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帰る場所
しおりを挟む3人で付き合う。
そんな奇妙な交際関係は、3年経った今でもゆるゆると続いている。
俺はドラゴンさんの店で相変わらず店員を続けているし、変わったことといえば梅香とらいちがそれぞれ就職した。それくらいだろうか。
卒業や就職のタイミングで色々ありながらも、彼女たち二人はずっと一緒に暮らしていて、俺だけ遠距離となっている。ちなみに、それぞれの現在の職業は、梅香が高校の保健室の先生。らいちはまだ見習いながらも美容師になった。
夢に向けて頑張る彼女たちを見て、何となくバイトから店員になり、何となくそのまま仕事を続けている自分が少し情けなくも感じる。
「俺も何か、もっと頑張った方がいいんすかね……」
「あなたねぇ、続けることも結構大変なのよ? お店、しっかり続けてちょうだいよ。掃除お願いね」
ドラゴンさんから強めに背中を叩かれた。
そういえば、今度の連休は梅香が帰ってくるし、らいちも休みが合えば一緒に来たいと言っていた。梅香にとっては、ここは単に彼女の彼氏。もしくは、友人の店なんだろうけど、いつも『帰る』と言っていることに気がついた。
彼女たちにとって俺の居るここは、帰る場所になっていたのか。そう思うと、ドラゴンさんの言うことが、核心をついている言葉に感じた。
「やっぱ、ドラゴンさん。すげえっすね。しっかり続けます!」
「へ? よくわからんけど、ぼんやりしてないで掃除ちゃんとしてよ」
「あ、はい」
「もうね、アタシ、歳なのかしらね。今日みたいにいきなり暑くなると動けないのよね」
ドラゴンさんはサボる口実をごちゃごちゃ言いながら、座ってお茶を飲んだ。核心云々は気のせいだったかもしれない。
掃除のために外に出ると、まだ春だと言うのにクソ暑い。
あの暑い日。出会った百合の女神たちに、挟まって死にたい! なんて思ったけれど、いざ挟まってみると死にたくないもんだな。神様、掌を返してごめんなさい。でも、なんで俺はあんなに死にたいって思っていたのか。
当時の自分の気持ちを思い出しながら、店の表を箒で掃く。
「あー……そういえば、学校、つまらなくて好きじゃなかったな」
彼女たちと出会って、そんなこと忘れていたんだ。
さて、こうした日常を、いつでも彼女たちが帰れる場所を、今日も守っていこう。とりあえず、いつもより少しだけ念入りに入口ドアを拭きあげた。
end
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