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最終話
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隣でいい笑顔を向けて来るリュシアンに半ば呆れ、最初から先回りされていた事に今更ながら気づいた。 いつの間に創造主に願い出たのか知らないが、リュシアンはずっと右往左往するエディを見ていた事になる。 今更だが。
(……リュシアンっ、もの凄い腹黒っ)
エディから深い溜息が吐き出された。 向かいで小さい笑みを浮かべるリュシアンに、瞳を細めて見つめる。 リュシアンの反応をとても楽しそう見つめて来る。
王太子宮、中庭のガゼボで恒例のお茶会をしていた。 ついでに先日の騒動後の報告を聞いていた。
やはりリュシアンに『呪いの木箱』を送りつけていたのはガッドで、色々と他にも余罪があり、彼は今、貴族専用の牢獄へ収容されている。 リラは前世のリラが消えたので、今は現世のリラだけだ。
話してみれば、とてもいい子だった。 前世のリラに乗っ取られていた時の事は覚えている様で、今後の学園生活は大変だろう。 エディはこっそりと、リラを助けようと思っている。
「エディ、ブリエ嬢と友達になろうと思っている?」
「えっ、何で分かったんですかっ?!」
「エディが考えている事くらい分かるよ。 私はずっとエディを見て来たからね」
苦笑を零したエディは、紅茶カップを両手で握りしめる。
「まぁ、彼女は虹色の魔力を保持しているからね。 王家としても懐に入れておきたい人物だからしね。 それに、私の婚約者であるドゥクレ侯爵令嬢がブリエ嬢と一緒に居れば、時間はかかるだろうけど、皆も認めるだろう」
「はい」
優雅に紅茶カップを持ち上げるリュシアンをじっと見つめ、リラが側妃になるのでは、と脳裏で過ぎった。 仲良くする二人を勝手に脳が妄想して、エディの胸に不安が広がっていく。 リュシアンから嫌われようとしていたというのに、勝手なものだと自嘲気味な笑みを浮かべる。
「エディ」
「はい」
「ブリエ嬢が側室に上がる事はないよ」
「えっ……」
エディが何を気にして顔を曇らせたのか、リュシアンは正確に把握していた。 本当にエディの事をよく見ているのだなと、感心した。 自身が気づいていない気持ちも、リュシアンがは知っているのではないかと、頬を引き攣らせる。
「ブリエ嬢は、後々の事を考えて、他の有力貴族と婚姻させられるだろうと思う。 私とエディの子供が虹色の魔力を保持して生まれるかは分からない。 確率を上げる為に私の側妃にした方が良いかもしれないが。 ガッドの事を思うと、後継ぎ問題で争いになるのは面倒だしね」
リュシアンの言っている意味は理解できるが、リラを側妃にした方がいいだろう。 しかし、エディはリュシアンが他の令嬢と仲良くする姿は見たくない。 特に子供を作るなんて、考えたくもなかった。 エディの表情には、しっかりと側妃を娶るのは嫌だと出ていた様だ。
リュシアンが小さく笑う。
「エディの気持ちは手を取るように分かるよ。 あの賭けをしたのは、本当に良かった。 私も側妃は要らないので、打診あったけれど断ったよ。 ブリエ嬢が産む子供に虹色の魔力を保持した者が生まれれば、私とエディの子供と婚姻させればいいと説き伏せた」
エディが考えている事を知られ、真っ赤になって顔を伏せる。
「で、確認するのだけど……。 エディは、まだ私と婚約を解消したい? 私の命を狙っている者を捕まえるまで延長するって話だったけど、あの賭けを再開させるかい?」
賭けとはリュシアンから言われた『私に嫌われて見せよ』から始まった婚約解消を賭けたリュシアンとの賭けだ。 しかし、エディの心はリュシアンには嫌われたくないという思いが湧き上がって来る。
瞳を閉じて自身に問いかける。 顔を上げて真っ直ぐにリュシアンを見つめると、素直に言葉が出来て来た。
「私は、婚約解消したくないですっ。 貴方に嫌われたくないですっ」
「うん、私もエディを嫌いにはなりたくない」
ガゼボに暖かい陽射しが差し、七属性の妖精が草陰に隠れてエディとリュシアンを覗き、ロジェとアンリも二人を生暖かい眼差しで見つめ、ガゼボに暖かい空気が流れていた。
リュシアンがエディと賭けた理由が二人の時くらい、素のエディを見たいからだと知り、最初から婚約解消に応じる事はなかったと聞かされた。 本当に最初からリュシアンに踊らされていた事を知り、早まったかもと後悔しても、もう遅い。
「惚れた弱みって奴ですかっ」
「私の方がエディよりも惚れているけどね」
「……っ」
「さぁ、皆にお披露目しよう」
「はい」
リュシアンに手を取られ、エディは立ち上がる。 色々とあったが、本日は二人の結婚式だ。 式を終えて、大聖堂から出て来たエディとリュシアンを多くの人が出迎えていた。
(……リュシアンっ、もの凄い腹黒っ)
エディから深い溜息が吐き出された。 向かいで小さい笑みを浮かべるリュシアンに、瞳を細めて見つめる。 リュシアンの反応をとても楽しそう見つめて来る。
王太子宮、中庭のガゼボで恒例のお茶会をしていた。 ついでに先日の騒動後の報告を聞いていた。
やはりリュシアンに『呪いの木箱』を送りつけていたのはガッドで、色々と他にも余罪があり、彼は今、貴族専用の牢獄へ収容されている。 リラは前世のリラが消えたので、今は現世のリラだけだ。
話してみれば、とてもいい子だった。 前世のリラに乗っ取られていた時の事は覚えている様で、今後の学園生活は大変だろう。 エディはこっそりと、リラを助けようと思っている。
「エディ、ブリエ嬢と友達になろうと思っている?」
「えっ、何で分かったんですかっ?!」
「エディが考えている事くらい分かるよ。 私はずっとエディを見て来たからね」
苦笑を零したエディは、紅茶カップを両手で握りしめる。
「まぁ、彼女は虹色の魔力を保持しているからね。 王家としても懐に入れておきたい人物だからしね。 それに、私の婚約者であるドゥクレ侯爵令嬢がブリエ嬢と一緒に居れば、時間はかかるだろうけど、皆も認めるだろう」
「はい」
優雅に紅茶カップを持ち上げるリュシアンをじっと見つめ、リラが側妃になるのでは、と脳裏で過ぎった。 仲良くする二人を勝手に脳が妄想して、エディの胸に不安が広がっていく。 リュシアンから嫌われようとしていたというのに、勝手なものだと自嘲気味な笑みを浮かべる。
「エディ」
「はい」
「ブリエ嬢が側室に上がる事はないよ」
「えっ……」
エディが何を気にして顔を曇らせたのか、リュシアンは正確に把握していた。 本当にエディの事をよく見ているのだなと、感心した。 自身が気づいていない気持ちも、リュシアンがは知っているのではないかと、頬を引き攣らせる。
「ブリエ嬢は、後々の事を考えて、他の有力貴族と婚姻させられるだろうと思う。 私とエディの子供が虹色の魔力を保持して生まれるかは分からない。 確率を上げる為に私の側妃にした方が良いかもしれないが。 ガッドの事を思うと、後継ぎ問題で争いになるのは面倒だしね」
リュシアンの言っている意味は理解できるが、リラを側妃にした方がいいだろう。 しかし、エディはリュシアンが他の令嬢と仲良くする姿は見たくない。 特に子供を作るなんて、考えたくもなかった。 エディの表情には、しっかりと側妃を娶るのは嫌だと出ていた様だ。
リュシアンが小さく笑う。
「エディの気持ちは手を取るように分かるよ。 あの賭けをしたのは、本当に良かった。 私も側妃は要らないので、打診あったけれど断ったよ。 ブリエ嬢が産む子供に虹色の魔力を保持した者が生まれれば、私とエディの子供と婚姻させればいいと説き伏せた」
エディが考えている事を知られ、真っ赤になって顔を伏せる。
「で、確認するのだけど……。 エディは、まだ私と婚約を解消したい? 私の命を狙っている者を捕まえるまで延長するって話だったけど、あの賭けを再開させるかい?」
賭けとはリュシアンから言われた『私に嫌われて見せよ』から始まった婚約解消を賭けたリュシアンとの賭けだ。 しかし、エディの心はリュシアンには嫌われたくないという思いが湧き上がって来る。
瞳を閉じて自身に問いかける。 顔を上げて真っ直ぐにリュシアンを見つめると、素直に言葉が出来て来た。
「私は、婚約解消したくないですっ。 貴方に嫌われたくないですっ」
「うん、私もエディを嫌いにはなりたくない」
ガゼボに暖かい陽射しが差し、七属性の妖精が草陰に隠れてエディとリュシアンを覗き、ロジェとアンリも二人を生暖かい眼差しで見つめ、ガゼボに暖かい空気が流れていた。
リュシアンがエディと賭けた理由が二人の時くらい、素のエディを見たいからだと知り、最初から婚約解消に応じる事はなかったと聞かされた。 本当に最初からリュシアンに踊らされていた事を知り、早まったかもと後悔しても、もう遅い。
「惚れた弱みって奴ですかっ」
「私の方がエディよりも惚れているけどね」
「……っ」
「さぁ、皆にお披露目しよう」
「はい」
リュシアンに手を取られ、エディは立ち上がる。 色々とあったが、本日は二人の結婚式だ。 式を終えて、大聖堂から出て来たエディとリュシアンを多くの人が出迎えていた。
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