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1章妖精の愛し子

9.

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「僕も居るからね、リリーフィア」
リリーフィアの前に立ちはだかりながらアロイが言う。
ティファニーはアロイのことを目にした途端、態度をころっと変えた。

「あら? なにこの妖精… 小さいのにイケメンだわ! しかも可愛い系とか…」
ティファニーはぶつぶつと何かを言いながらアロイに近づくと、ひょいっと抱き上げ頬擦りをした。
妖精は不思議なことに、系統は違えど必ず女は可愛い美人に、男はイケメンになると決まっている。

「ふ、ふん。 今回はこの妖精に免じて許してあげるけど次はないと思うことね」
そして今回、アロイはなんとティファニーの好きなタイプの的を得たのだ。
ティファニーはそのままアロイを連れてリリーフィアの部屋を去ろうとする。

だが大切な妖精の姫であるリリーフィアの敵にそんなことをされても嬉しくないアロイは、魔法を使ってティファニーの腕から抜け出した。
「んまぁ、なんで逃げるんですの?」
ティファニーはいかにも不思議そうにしてアロイをもう一度抱き上げようとする。

「僕はあなたの側にいたくありません。 ティファニー、知っていますか?」
アロイは出来るだけティファニーの神経を逆撫でしないようにしながら続ける。
「藍色は黒に近い色です。 なので藍の羽を持つ妖精は黒の羽を持つ妖精程ではありませんが戦うことが出来ます。 そして…」
アロイはそこで言葉を区切ると、目をキランッと光らせた。

「そして、藍の妖精は逃げ隠れすることに長けています。 よって、必然的に僕があなたに捕まることはない。 尚且つ、この力をフルで使えばあなたを殺すことも簡単でしょう。 僕はリリーフィアやその仲間に危害を加えなければあなたのことをどうでも良いと思っています。 どうします? それでも僕を、いや、妖精を自分のものにしようと思いますか?」

時と場合によってはティファニーを殺すと暗に伝えながらアロイは言い切った。
「ありょい? なんにも聞こえにゃいよ?」
途中から耳を塞がれていたリリーフィアは、アロイの手を避けようとしながらそう言う。
「もうちょっと待ってね」
一瞬手を避けてアロイは言うと、もう一度ティファニーを鋭い目で見た。
「わ、分かったわよ。 要はリリーフィアに手を出さなければ良いんでしょ?」
「物わかりが良くて何よりです」
アロイはにっこりと笑う。

だがその笑みはどこか黒く、アロイの言葉が本気だということを窺わせた。
「そ、それじゃあ私はもう行くわ。 妖精が守ってくれるからって良い気にならないことね、リリーフィア」
ティファニーはありきたりな捨て台詞を吐くと、部屋から出ていった。
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