1 / 5
1話
しおりを挟む
人間は死ぬ気でやれば何でも出来るらしい。だから、諦めてはいけない。
最後の最後まで希望を捨てず、抗ってこそ道は開かれる。だから、諦めてはいけない。
息をすることを恐れてはならない。
思考をすることを止めてはならない。
死を受け入れてはならない。
「クソっ。んなことは分かってる。でも、どうしろって言うんだよ。」
蝉が嘲笑う夏の某日、俺は誰もいない部屋で座り込み、涙を浮かべ、声を震わせた。限界はとっくに過ぎていたのだ。
親元を離れ、大学に通い、それなりに楽しく生活していた頃とは一変。ここ数日で町は歩く死体どもの巣窟と成り果てた。
始まりは、3日前の晩。俺は腹を空かせてコンビニまでパンを買いに行った。
いつもと何ら変わらない町に不信を抱くことなどあるはずもなく、鼻歌なんて歌っていたことを覚えている。
パンを買うところまでは良かった。しかし、俺がコンビニを後にしようとした時、奴らが入ってきたのだ。2人だった。
最初は酔っ払ったおじさん達かと思った。迷惑な客もいたものだと心の内で軽蔑し、その場を去ろうとした。
が、それは叶わない。今考えれば、よくあの状況で生きていたと感心さえする。
奴らは俺めがけて突進し、掴みかかろうと腐敗した手を伸ばしてきたのだ。
あそこで、あの手に掴まれていたら十中八九、お陀仏だったに違いない。人ならざる怪力になす術もなく組み敷かれ、食い殺されデットエンド。肉を千切られるという激痛を伴いながら、苦しみ、死んでいったことだろう。想像しただけでおぞましい。
(……いや、あの時死んでいた方が遥かに楽だったかもしれない。)
運が良いのか、悪いのか、俺は迫り来る手を払いのけてしまった。そして、絶大な恐怖に煽られ逃亡。死に物狂いで家に駆け込んだ。
それから3日、外に出ていない。テレビをつければゾンビパンデミックを報道していたが、そのテレビも、もう映らない。電線がやられたらしい。
ヤバい。それが俺の本心だった。
自室であるアパートの2階から外を恐る恐る見れば、我が物顔で道を踏み締める死体の数々。
冷蔵庫は何も入っておらず、ただの役に立たない箱へ成り下がった。
(終わったな。どう考えても詰んでる。)
食糧がないのなら、補給しにいけば良いではないか。
そう考え、行動した奴は全員死んだ。事態を甘く捉え、舐め腐った結果、死を招いた。
全員とは言ったが、生き残った人間も中にはいるだろう。無事、食糧にありつき生活している奴は一定数存在すると思う。
だが、そんなの一握りだ。俺を含め、凡人が外に出れば確実に息を引き取ることになる。
それでも、そろそろ決断せねばならない。たとえ、外が地獄でも行かねばならない。
「分かっているんだ。このままではジリ貧だってことくらい。」
涙を拭い、俺は自分に喝を入れた。頬を叩き、決意をあらわにする。
力強く立ち上がり、台所から包丁を取り出してリュックを背負うと、玄関まで移動。俺はようやく地獄へと続くドアの前へ立ちはだかった。
最後の最後まで希望を捨てず、抗ってこそ道は開かれる。だから、諦めてはいけない。
息をすることを恐れてはならない。
思考をすることを止めてはならない。
死を受け入れてはならない。
「クソっ。んなことは分かってる。でも、どうしろって言うんだよ。」
蝉が嘲笑う夏の某日、俺は誰もいない部屋で座り込み、涙を浮かべ、声を震わせた。限界はとっくに過ぎていたのだ。
親元を離れ、大学に通い、それなりに楽しく生活していた頃とは一変。ここ数日で町は歩く死体どもの巣窟と成り果てた。
始まりは、3日前の晩。俺は腹を空かせてコンビニまでパンを買いに行った。
いつもと何ら変わらない町に不信を抱くことなどあるはずもなく、鼻歌なんて歌っていたことを覚えている。
パンを買うところまでは良かった。しかし、俺がコンビニを後にしようとした時、奴らが入ってきたのだ。2人だった。
最初は酔っ払ったおじさん達かと思った。迷惑な客もいたものだと心の内で軽蔑し、その場を去ろうとした。
が、それは叶わない。今考えれば、よくあの状況で生きていたと感心さえする。
奴らは俺めがけて突進し、掴みかかろうと腐敗した手を伸ばしてきたのだ。
あそこで、あの手に掴まれていたら十中八九、お陀仏だったに違いない。人ならざる怪力になす術もなく組み敷かれ、食い殺されデットエンド。肉を千切られるという激痛を伴いながら、苦しみ、死んでいったことだろう。想像しただけでおぞましい。
(……いや、あの時死んでいた方が遥かに楽だったかもしれない。)
運が良いのか、悪いのか、俺は迫り来る手を払いのけてしまった。そして、絶大な恐怖に煽られ逃亡。死に物狂いで家に駆け込んだ。
それから3日、外に出ていない。テレビをつければゾンビパンデミックを報道していたが、そのテレビも、もう映らない。電線がやられたらしい。
ヤバい。それが俺の本心だった。
自室であるアパートの2階から外を恐る恐る見れば、我が物顔で道を踏み締める死体の数々。
冷蔵庫は何も入っておらず、ただの役に立たない箱へ成り下がった。
(終わったな。どう考えても詰んでる。)
食糧がないのなら、補給しにいけば良いではないか。
そう考え、行動した奴は全員死んだ。事態を甘く捉え、舐め腐った結果、死を招いた。
全員とは言ったが、生き残った人間も中にはいるだろう。無事、食糧にありつき生活している奴は一定数存在すると思う。
だが、そんなの一握りだ。俺を含め、凡人が外に出れば確実に息を引き取ることになる。
それでも、そろそろ決断せねばならない。たとえ、外が地獄でも行かねばならない。
「分かっているんだ。このままではジリ貧だってことくらい。」
涙を拭い、俺は自分に喝を入れた。頬を叩き、決意をあらわにする。
力強く立ち上がり、台所から包丁を取り出してリュックを背負うと、玄関まで移動。俺はようやく地獄へと続くドアの前へ立ちはだかった。
0
あなたにおすすめの小説
終焉列島:ゾンビに沈む国
ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。
最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。
会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる