも、兄上が求める王妃像は、俺にも分かるよ』
クレイグは位置づけでは2番手で、デーヴィッドは確実に逃げられないからだろうと。 国王夫妻も知らなかったらしく、口を開けて唖然としていた。
自身の婚約式の事を思い出し、深くて重い溜め息がマリーから吐き出された。
中庭の確認を終え、マリーは昼食に来ていた。 準王族になったマリーは、食堂の中二階で王室専用ランチメニューを堪能できずにいた。 いつもの如く、豪華な料理が八角形のテーブルに並べられていた。
準王族のマリーは、毒殺など考慮され、王室専用の食堂で昼食を摂る事を義務づけられている。
「溜め息吐いたら、幸せが逃げていくよ」
弱った心に幼馴染の低い声が届いた。 向かい側にダレルとドロシーが座っている。 本日はマリーが二人を招待した。 デーヴィッドの卒業、クレイグの留学、キャロラインの退学で王室専用の食堂を利用しているのは、マリー1人だけだ。
1人で摂る昼食は寂しく、毎日は無理だが、周1くらいのペースで、二人には一緒に食べてもらっている。 招待しているのだから、勿論、マリーの奢りだ。
アデラの噂を思い出し、マリーは頭を抱えた。 今でも階下の一般生徒が利用する食堂では、アデラの話で持ちきりだ。
「……っだって、アデラ様の噂がもう、学院中に広まってるなんてっ」
「まぁな、スキャンダラスな噂は広まるのが速いからね。 本当にそろそろ、別れるチャンスだよね」
「……っクレイグ様は、浮気なんてしないわっ」
「どうだかね。 クレイグ殿下は乙女心の分からない人だからなぁ」
「……ダレル」
ダレルの隣に座るドロシーが、そっとダレルの腕に手を添えて窘める。 ダレルは幼馴染として、心配してくれている事は分かっている。 まだ、諦めてないんだと、マリーは苦笑を零して、優雅にカトラリーを操る幼馴染を見つめた。
しかし、ふと思う。
「でも、アデラ様の悪評になるんじゃないかしら。 婚約者のいる方と仲睦まじい噂って……」
「侯爵家だからな……その辺は情報操作してそうだけど。 デーヴィッド殿下を諦められなくて、しつこく食い下がって、怒らせたって噂もあるよ」
「……そうなんだ」
(アデラ様があんなに騒ぎ立てるなんて、1部の人を除いて、誰も思わなかったものね……)
放課後には生徒会の仕事が溜まっている。 ダレルとドロシーに手伝ってもらおうかと思っていたが、二人には美化委員の仕事がある。 マリーが抜けた分、二人にも負担がかかっている様だ。
新一年生は、去年の花壇荒らしの事を何処かからか聞きつけていて、早々にサボる生徒が多くいる。 準王族とは言え、新興貴族の伯爵令嬢が生徒会長という事で、舐められている事もあった。
放課後の生徒会室は、人が少ないながらも何とか業務を行っていた。 2年生になってからマリーは溜め息が増えた。 気持ちも一気に老け込んだ。 やっとクレイグと気持ちを通わせたというのに、離れ離れになり、アデラの噂がマリーの心を苛んでいた。 マリーは色々と限界に来ていた。
◇
マリーは、目の前の光景に困惑した表情を浮かべて、テーブルに視線を向けた。 八角形にテーブルには、色とりどりのスイーツが煌めていて、マリーの喉を鳴らした。 向かいには午後の陽射しを浴びた美貌の紳士が煌めきのエフェクトを放っていた。
エフェクトがかかった煌めきの紳士に、マリーの瞳が徐々に訝し気に揺れる。
マリーは今、王宮のバラ園のガゼボで、デーヴィッドと向き合っていた。 デーヴィッドが放つ美貌のエフェクトが眩しすぎる。 マリーは紫紺の瞳を細めた。
「色々と噂は聞いているよ。 愚弟が申し訳ないね、我が義妹よ」
声だけは申し訳なさそうなのだが、デーヴィッドの表情は全くと言っていい程、そうは見えない。
にこやかな笑みを浮かべながら言われても、胡散臭いという思いしかない。 デーヴィッドは挨拶をしたっきり、全く手を付けないマリーに、美味しそうな甘い香りがするスイーツを進めて来る。
隣国から取り寄せた珍しい菓子らしい。 『隣国』という言葉だけでマリーの脳みそが反応する。
「愚弟の事は置いておいて、生徒会は上手くやっている?」
デーヴィッドに痛い所を訊かれ、マリーは押し黙った。 紅茶カップを音を鳴らさずにソーサーへ置くと、表情を変えた。 デーヴィッドの眼差しは優しいが、厳しさも混じっていた。
「マリー」
「はいっ」
マリーは知らず知らずのうちに、居ずまいを正した。
「……っえと……。 副会長に任命された方は侯爵家の方で、中々、噛み合わなくて……っ上手く行っていませんっ……すみません」
マリーを信じて任せてくれたデーヴィッドには、言いたくはなかった。 顔を伏せて落ち込んでいるマリーにデーヴィッドの視線が突き刺さる。
「そうか……侯爵家というと、クローディア・アステリア嬢か」
「はい、そうです」
「うん、彼女は執行委員にも入っていなかったからね。 彼女、何に対してもあまりやる気がないんだよ。 婚約者候補にも入ってはいたんだけどね。 本年度だと、準王族のマリーの次に高位貴族は彼女だから、無理やり生徒副会長に指名したんだけど……それが裏目に出たかもね」
デーヴィッドは失敗したなぁと表情に出した。
「後、美化委員会も人手不足で、3年生は美化委員長のカレン様と、モスフロックス男爵子息のヘンリー様しか居なくて……2年生はダレルとドロシーの2人です」
「ああ、アレックスは卒業したからね。 新一年生は既に幽霊委員になっているのか? 相変わらず人手不足だね」
「……はい、生徒会の執行委員の方たちにお手伝いをお願いしたら、断られてしまって……」
「だろうね。 執行委員は古い家の貴族が多いからね。 美化委員の仕事は嫌がるだろうね」
マリーは、デーヴィッドに何て言ったらいいのか分からなくなってしまった。
「マリー、君はいずれクレイグと結婚をして王子妃になる。 学院のうちはいいよ、学生だからという理由で逃げられるけど。 卒業して社交界へ出るようになった後は逃げるわけには行かない。 王子妃が軽んじられてはいけないんだ。 マリーが上に立って生徒たちを引っ張って行けるのか見られる。 私も、レグも手伝ってあげられない。 自分自身で足場を固めなければいけない。 レグが留学先から帰って来て、レグがいないと何も出来ないなんて、誰にも言われないようにしないと」
デーヴィッドの容赦のない言葉に、マリーの瞳が見開かれる。
(私、クレイグ様と両想いになる事ばっかりを考えてた。 どうすれば好きになってもらえるかとか……。 両想いになれたなら、次のステージに上がらないといけない。 でも、私にできる? 今でも無理そうなのにっ)
「……私、」
「それとも諦める? マリーが降りたら、何処かの令嬢がレグと結婚するけど」
「それは嫌ですっ!」
マリーはデーヴィッドに即答で返した。 にっこりと笑みを浮かべたデーヴィッドは、マリーに『それじゃ、頑張って』と他人事の様に言った。 膝に置いた拳を強く握り締めると、決意した様に顔を上げた。 マリーの表情を見たデーヴィッドは満足気に微笑んだ。
「あ、話を戻すけど、レグの話ね。 僕とマリーが仲睦まじくしてたら、休みの日に速攻で帰って来るんじゃない? あいつ、長期休暇しか帰って来ないって言ってたけど」
「えっ?」
「いい事、思いついたっ! マリー、僕と恋人ごっこをしよう」
「えぇぇ?!」
(な、何言ってるのこの人?! 恋人ごっこって何っ!)
「いや、無理です……」
「そう言わず、騙されたと思って、ね?」
(そんな事したら、私が余計に貴族から反感を買うんですけどっ!!)
断ったにも拘らず、デーヴィッドの中では既に決定事項になっており、次の日からマリーは針の筵になるのだった。 当然だが、生徒会も嫌な雰囲気になっていた。
無表情な美少女から無情にも放たれた言葉が吹き抜けの廊下に響き、マリーは固まった。
「デーヴィッド殿下には指名して頂いたけど、生徒副会長なんてやる気ないわ。 貴方が私の分の仕事をやっておいて頂戴。 これから婚約者と観劇を観に行くのよ」
学院で準王族であるマリーの次に高位貴族であるクローディア・アステリア侯爵令嬢の言葉である。 昨日の放課後、新学年が始まっても生徒会室に現れない生徒副会長から、素気無く3年の教室から追い返された。 クローディアの後ろでは、女子生徒の忍び笑いが拡がっていた。
マリーの目の前で教室の扉がピシャリと閉じる音が廊下に響き、中央に設置されている吹き抜けの螺旋階段まで響いた。
(門前払いを喰らってしまったっ)
デーヴィッドが言うように簡単には行かない様で、前途多難だと、情けない顔を晒して項垂れた。
◇
少し冷たい風が吹き、マリーの頬を撫でる。 枯れ木の枯れ葉が舞う季節、新学年が始まった。
マリーは2年生となり、慣れないながらも、元は真面目な性格なので、何とか生徒会長として周囲の協力もあって立ち回れている。 カラムの騒動以降、素行の悪い生徒たちが大人しくなった事もある。 しかし、元は新興貴族のフランネル家、中々、高位貴族の令嬢子息には認められていない。
デーヴィッドと話した後、改めて引継ぎがあり、『マリーなら大丈夫だよ。 簡単、簡単』とデーヴィッドが軽く宣った事は衝撃だった。 マリーは青ざめて頭を抱え、クレイグは少しだけ呆れた様な表情をしていたが、兄であるデーヴィッドの言葉をしんじている様だ。
そして、マリーを置いて、クレイグはあっさりと留学して行った。 慣例なら仕方ないが、寂しくて胸が痛い。 1週間に1度、近況報告と甘い言葉が綴られたクレイグの手紙がマリーの元へ届く。
手紙の内容は……。
『親愛なるマリーへ。 元気だろうか、俺は元気にやっている。 友人も出来た。 こちらは騎士科の教育が熱く、男女関係なく鍛えられている。 勿論、学業の方にも力を入れられていて、新しい事を学ぶ事も楽しい。 学園生活は楽しいが、マリーがいないのは、とても寂しい。 会いたい、会いたい、会いたい。 マリーのいい香りがする髪に触れたい……』
以上、砂糖を吐く様な甘い言葉や卑猥な言葉が続くので、自重の為、割愛する。
『いや、貴方は誰?』とクレイグとは思えない手紙の内容を思い出すと、背中に悪寒が走ったが、元気にやっている様で自然と表情が緩んだ。
(髪フェチ? いいや、香油フェチね……)
「えぇ、アデラ様がクレイグ殿下の留学先にっ?!」
中庭を歩いていると、東屋で令嬢たちが話し込んでいる内容がマリーの耳に飛び込んで来た。
「何でも、同じ学園の大学院に入学されたらしいですわ。 隣国の大学は女性も多く入学されてますし」
「まぁ、ではクレイグ殿下を追いかけられて?」
「あの方って、デーヴィッド殿下狙いではなかったかしら?」
寝耳に水だ。 クレイグの手紙にはアデラの事は何も書いていなかった。 きっとクレイグの事だ、知らせる事もないと思ったのだろう。
屈んだ視線の先で枯れ葉が風で舞っている。
突然、クレイグの話が聴こえて来たので、無意識に隠れてしまった。 中庭の枯れ葉が多くなってきたようで、そろそろ掃除をしなくてはと思い、中庭の状態を確認しに来たのだ。
(……っ失敗したわっ、放課後に来ればよかったっ)
美化委員は相変わらず、人数が少ない。 美化委員会と相談して、執行委員にも手伝ってもらい、掃除のスケジュールを組まないといけない。 思わず隠れてしまうのは、1年時に美化委員で培った習性である。
「だと思いますわ。 だって、あちらではクレイグ殿下とずっとご一緒に居るとか。 とても仲睦まじい様子らしいですわ」
噂話に花を咲かせている令嬢たちは、隠れているマリーに気づかず、楽し気に囀っている。
「デーヴィッド殿下が婚約者候補の皆さまを解散させましたしね。 アデラ様は王族に入りたくて仕方がないんではないかしら」
「アデラ様、必死過ぎますわっ」
「いい気味ですわ。 アデラ様も、フランネル伯爵令嬢も」
1人の令嬢が馬鹿にした様な笑い声を立てる。 わざとらしく同情した様な声で話す令嬢の甲高い声がマリーに響いた。
「まぁっ、フランネル伯爵令嬢はご存じなのかしら?」
「流石に、知らない訳ないんじゃない? こんなに噂になっているんですもの」
(えぇ、えぇ、こんなに噂になってますものねっ! 全く、存じておりませんわっ! ……っクレイグさまっ……私は聞いてませんよっ!!)
背後で東屋から出て行く令嬢たちの足音が響いた後、扇子の木が折れる音と布が無残にも引きちぎられる音が響いた。
◇
アデラがクレイグの留学先に行った理由は何となく想像できた。
王太子であるデーヴィッドが学院を卒業する前、マリーとクレイグの婚約式で王子の婚約者候補たちを解散させたからだ。 次はデーヴィッドの番だと思っていた貴族たちは、驚愕の表情で呆然としていた。
『弟のめでたい席で、こんな話をするのは申し訳ないのだが……婚約者候補のご令嬢たちと、交友関係を続けていて、私の気持ちがはっきりと決まった。 この場を借りて報告したいと思う。 私は、婚約者候補の中から誰も妃を選ばない。 クレイグもフランネル嬢と婚約した事もあり、解散させようと思う。 ご令嬢方には責任を以って、王家から新たな婚約者候補を紹介する』
会場は悲鳴と驚きの声が響き、泣き出してしまう令嬢、集まった貴族たちは騒然としていた。
『そ、そんなぁ、デーヴィッド殿下っ!』
『嫌ですわっ! 考え直してくださいませっ』
悲嘆にくれる令嬢たちの中で、いつも微笑みを浮かべてデーヴィッドのそばで寄り添っていたアデラが荒れに荒れた。 持っていたワイングラスを床に叩きつけ、デーヴィッドに詰め寄ったのだ。
『わたくし、信じられませんわっ! では、どなたなら、次期王妃に相応しいと仰るのっ!』
騒ぎ立てたアデラへ冷めた目で見つめ、デーヴィッドから低い声が出された。
『君ではない事は確かだよ、アデラ。 私はね、王妃には私と同じ目線で王国の事を考えてくれる令嬢を求めるている。 隣で着飾って微笑んでいるだけの王妃は要らないんだ』
アデラの瞳が見開かれた後、デーヴィッドを一瞥し、けたたましく会場を出て行った。
今までのアデラからは想像できないくらい荒れ、周囲がドン引きしたくらいだ。 アデラのご乱心にクレイグはショックを受けていたみたいだ。
『……今のは本当にアデラなのか……』
『……っビックリですわね』
解散させた理由は他にもあったようで、デーヴィッド1人に令嬢たちが今まで以上に、群がって来る事が嫌だったに違いないと、クレイグが溜め息を吐いていた。
『兄上はそういう所があるからな。 でも、兄上が求める王妃像は、俺にも分かるよ』
クレイグは位置づけでは2番手で、デーヴィッドは確実に逃げられないからだろうと。 国王夫妻も知らなかったらしく、口を開けて唖然としていた。
自身の婚約式の事を思い出し、深くて重い溜め息がマリーから吐き出された。
中庭の確認を終え、マリーは昼食に来ていた。 準王族になったマリーは、食堂の中二階で王室専用ランチメニューを堪能できずにいた。 いつもの如く、豪華な料理が八角形のテーブルに並べられていた。
準王族のマリーは、毒殺など考慮され、王室専用の食堂で昼食を摂る事を義務づけられている。
「溜め息吐いたら、幸せが逃げていくよ」
弱った心に幼馴染の低い声が届いた。 向かい側にダレルとドロシーが座っている。 本日はマリーが二人を招待した。 デーヴィッドの卒業、クレイグの留学、キャロラインの退学で王室専用の食堂を利用しているのは、マリー1人だけだ。
1人で摂る昼食は寂しく、毎日は無理だが、周1くらいのペースで、二人には一緒に食べてもらっている。 招待しているのだから、勿論、マリーの奢りだ。
アデラの噂を思い出し、マリーは頭を抱えた。 今でも階下の一般生徒が利用する食堂では、アデラの話で持ちきりだ。
「……っだって、アデラ様の噂がもう、学院中に広まってるなんてっ」
「まぁな、スキャンダラスな噂は広まるのが速いからね。 本当にそろそろ、別れるチャンスだよね」
「……っクレイグ様は、浮気なんてしないわっ」
「どうだかね。 クレイグ殿下は乙女心の分からない人だからなぁ」
「……ダレル」
ダレルの隣に座るドロシーが、そっとダレルの腕に手を添えて窘める。 ダレルは幼馴染として、心配してくれている事は分かっている。 まだ、諦めてないんだと、マリーは苦笑を零して、優雅にカトラリーを操る幼馴染を見つめた。
しかし、ふと思う。
「でも、アデラ様の悪評になるんじゃないかしら。 婚約者のいる方と仲睦まじい噂って……」
「侯爵家だからな……その辺は情報操作してそうだけど。 デーヴィッド殿下を諦められなくて、しつこく食い下がって、怒らせたって噂もあるよ」
「……そうなんだ」
(アデラ様があんなに騒ぎ立てるなんて、1部の人を除いて、誰も思わなかったものね……)
放課後には生徒会の仕事が溜まっている。 ダレルとドロシーに手伝ってもらおうかと思っていたが、二人には美化委員の仕事がある。 マリーが抜けた分、二人にも負担がかかっている様だ。
新一年生は、去年の花壇荒らしの事を何処かからか聞きつけていて、早々にサボる生徒が多くいる。 準王族とは言え、新興貴族の伯爵令嬢が生徒会長という事で、舐められている事もあった。
放課後の生徒会室は、人が少ないながらも何とか業務を行っていた。 2年生になってからマリーは溜め息が増えた。 気持ちも一気に老け込んだ。 やっとクレイグと気持ちを通わせたというのに、離れ離れになり、アデラの噂がマリーの心を苛んでいた。 マリーは色々と限界に来ていた。
◇
マリーは、目の前の光景に困惑した表情を浮かべて、テーブルに視線を向けた。 八角形にテーブルには、色とりどりのスイーツが煌めていて、マリーの喉を鳴らした。 向かいには午後の陽射しを浴びた美貌の紳士が煌めきのエフェクトを放っていた。
エフェクトがかかった煌めきの紳士に、マリーの瞳が徐々に訝し気に揺れる。
マリーは今、王宮のバラ園のガゼボで、デーヴィッドと向き合っていた。 デーヴィッドが放つ美貌のエフェクトが眩しすぎる。 マリーは紫紺の瞳を細めた。
「色々と噂は聞いているよ。 愚弟が申し訳ないね、我が義妹よ」
声だけは申し訳なさそうなのだが、デーヴィッドの表情は全くと言っていい程、そうは見えない。
にこやかな笑みを浮かべながら言われても、胡散臭いという思いしかない。 デーヴィッドは挨拶をしたっきり、全く手を付けないマリーに、美味しそうな甘い香りがするスイーツを進めて来る。
隣国から取り寄せた珍しい菓子らしい。 『隣国』という言葉だけでマリーの脳みそが反応する。
「愚弟の事は置いておいて、生徒会は上手くやっている?」
デーヴィッドに痛い所を訊かれ、マリーは押し黙った。 紅茶カップを音を鳴らさずにソーサーへ置くと、表情を変えた。 デーヴィッドの眼差しは優しいが、厳しさも混じっていた。
「マリー」
「はいっ」
マリーは知らず知らずのうちに、居ずまいを正した。
「……っえと……。 副会長に任命された方は侯爵家の方で、中々、噛み合わなくて……っ上手く行っていませんっ……すみません」
マリーを信じて任せてくれたデーヴィッドには、言いたくはなかった。 顔を伏せて落ち込んでいるマリーにデーヴィッドの視線が突き刺さる。
「そうか……侯爵家というと、クローディア・アステリア嬢か」
「はい、そうです」
「うん、彼女は執行委員にも入っていなかったからね。 彼女、何に対してもあまりやる気がないんだよ。 婚約者候補にも入ってはいたんだけどね。 本年度だと、準王族のマリーの次に高位貴族は彼女だから、無理やり生徒副会長に指名したんだけど……それが裏目に出たかもね」
デーヴィッドは失敗したなぁと表情に出した。
「後、美化委員会も人手不足で、3年生は美化委員長のカレン様と、モスフロックス男爵子息のヘンリー様しか居なくて……2年生はダレルとドロシーの2人です」
「ああ、アレックスは卒業したからね。 新一年生は既に幽霊委員になっているのか? 相変わらず人手不足だね」
「……はい、生徒会の執行委員の方たちにお手伝いをお願いしたら、断られてしまって……」
「だろうね。 執行委員は古い家の貴族が多いからね。 美化委員の仕事は嫌がるだろうね」
マリーは、デーヴィッドに何て言ったらいいのか分からなくなってしまった。
「マリー、君はいずれクレイグと結婚をして王子妃になる。 学院のうちはいいよ、学生だからという理由で逃げられるけど。 卒業して社交界へ出るようになった後は逃げるわけには行かない。 王子妃が軽んじられてはいけないんだ。 マリーが上に立って生徒たちを引っ張って行けるのか見られる。 私も、レグも手伝ってあげられない。 自分自身で足場を固めなければいけない。 レグが留学先から帰って来て、レグがいないと何も出来ないなんて、誰にも言われないようにしないと」
デーヴィッドの容赦のない言葉に、マリーの瞳が見開かれる。
(私、クレイグ様と両想いになる事ばっかりを考えてた。 どうすれば好きになってもらえるかとか……。 両想いになれたなら、次のステージに上がらないといけない。 でも、私にできる? 今でも無理そうなのにっ)
「……私、」
「それとも諦める? マリーが降りたら、何処かの令嬢がレグと結婚するけど」
「それは嫌ですっ!」
マリーはデーヴィッドに即答で返した。 にっこりと笑みを浮かべたデーヴィッドは、マリーに『それじゃ、頑張って』と他人事の様に言った。 膝に置いた拳を強く握り締めると、決意した様に顔を上げた。 マリーの表情を見たデーヴィッドは満足気に微笑んだ。
「あ、話を戻すけど、レグの話ね。 僕とマリーが仲睦まじくしてたら、休みの日に速攻で帰って来るんじゃない? あいつ、長期休暇しか帰って来ないって言ってたけど」
「えっ?」
「いい事、思いついたっ! マリー、僕と恋人ごっこをしよう」
「えぇぇ?!」
(な、何言ってるのこの人?! 恋人ごっこって何っ!)
「いや、無理です……」
「そう言わず、騙されたと思って、ね?」
(そんな事したら、私が余計に貴族から反感を買うんですけどっ!!)
断ったにも拘らず、デーヴィッドの中では既に決定事項になっており、次の日からマリーは針の筵になるのだった。 当然だが、生徒会も嫌な雰囲気になっていた。
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※以前、短編にて投稿しておりました「安息を求めた婚約破棄」の連載版となります。短編を読んでいない方にもわかるようになっておりますので、ご安心下さい。
結末は短編と違いがございますので、最後まで楽しんで頂ければ幸いです。
※毎日更新、全3部構成 全81話。(2020年3月7日21時完結)
★おまけ投稿中★
※小説家になろう様でも掲載しております。
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※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。
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