リア充するにもほどがある!? 生徒会から始まる、みずほ先輩の下僕ライフ365日

秋月 一成

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【第四話 かつき君の不思議な夏の体験記】

【4-11】

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 はっと我に返ると、みずほ先輩が困ったような顔で俺を見上げていた。乗せられた手のひらがそのままだ。

 けれど言い出しっぺの俺が後に引けるはずはない。覚悟を決め、みずほ先輩の手のひらをやわらかく握りしめる。

 初めて知る、みずほ先輩の手の感触が心の奥にしみこんでゆく。

「じゃ、じゃあ、行きましょうか」
「うんっ!」

 小さな手が、力を込めて俺にしがみつく。みずほ先輩の体温が俺の手の中に広がってゆく。

 こんなに頼りない手のひらが、いろんな人を支えているんだなぁって思う。

 汗ばんで恥ずかしいけれど、それでも離したくない。

 ドーン!

 突然、花火を打ち上げる音が五臓六腑に響きわたる。

 観客たちがいっせいに空を見る。俺もみずほ先輩も、頭上の空に目を向けた。

 夜空には大輪の花と、続いてしなやかな光の放物線が描かれる。群青のキャンパスが鮮やかに彩られる。

「きれいね」

 空を見上げるみずほ先輩の瞳に花火が映り込む。俺はみずほ先輩の横顔を見ながら答える。

「ほんとに、きれいですよ」

 言ってからはっとなった。俺は無意識にみずほ先輩のこと言っていたのだと気づいたのだ。

 あわてて視線を空にそらす。

 ぼんやりと空を見上げながら思う。

 こんなに美人で優秀で魅力的なみずほ先輩の相手がつとまるひとって、きっとすごいハイスペックなひとなんだろうな。

 たとえば、モデルみたいなひとで、みずほ先輩より年上で、焼けた肌がよく似合う洋楽好きな――って、それ『高嶺の花子さん』の歌詞じゃん!

 あわや著作権を侵害しかけ、首をブルブルと横に振って悔い改める。

 けれど、もしもケンカなんかしていなかったら、制服ではないみずほ先輩をたくさん見られたはずなのに。

 そう思い、みずほ先輩のコスプレ姿を脳内で構築する。

 夏らしく麦わら帽子にチュニックとか、肌があらわなキャミソールとか、それから体のラインがくっきりのビキニ姿とか。

 前かがみになって、俺の顔をのぞき込むと、みずほ先輩の胸元が……。

 ――やばいやばい、俺のような下僕に、そんな不純な想像は禁物だ。

 でも、どんなに素敵な大人になっても、高校時代に同じ時間を過ごした下僕がいたことを覚えておいてほしいと思う。

 俺が手に力を込めると、気づいたみずほ先輩がこちらを見て微笑した。

 いつかほかの誰かに向けられる笑顔なんだよなぁ、と思って鼻の奥がツンとする。

 淡くくすぶる気持ちをごまかすように空を見上げる。

 夜空を滑る花火は流れ星じゃないけど、ちょっとだけ似ている。もしかしたらひとつくらい、願いを叶えてくれるかもしれない。

 そう思い、光降る夜空に向かってつぶやく。

「――どうかこのひとが、幸せな人生を送れますように」

 その声は喧騒にのまれ、穏やかな夜風にさらわれていった。
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