異世界転移したら……。~色々あって、エルフに転生してしまった~

伊織愁

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第三十七話 『ミッションインポッシブルだなっ……』

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 優斗の実家であるエーリスのツリーハウスの食堂。

 捕えた襲撃者たちと地下牢で話した後、夕食を済ませて今後の対策の為に、話し合いは続いていた。 

 リュディとリューは住民の治療と復旧作業を終えて、今はユスティティアと他の集落がどうなっているのか調べている。

 (襲撃者の話では、次々と襲ったって言ってたからなっ……ディノとか大丈夫だろうか……)

 ブートキャンプで一緒になった仲間たちが思い浮かび、優斗は彼らの無事を祈った。

 悪魔を取り込んだエルフは5人と仮定して、黒い心蔵が視えない相手を倒す方法を考え出さないといけない。 首都ユスティティアが落とされているとして、カラトスたちを倒せないと、ユスティティアの奪還はない。

 大きな溜め息が、向かい側の席で落ちる。

 視線を向けると、瑠衣が嫌そうに顔を歪めて口を吐いた。

 「クリストフさんが帰ってくるの待つか?」

 優斗たちの白銀の瞳が細まる。 取り敢えず、瑠衣には返事をしておく。

 「う~ん、今、ユスティティアがどうなっているのか分からないからなぁ」

 (そんなに、クリストフさんの名前、呼びたくないんだなっ……)

 瑠衣の隣で、瑠衣の様子に苦笑を零した仁奈が的確な意見を述べる。
 
 「でもさぁ、クリストフさんたちが戻って来ても……今のままじゃ絶対に返り討ちに遭うよね。 華も取られるよ」
 「いや、華はここにいっ」

 『ギランっ!』という擬音が聞こえる。

 隣で座る華から、鋭い睨みが突き刺さり、優斗の言葉が詰まる。

 「いや、でも、華……」

 (本当に気が強くなったなぁ……)

 優斗の眉尻が困った表情で下がる。

 「私の家の事なのに、どうしてのけ者にするのっ! 私も次期里長なんだから、ユスティティアに行く時は勿論、私も行きますっ!!」

 顔を真っ赤にして、全身から煙を吹き出して華は怒っていた。 置いて行けば、隠れて後を追って着いて来るだろう。 

 優斗は小さく息を吐き出した。

 『仕方ないよ。 それに華がいないと、誰が浄化するのさ』

 (あぁぁ、そうか……。 浄化があったな……)

 暫く項垂れたまま考え込んでいた優斗だったが、華をエーリスに置いて行く事は無理そうだと、観念した。 優斗が渋々了承すると、華は満面の笑みを浮かべる。

 「じゃ、華ちゃんも行くとして、カラトスたちをどうやって倒すか考えようぜ」

 瑠衣は2人の様子に苦笑を零しながら、今後の対策を立てる為に先を促す。

 「ああ、主さまは1人づつ、やった方が良いって言ってたんだ。 だから、もし、悪魔に負けて魔王候補になったとしたら、カラトスたちはベネディクト以上だと思った方がいいな」

 瑠衣と仁奈、華、フィンとフィルも神妙な表情で頷いた。

 (それにしても何で黒い心臓は視えないんだ? 魔力感知も効かないし……あっ! それかっ!)

 優斗が何か閃いた様な表情をして顔を上げたので、テーブルの真ん中で座る優斗に、瑠衣たちの視線が集中する。 

 目の前に座る瑠衣が優斗に問いかける。

 「何か、閃いたのか?」
 「ああ、黒い心臓が視えないのは、あの黒装束の所為かも知れないと思ったんだ。 黒装束には、魔力感知できない様に防御魔法が付与されているのだとしたら?……悪魔の力が外へ出ない様になってるのかもと……」
 「……そうか、悪魔の気配も感じさせないんだったな。 だったら悪魔の力その物の心臓なんて見える訳ないか」
 「うん、そうなんだ。 だからカラトスたちがあの黒装束を着ている限り、カラトスたちの位置も分からないし、黒い心臓も視えないんだと思う」

 華と仁奈は口を開けたまま固まり、フィルとフィンは感心した様な表情をしていた。 瑠衣は難しい顔をして何かを考え込んでいる。

 「……っ付与か。 あ、じゃ、華ちゃんに魔法を無効化する魔道具を作ってもらったらどうだ?」
 
 良い事を思いついた、と瑠衣は指を鳴らした。 

 瑠衣の意見に皆の視線が華へ集中する。

 注目された華は、瑠衣の話を聞くなり既に脳内で妄想しているのか、白銀の瞳を爛々と煌めかせていた。

 優斗達の声は聞こえていないのか、何かを呟いている。

 「やっぱりアレは必須だよね」
 「「「「「……っ」」」」」

 優斗たちの脳裏に過去(前世)で、華が作った魔道具や防具を思い出し、眉尻を下げて困惑した表情を浮かべる。 

 皆が思っている事は同じだ。 きっと優斗の防具には竜が巻き付いている事だろうと。

 どうしてか分からないが、華は優斗に竜を巻き付かせたい願望を持っている。 

 恐る恐る優斗は華に懇願する。

 「あの……っ華。 程ほどにね」

 (まぁ、竜が巻き付いてたら、速攻で拒否だけどっ……)

 食堂の扉が開かれて小さく軋む音が鳴り、振り返ると、扉の向こうからクオンの顔が覗いていた。

 「クオン、起きたのか。 ごめん、うるさかったな」
 「ううん」

 寝ていたクオンがぐずって食堂へ降りて来たが、眠そうに瞼を擦っていた。

 瑠衣は立ち上がると、優斗を風呂へ誘った。 カラトスたちの対策も大方、話し終えていたので、交代でお風呂へ入る事にした。

 「そうだな、クオンも一緒に入るか?」
 「うんっ! 入るっ!!」

 久しぶりの優斗と一緒に風呂へ誘われ、目を覚ましたクオンは喜んでついて来た。 

 食堂の片付けがあるから後でいいと言うので、華たち女性陣たちとは、食道で別れた。

 ◇

 ツリーハウスのログハウスが、左右交互に極太の枝に建てられている。 

 木製の板と木の枝の柵で作られた廊下と階段をクオンとフィル、瑠衣と優斗の4人は最上階の5段目のログハウスまで上がる。

 5段目のログハウスの屋上に、露天風呂が設置されており、屋上へ続く木製の階段を上がる。 脱衣場の扉を開けると、速攻で脱ぎ散らかして服を脱いだクオンは、露天風呂へ続くガラスの両扉を開いた。 

 優斗は慌てて服を脱いで後を追った。

 「こらっ! クオン、先に身体を洗わないとっ」

 エーリスのツリーハウスの街並みを一望できる露天風呂、クオンの身体を洗ってあげながら、満天の星空を見上げる。 

 相変わらず心地が良いな、と内心で呟いて実家に帰って来たんだなと、実感した。

 クオンを入れて露天風呂で男子会をしていたら、10歳の子の口から、思わぬ言葉が飛び出てくる。

 「ねぇねぇ、ユウト。 ハナちゃんがユウトの新しいお嫁さん? ぼくのお姉ちゃんになるの?」

 (んっ?……新しい?)

 「うん、そうだよ。 クオンも仲良くしてくれるか?」
 「うん、仲よくするっ! まえのお姉ちゃんよりすきっ」

 クオンの背中を洗ってあげながら、クオンの言うお姉ちゃんが誰なのか分からず、優斗は首を傾げた。 湯船に浸かっている瑠衣とフィルも、疑問符を飛ばしている。
 
 「クオン……前のお姉ちゃんって?」
 「うん、ちょっと、えらそうなお姉ちゃん。 ちょっとこわかった」

 クオンもタオルで自身の胸を洗いながら、俯き加減で唇を尖らせている。 

 まだ、クオンが言っているお姉ちゃんが誰なのか分からなく、優斗は眉を歪めた。
 
 「……偉そうなお姉ちゃん?……クオンがそんな事言うなんて、珍しいな」
 
 (誰とも仲良くなれる子なんだけど……)
 
 「あの子じゃないか? ほら、何ていったっけ? エカ……何とか」

 岩風呂の縁に腕を組んで顔を乗せ、瑠衣が思い出すように言った。 優斗はこちらでの幼馴染の顔をやっと思い出した。

 クオンの身体に付いた石鹸の泡を湯で落としながら、優斗は慌てて弁明した。
 
 「ああ、エカテリーニかっ!! ……クオン、俺とエカテリーニは何でもないよ。 ただの友達だ」
 「え~、そうなんだ。 よかったぁ、ただの友だちで。 あのお姉ちゃんがユウトのお嫁さんになるのいやだったんだ」
 「そうか……華はいいのか?」
 「うん、ハナちゃんならいいよ。 ぼくもハナちゃん、かわいいと思う」

 洗い終わったクオンを湯船に浸からせ、優斗も湯船に浸かる。

 湯面が大きく揺れ、波が起きる。

 隣でフィルと遊んでいるクオンに、いつの間に華の事を『ハナちゃん』と呼ぶようになったのか訊いた。 瑠衣が『華ちゃん』と呼んでいるので、自分も『ハナちゃん』と呼んでいいだろうと思った様だ。

 リュディも『ハナちゃん』と呼んでいるが、母親を真似たのではないと言う。

 「……」

 (……それってあれか? 俺がクオンにもヤキモチを焼くとか思ってるのかっ……流石にそれはないだろ……)

 しかし、10歳の今はいいが、クオンが成人する15歳になって華を呼び捨てにしたら、許さないかも知れない。

 ちょっとだけ、心が狭いなと思う優斗だった。

 『子供って意外と良く見てるよね』

 監視スキルの声が頭の中で響き、瑠衣とフィンはクオンの話を聞くなり、2人揃って吹き出した。

 優斗は瞳を細め、笑っている瑠衣たちを眺める。 隣に居るクオンを見やると、悪戯が成功した様な顔をしていた。 

 優斗がいなくても、エーリスは大丈夫そうだなと思うのだった。

 露天風呂の後、クオンを寝かせつけ、優斗たちも寝支度を始めた頃、クリストフが数十人の戦士隊たちを連れて戻って来た。 

 戦士隊の人数が多くて、瞑想部屋と全ての客室を使い、クオンの部屋も明け渡された。

 当初は優斗の部屋は華と2人で使う予定だったが、瑠衣と仁奈、クオンも優斗の部屋で寝る事になった。

 優斗のベッドはダブルベッドサイズなので、女子2人と子供1人なら並んで寝られるだろう。 話し合いの末、華と仁奈がクオンを挟んでベッドで寝る事になった。

 ベッドの足元には、作り付けのクローゼットがあるので、ベッドの横へ何とか布団を2組並べて敷いた。

 『おやすみ』の挨拶を交わすと、隣の布団で寝る瑠衣、ベッドで眠る華たちから、直ぐに寝息が聞こえてきた。 

 監視スキルの声が頭の中で響く。

 『ハナは寝たよ。 ユウトも早く寝なね。 後、残念だったね』

 (うるさいよっ! 一言、多いんだよっ)

 憤りながらも、監視スキルの報告にお礼を言って布団に潜り込み、優斗も眠りに落ちた。

 眠っている華の周囲で漂っている優斗の魔力が優斗の姿を形取っていく。 

 『よいっしょ』と立ち上がり、監視スキルが天井を見上げる。 一瞬でツリーハウスのてっぺんに移動し、足元にツリーハウスの街並みが見える。

 『絶景かな、絶景かな、と。 さて、お仕事を始めますか』

 監視スキルの義務である24時間の護衛と監視を始める。 少し考え、話し合いでの事を思い出した。 防御の無効化が出来るなら、監視スキルの感知にも反応するかもしれないと、首都ユスティティアがある方向を睨みつけた。
 
 ◇
 
 優斗たちがティオスたちの対策をしている頃、パレストラはティオスから尋問を受けていた。

 「……そう、エレクトラが結界魔法を使ったの?」
 「はい、エレクトラアハナ様が行使された結界は、とても強固で傷1つ付けられませんでした」

 パレストラは跪きながら、自身が経験した事を報告した。

 「へ~、何の力だろう? 前はそんな力なかったはずだけどな。 もしかして……彼と出会ってから? いや、世界樹に呼ばれた時かな」
 「どうされますか?」

 パレストラがティオスの顔色を見ながら言葉を選んで紡ぐ。 ティオスがパレストラに視線をやったが、直ぐに窓の外へ視線を向ける。

 「後、結界から気絶を起こす霧の様なものが噴射されました。 私はそのスキルで気絶させられましたので、エレクトラアハナ様を連れ帰るという任務も遂行できませんでした。 申し訳ございません」
 「……気絶を起こす霧ね。 本当に、以前のエレクトラじゃないみたいだ」

 (エレクトラ、やっぱり君が欲しいよ)

 ティオスのエレクトラへの欲は、純粋な物ではなくなってしまっていたが、まだ胸の奥底ではエレクトラを想う感情があった。 

 白銀の瞳を鋭く光らせると、ティオスは指示を出した。

 「エーリスへ通達を出せ。 大人しくエレクトラを差し出せとな」
 「はっ! 仰せのままに」

 パレストラは執務室を出ると、大きく息を吐き出した。 扉の前で待っていたマリウスと合流する。

 「パレストラ」
 「マリウス、待っていたのか。 任務を失敗した事は怒られなかったよ。 でも、エレクトラアハナ様の詳しい話を質問された。 後、ティオス様からの指示だ」

 パレストラはマリウスに簡単にティオスとの話し合いを説明した。 マリウスはティオスの指示に無言で頷いた。

 「私がまたエーリスへ行って来る」
 「……俺も行こう」
 「私、1人でも大丈夫だが」

 パレストラは不機嫌そうにマリウスを見つめた。 しかし、マリウスも引かない。

 「お前を一瞬で気絶させたスキルが気になる。 もう一度だけ見てみたい」
 「……分かった。 私もそれは気になるからな」

 パレストラは心底迷惑そうにしていたが、マリウスの同行を許した。

 ◇

 『ワァオっ!』

 監視スキルの声と共に、優斗の脳内のモニター画面に華の秘蔵映像が流れてきた。

 監視スキルの声が何重にも重なり、脳内がピンク色に侵される。 監視スキルの声に、優斗は飛び起きた。

 (……っお前~!! 頼むから、止めてくれっ)

 顔を両手で覆い、項垂れる優斗。 

 何食わぬ感じで、脳内で監視スキルのいつもの朝の声が響く。

 『おはようございます。 就寝中の危険はありませんでした。 【ハナを守る】スキルを開始します。 【透視】【傍聴】スキルを発動します。 今朝の最新の映像を流しますか?』

 (はい、流しませんっ!! 華がここに居る間は、透視と傍聴も切っていてくれっ)

 『了解しました。 えへっ! びっくりした? 久しぶりだったから、良かったでしょ?』

 (全く、良くないけれどっ! いい加減に飽きろよっ)

 『今朝のは、前に主さまが言ってたやつなんだ。 僕は『ワァオっ!』が楽しめたかな!』

 監視スキルの楽しそうな声が頭の中で響き、げっそりした優斗が呟く。

 「……っ『ワァオっ!』って何だよ」

 心の中で呟いたと思っていたら、声に出ていたらしく、隣で寝ていたはずの瑠衣が起きていて、優斗の呟きを聞きつけて噴き出した。

 「優斗の方こそ、何だよ『ワァオっ!』って」
 「んげっ! 瑠衣……起きてたのかっ」
 「んげっ!って、酷いな。 朝の第一声が『ワァオっ!』って何だよ。 もしかしなくても、あの 『ワァオっ!』か?!」

 優斗は真っ赤になって舌打ちをした。

 瑠衣はツボにハマったのか、腹を抱えて笑い出した。 知られたくない奴に知られたと、優斗は苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべた。 

 瑠衣の笑いが治まるまでしばらくかかった。

 朝食の後、華は早速、魔道具の作成にかかっている。 作業場に、リュディが使用している調合作業する部屋を借りて閉じこもっている。 

 華が魔道具を完成させるまで、もう少しかかるだろう。

 因みに捕らえている襲撃者の黒装束を剥ぎ取り、他にどんな付与がされているのか調べる為、華が瞳を煌めかせて作業場まで持って行った。 襲撃者たちにはエーリスの住人の余っている服を与えた。

 作業が終わるまで、優斗と瑠衣、仁奈の3人は戦士隊の訓練に参加した。 

 初めての戦士隊の訓練だ。

 「しかし、今って訓練なんてしていていいのか? 他にやる事あるんじゃないか……」

 隊長を務めているクリストフに瑠衣は呆れた様に苦言を呈した。 クリストフは爽やかな笑みを浮かべて、瑠衣に請け負った。

 「大丈夫だ。 俺たちが今やる事は、他の無事な集落と連携する事だ。 全員で行っても仕方がないだろう? ローテーションを組んで、任務に就いてるからいいんだよ。 残っている者は、いつでも戦えるように鍛えて、準備しておくんだ」
 「そうかよ」
 「……っ」

 相変わらず、相容れない相手なのか、瑠衣はクリストフに対する態度が冷たい。

 優斗たちが訓練に参加している間に、華の防具と魔道具が出来上がった。

 『さぁ、お楽しみのハナの防具と魔道具のお披露目会だよ!』

 監視スキルの声が一段と楽しそうに頭の中で響く。 

 ツリーハウスの食堂でお披露目された防具と魔道具は、華らしい防具だった。 

 華はアサシン風の隊服が気に入っている様で、隊服がベースになっている。

 3体とも、南の里アウステルのカラー、深緑の布を使っている。

 優斗たちの目の前に、3体の実物大の立体映像が華の魔法陣で発動され、久しぶりの対面である。

 「……っ、やっぱり慣れないな……自分にそっくりすぎるっ」
 「ああ、流石は華ちゃん。 ブレないなっ」
 「……本当にっ、何に情熱掛けてんのよっ」

 先ずは仁奈から、フード付きの前合わせの上衣が膝丈で、下衣はショートパンツに網タイツとロングブーツ、大人っぽく仕上がっている。 腰のベルトには、仁奈のダークエルフの力を使う時、肌に現れる紋様が刺繍されていた。

 瑠衣の防具は、フード付きの細めの前合わせの上衣で膝が隠れる丈と、細めのパンツにロングブーツ。 ベルトは太めで胸当てを付け、クールに仕上がっている。

 そして、優斗の防具はフード付きの前合わせの上衣が膝上丈、深緑のパンツにロングブーツ、ベルトには、黒い龍のバックルが付いていた。 バックルだけならいいかと思っていたが、やっぱり裏地に昇り龍が刺繍されていた。

 「……っ」
 「それぐらい大丈夫だろ」
 「分かってるよ……ただ、裏地に昇り龍っていうのがっ……」
 「……厳ついよなっ」

 優斗たちの防具には、魔力感知防御など、他にも色々と便利な付与がされている。 華のローブにも改めて、優斗たちと同じ付与をしている。

 魔法無効化の魔道具は、手袋になっていた。 相手にバレない様、発動する時に知られてはいけない。

 手に魔力を集めれば、魔法付与の無効化が発動されるようになっている。 

 勿論、優斗たちの防具には影響が無い様にしている。 

 難点は相手に触れないといけない事だ。

 ただ、魔道具で発動するだけだと、自分たちの防具にも影響が出て来る。 優斗たちは、無理難題の任務に頬を引き攣らせた。
 
 「ミッションインポッシブルだなっ……」
 「瑠衣っ……それでもやるしかないよっ」 
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