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悩んでいる人がいたら黙って話を聞くべし

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次の日。
輝介は学校を休んだ。
だが、いつもの明るくて面白い輝介とはなにかが違った。
なんだろう。なんか、笑っているのだけれど心から笑っているようには見えない。

「美苗ー次移動教室だよー!早くー!」
結依那が言う。
私はほんの少しだけ輝介のことを気にしながら理科室へへ向かった。

「あ!ぼーとしてて理科のノート教室に忘れてきちゃったからとってくるわ!ごめん先行っててー。」
「おっけー。」

おっと。私はほんの少しではなく、輝介のことしか考えていなかったようだ。
私は走って教室に戻った。


「え?!」

思わず声が出た。
そこには輝介がいたのだ。
しかも泣いている輝介が。
輝介はこっちを振り返る。
そして慌てて涙を拭く。

「輝介、どうしたの?」
「……」

輝介は何も言わない。
私はハンカチを渡す。
輝介はまた何も言わずにハンカチを受け取った。一瞬目が合った。

「先週もずっと休んでたし、なにかあったの?」
「……」

沈黙が続く。
私には10分くらいのように思えたが、実際はほんの数秒だったのかもしれない。

輝介が口を開く。
「先週、親が離婚した。」

私は固まる。予想外の出来事になんて返したらいいのか分からない。

「お父さんが浮気してたのがお母さんにばれたみたい。お父さんは家からでていった。もう、お父さんに会えないのかな。」

初めて輝介の弱音を聞いた気がする。
でも私に喋ってくれたことがなぜかすごく嬉しかった。今はそんなこと思ってる場合じゃないのに。

それから先週あったことを全部話してくれた。私は何も答えず、頷きながら聞いた。

ある程度輝介の泣きが収まったところで2人で理科室へ向かう。
あいにく授業は始まっていた。だいたい予想はついていたけど。
私達は先生にすごく叱られた。
それと、後から結依那に聞いたのだが、どうやらこの件でクラス全員が私と輝介は出来ていると思い込んでしまったらしい。

その時私は徐々に現実を受け止めていけばいいと思っていた。
だが、輝介は違った。
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