14 / 68
【第三話 みずほ先輩と情熱的なラブレター】
【3-3】
しおりを挟む
「『10』と『6』の数字がついたふたつの丸だけどね、文中には『飛び散る汗はまるで宝石のよう』って書かれているわ。キラキラマークが付いているし、あたかも宝石を連想させようとしているじゃない」
「なるほど。――あっ、もしかして数字は『誕生石の月』を表しているってことすか」
「さすがね、かつき君。でももしそうなら、どの宝石になるのかわかるかな?」
「待ってください、すぐ調べます!」
みずほ先輩と俺はふたりで顔を寄せてスマホの画面をのぞき込む。検索したところ、十月がオパール、それに六月がパールだった。
「って、全然意味がわからないっすよ」
「ああ、それなんだけどね、誕生石には和名があるのよ。ちなみにオパールは『蛋白石』、パールは『真珠』だよね」
「蛋白石、真珠ですか――あっ!」
聞いて正直、驚いた。
そう、俺はその名前に心当たりがあったのだ。
★
『白石真』――それは猪俣と接点のある人物だった。
ショートボブの髪型で背は高いほう。中学生の頃は男子に混ざってサッカーをやっていたという快活な女子。サッカーが心底好きなのか、今は男子サッカー部のマネージャーをやっている。
猪俣とは中学時代からのクラスメイトで、一緒にいるところをたびたび見かけた。
知る人によれば、「私と猛司は戦友だから!」が彼女の口癖らしい。
宝石が彼女の名前を示していることは確かだと思う。だけどどうも納得できない。
「その近しい関係性から察するに、あのラブレターを白石が書いたと思えないっす」
「確かに本人かどうか、確認してみる必要がありそうね」
みずほ先輩は本棚に足を運び、ファイルを一冊取り出した。
それは新入生が入学時に記載した自己紹介のコピーをファイリングしたものだ。
ページをめくり、途中で手を止める。そこには白石の名前と自己紹介文があった。
「見比べると、筆跡はきれいに一致していると思わない?」
「確かにこれは間違いないとしか……」
ともに簡単に真似できない、特徴的な丸文字だ。本人だと納得せざるを得ない。
けれど白石が親しい猪俣に対して遠回しなラブレターを書いたとすれば、その理由は何だろうか。
ふと、猪俣の『みずほたん』という呼び方を思い出した。
それから、みずほ先輩に対する猪俣の馴れ馴れしい態度。
そして、もらったラブレターをぞんざいに扱うという違和感。
さらに、ラブレターを書いたのは親しい女子だという事実。
情報は俺の中で輪を形成してゆく。
そしてひとつの仮説にたどり着いた。まさかと思い、みずほ先輩に尋ねる。
「もしかして猪俣って、みずほ先輩に気があるんじゃないですか? それが謎の動機だと、俺は思ったんです」
みずほ先輩はきょとんとしているが、俺は自分の仮説を説明する。
「猪俣はみずほ先輩に近づくための作戦を考えた。生徒会がお悩み相談をしていると知り、白石と結託して謎を込めたラブレターを書き上げてもらう。そして謎解きを口実にして、みずほ先輩を相談窓口として指名した」
そうだとすれば、もらったラブレターをみずほ先輩に渡したことも納得がいく。
送り主の名前が滲んでいたのは、涙のしずくではなく、謎かけの必要条件だったのだろう。
「謎が解けたらラブレターを取りに来ると、猪俣は言っていました。このラブレターは、ふたりの接点を維持するにも有効だってことです」
そして謎が解けずに悩めば悩むほど、みずほ先輩は猪俣のことを脳裏に思い描くだろう。猪俣を意識させるための仕掛けなのか。
「なるほど、そう考えるとつじつまが合うわね」
聞いたみずほ先輩は、好意を寄せられていると知っても顔色ひとつ変えることはない。ラブレターを再読し考えを巡らせている。
「この文面、ほんとうに謎かけのためだけに書かれたものなのかなぁ……」
突然、何か閃いたようで、パソコンの画面と向き合う家須先輩の背中に声をかけた。
「そうだ家須君、ひとつお願いがあるんだけどいいかな」
いつにもまして深い黒を湛えた瞳。真剣なその横顔に俺はどきっとした。
そして、みずほ先輩が考えたのは、ラブレターにまつわる真の謎を解くための方法だった。
「なるほど。――あっ、もしかして数字は『誕生石の月』を表しているってことすか」
「さすがね、かつき君。でももしそうなら、どの宝石になるのかわかるかな?」
「待ってください、すぐ調べます!」
みずほ先輩と俺はふたりで顔を寄せてスマホの画面をのぞき込む。検索したところ、十月がオパール、それに六月がパールだった。
「って、全然意味がわからないっすよ」
「ああ、それなんだけどね、誕生石には和名があるのよ。ちなみにオパールは『蛋白石』、パールは『真珠』だよね」
「蛋白石、真珠ですか――あっ!」
聞いて正直、驚いた。
そう、俺はその名前に心当たりがあったのだ。
★
『白石真』――それは猪俣と接点のある人物だった。
ショートボブの髪型で背は高いほう。中学生の頃は男子に混ざってサッカーをやっていたという快活な女子。サッカーが心底好きなのか、今は男子サッカー部のマネージャーをやっている。
猪俣とは中学時代からのクラスメイトで、一緒にいるところをたびたび見かけた。
知る人によれば、「私と猛司は戦友だから!」が彼女の口癖らしい。
宝石が彼女の名前を示していることは確かだと思う。だけどどうも納得できない。
「その近しい関係性から察するに、あのラブレターを白石が書いたと思えないっす」
「確かに本人かどうか、確認してみる必要がありそうね」
みずほ先輩は本棚に足を運び、ファイルを一冊取り出した。
それは新入生が入学時に記載した自己紹介のコピーをファイリングしたものだ。
ページをめくり、途中で手を止める。そこには白石の名前と自己紹介文があった。
「見比べると、筆跡はきれいに一致していると思わない?」
「確かにこれは間違いないとしか……」
ともに簡単に真似できない、特徴的な丸文字だ。本人だと納得せざるを得ない。
けれど白石が親しい猪俣に対して遠回しなラブレターを書いたとすれば、その理由は何だろうか。
ふと、猪俣の『みずほたん』という呼び方を思い出した。
それから、みずほ先輩に対する猪俣の馴れ馴れしい態度。
そして、もらったラブレターをぞんざいに扱うという違和感。
さらに、ラブレターを書いたのは親しい女子だという事実。
情報は俺の中で輪を形成してゆく。
そしてひとつの仮説にたどり着いた。まさかと思い、みずほ先輩に尋ねる。
「もしかして猪俣って、みずほ先輩に気があるんじゃないですか? それが謎の動機だと、俺は思ったんです」
みずほ先輩はきょとんとしているが、俺は自分の仮説を説明する。
「猪俣はみずほ先輩に近づくための作戦を考えた。生徒会がお悩み相談をしていると知り、白石と結託して謎を込めたラブレターを書き上げてもらう。そして謎解きを口実にして、みずほ先輩を相談窓口として指名した」
そうだとすれば、もらったラブレターをみずほ先輩に渡したことも納得がいく。
送り主の名前が滲んでいたのは、涙のしずくではなく、謎かけの必要条件だったのだろう。
「謎が解けたらラブレターを取りに来ると、猪俣は言っていました。このラブレターは、ふたりの接点を維持するにも有効だってことです」
そして謎が解けずに悩めば悩むほど、みずほ先輩は猪俣のことを脳裏に思い描くだろう。猪俣を意識させるための仕掛けなのか。
「なるほど、そう考えるとつじつまが合うわね」
聞いたみずほ先輩は、好意を寄せられていると知っても顔色ひとつ変えることはない。ラブレターを再読し考えを巡らせている。
「この文面、ほんとうに謎かけのためだけに書かれたものなのかなぁ……」
突然、何か閃いたようで、パソコンの画面と向き合う家須先輩の背中に声をかけた。
「そうだ家須君、ひとつお願いがあるんだけどいいかな」
いつにもまして深い黒を湛えた瞳。真剣なその横顔に俺はどきっとした。
そして、みずほ先輩が考えたのは、ラブレターにまつわる真の謎を解くための方法だった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンスクミ〜学園のアイドルと偶然同じバイト先になったら俺を3度も振った美少女までついてきた〜
野谷 海
恋愛
「俺、やっぱり君が好きだ! 付き合って欲しい!」
「ごめんね青嶋くん……やっぱり青嶋くんとは付き合えない……」
この3度目の告白にも敗れ、青嶋将は大好きな小浦舞への想いを胸の内へとしまい込んで前に進む。
半年ほど経ち、彼らは何の因果か同じクラスになっていた。
別のクラスでも仲の良かった去年とは違い、距離が近くなったにも関わらず2人が会話をする事はない。
そんな折、将がアルバイトする焼鳥屋に入ってきた新人が同じ学校の同級生で、さらには舞の親友だった。
学校とアルバイト先を巻き込んでもつれる彼らの奇妙な三角関係ははたしてーー
⭐︎第3部より毎週月・木・土曜日の朝7時に最新話を投稿します。
⭐︎もしも気に入って頂けたら、ぜひブックマークやいいね、コメントなど頂けるととても励みになります。
※表紙絵、挿絵はAI作成です。
※この作品はフィクションであり、作中に登場する人物、団体等は全て架空です。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件
こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。
・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。
・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。
・物静かで儚げな美術部員。
・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。
・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。
拓海の生活はどうなるのか!?
幼馴染に告白したら、交際契約書にサインを求められた件。クーリングオフは可能らしいけど、そんなつもりはない。
久野真一
青春
羽多野幸久(はたのゆきひさ)は成績そこそこだけど、運動などそれ以外全般が優秀な高校二年生。
そんな彼が最近考えるのは想い人の、湯川雅(ゆかわみやび)。異常な頭の良さで「博士」のあだ名で呼ばれる才媛。
彼はある日、勇気を出して雅に告白したのだが―
「交際してくれるなら、この契約書にサインして欲しいの」とずれた返事がかえってきたのだった。
幸久は呆れつつも契約書を読むのだが、そこに書かれていたのは予想と少し違った、想いの籠もった、
ある意味ラブレターのような代物で―
彼女を想い続けた男の子と頭がいいけどどこかずれた思考を持つ彼女の、ちょっと変な、でもほっとする恋模様をお届けします。
全三話構成です。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる