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【由季也】ポツン
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ポツン。
弟に好きな人を紹介したら、2人でホテルに行ってしまった。取り残された俺は、文字通り『ポツン』と1人、公園に佇んでいる。
「いや、座ってるけど」
独り言でモノローグに突っ込むくらいには暇だった。だからと言って、そのまま1人の部屋には帰りたくなかったし、焼肉屋で腹一杯に食べてしまったため、カフェとかに行く気もしない。途方に暮れた俺は公園でポツンと佇むことしかできなかった。
しかし3月の夜は寒い。流石にどこか屋内に退避しなければ風邪ひいちゃうかも。垂れてきたサラサラの鼻水を啜る。
「どうしたの? 泣いてるの?」
声をかけられ顔を上げると、背の高い美女が心配そうに眉を寄せていた。
「いや、ちょっと鼻……」
突然のことで、こんなきれいな人に『鼻水』なんて単語を使って良いのか迷う。
「ああ、寒いよね。1人? もしよかったらどこかお店に行かない? 私もこの時間1人でお店行くの寂しくて」
落ち着いた声色でスラスラと話す美女は、なんかよくわからないけど、賢そうで良い人に見える。
「いいっすよ」
断る理由が見当たらなかった。
「ついてきてくれたから奢ってあげる。何が良い?」
逆ナン美女こと、チハルさんは席の向かい側で微笑んだ。きれいな笑顔の作り方を鏡に向かって練習しているのかもしれない。そう思えるくらいにきれいな笑顔だった。それにしても、この連れてこられた店はなんの店なのかわからない。深夜まで営業している喫茶店といった感じだろうか、店内の半分くらいの客がカレーを食べているようだからカレー屋かもしれない。
「おすすめはパフェなんだけど、外寒かったからあったかいのが良いかな?」
「チハルさんのおすすめで良いです。あ、でもカレーは無理です。お腹いっぱいで」
「そ? じゃあ……マスター! ボトルとお湯くださぁーい。あ、あと梅」
「あいよー」
テーブルに現れたのは、お湯の入った魔法瓶と梅干し。そしてどこでも見かけるポピュラーな麦焼酎の瓶だった。
「ゆっきーは梅入れる?」
「梅は無しでオネガイシマス」
「はぁーい」
チハルさんは慣れた様子でお湯わりを作って俺に手渡す。意図せず指が触れて、照れたように微笑むから、つられて微笑んでしまう。
「ゆっきー笑った顔可愛いー! 可愛さにカンパァーイ!」
乱暴にグラスをぶつけて、麦焼酎お湯わり(梅入り)を煽るチハルさん。つられて俺もお湯わりを煽る。熱いものが喉を通り抜けて胃に届く。あったかい。五臓六腑に染み渡るってこんな感じか。なんて感心していると、ぐにゃりと世界が歪んだ。
弟に好きな人を紹介したら、2人でホテルに行ってしまった。取り残された俺は、文字通り『ポツン』と1人、公園に佇んでいる。
「いや、座ってるけど」
独り言でモノローグに突っ込むくらいには暇だった。だからと言って、そのまま1人の部屋には帰りたくなかったし、焼肉屋で腹一杯に食べてしまったため、カフェとかに行く気もしない。途方に暮れた俺は公園でポツンと佇むことしかできなかった。
しかし3月の夜は寒い。流石にどこか屋内に退避しなければ風邪ひいちゃうかも。垂れてきたサラサラの鼻水を啜る。
「どうしたの? 泣いてるの?」
声をかけられ顔を上げると、背の高い美女が心配そうに眉を寄せていた。
「いや、ちょっと鼻……」
突然のことで、こんなきれいな人に『鼻水』なんて単語を使って良いのか迷う。
「ああ、寒いよね。1人? もしよかったらどこかお店に行かない? 私もこの時間1人でお店行くの寂しくて」
落ち着いた声色でスラスラと話す美女は、なんかよくわからないけど、賢そうで良い人に見える。
「いいっすよ」
断る理由が見当たらなかった。
「ついてきてくれたから奢ってあげる。何が良い?」
逆ナン美女こと、チハルさんは席の向かい側で微笑んだ。きれいな笑顔の作り方を鏡に向かって練習しているのかもしれない。そう思えるくらいにきれいな笑顔だった。それにしても、この連れてこられた店はなんの店なのかわからない。深夜まで営業している喫茶店といった感じだろうか、店内の半分くらいの客がカレーを食べているようだからカレー屋かもしれない。
「おすすめはパフェなんだけど、外寒かったからあったかいのが良いかな?」
「チハルさんのおすすめで良いです。あ、でもカレーは無理です。お腹いっぱいで」
「そ? じゃあ……マスター! ボトルとお湯くださぁーい。あ、あと梅」
「あいよー」
テーブルに現れたのは、お湯の入った魔法瓶と梅干し。そしてどこでも見かけるポピュラーな麦焼酎の瓶だった。
「ゆっきーは梅入れる?」
「梅は無しでオネガイシマス」
「はぁーい」
チハルさんは慣れた様子でお湯わりを作って俺に手渡す。意図せず指が触れて、照れたように微笑むから、つられて微笑んでしまう。
「ゆっきー笑った顔可愛いー! 可愛さにカンパァーイ!」
乱暴にグラスをぶつけて、麦焼酎お湯わり(梅入り)を煽るチハルさん。つられて俺もお湯わりを煽る。熱いものが喉を通り抜けて胃に届く。あったかい。五臓六腑に染み渡るってこんな感じか。なんて感心していると、ぐにゃりと世界が歪んだ。
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