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<ジルベール>シリアス ルート
18<ジルベール>視点
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「良かった……」
穏やかな表情で目を閉じているレイザードに、安堵から息を吐く。
心配なのもあって、休んでいくように伝えた。断られるのを覚悟していたけれど、ソファに座って目を閉じて疲れていたのか。しばらくしたら小さく寝息が聞こえてくる。
ソファで寝ると疲れるだろと思って、ベットに連れていく。最初は穏やかな顔だったから、安心していた。けれど途中から、表情が変わる。苦しそうに眉根を寄せて、時折涙を流して―― 起こそうかと、何度か思った。けど目を覚ましているときは、辛そうな表情を浮かべていても涙を流しても堪えてしまう。
問題ない。迷惑になるって、痛みを堪らえようとしている姿が痛々しかった。
顔色が悪くて、体調も悪そうで、涙を流す。君が苦しんでいることは分かるのに、何が出来るのかが分からない。
力になりたい。傷つけたくない。なによりも大切に想っているのに、臆病風に吹かれて
何も出来ない。
涙の原因は、何? 君を苦しめているのは、一体なに
『……迷惑だよ』
『迷惑をかけたのに、なにもしないで帰るつもり?』
自分の発した言葉を思い返して、溜息をつく。
引き留めるために、酷いことを言ってしまった。いくら迷惑じゃないって伝えても、帰ってしまいそうだった。一人になってほしくなくて、放っておくことなんて出来ないで、でもレイザードは帰ってしまう。どうすれば良いのか考えて、彼の言葉を肯定することにした。
結果的にレイザードは留まってくれて、穏やかな表情で眠りについている。結果だけ見れば良いのだろうけれど、その過程で彼を傷つけたかと思うとやるせない気持ちになる。
―― あいつなら、もっと良い方法をとれるんだろうな
好きになれない従兄の顔が浮ぶ。いつも余裕の表情で、実際になんでもそつなくこなす。あいつなら人を好きになっても、悩まないのかもしれない。好きな人が悲しんでいるときに、傷つけたりしないでその人のためになる言葉をかけられる。
―― 何もできないのって、辛いな
人を好きになったことがないから、好きな人が苦しんでいるときに何もできない。それがこんなに、辛いって初めてしった。
―― ヴァルゼーエンさんなら、何か知ってるのかな
世話になった人だって言ってた。レイザードが向けていた表情も穏やかで、信頼しているのが分かる。
―― 聞いたら、教えてもらえるだろうか
浮かんだ考えを、頭を軽く振って追い出す。話したくないってレイザードは、そう思っているから話さない。なのにそれを、他の人から聞き出すなんてレイザードの意思を無視しているようなものじゃないか。
力になりたい。けど一方的で身勝手な願いを、かなえるために気持ちを踏みにじるようなことはできない。
『お父さん……』
瞼を閉じながら涙を流しているとき、レイザードが小さい声でけどはっきりと口にした。家族の夢を見ていたのだろうか。
家族の、レイザードから一度も聞いたことのない家族の――
『ごめんなさい、ごめんなさい……』
消えるような小さい声でずっと謝っていた。どうしたら彼の苦しみが癒えるのか分からなくて、気づいたら頭を撫でていた。何も意味がないって思ったけど、表情が穏やかになっていく。小さく震える手を握り締める。それが何の意味を成すかなんて分からなかったけれど、少しでも力になればと願って離さずに傍にいることにした。
穏やかな表情で目を閉じているレイザードに、安堵から息を吐く。
心配なのもあって、休んでいくように伝えた。断られるのを覚悟していたけれど、ソファに座って目を閉じて疲れていたのか。しばらくしたら小さく寝息が聞こえてくる。
ソファで寝ると疲れるだろと思って、ベットに連れていく。最初は穏やかな顔だったから、安心していた。けれど途中から、表情が変わる。苦しそうに眉根を寄せて、時折涙を流して―― 起こそうかと、何度か思った。けど目を覚ましているときは、辛そうな表情を浮かべていても涙を流しても堪えてしまう。
問題ない。迷惑になるって、痛みを堪らえようとしている姿が痛々しかった。
顔色が悪くて、体調も悪そうで、涙を流す。君が苦しんでいることは分かるのに、何が出来るのかが分からない。
力になりたい。傷つけたくない。なによりも大切に想っているのに、臆病風に吹かれて
何も出来ない。
涙の原因は、何? 君を苦しめているのは、一体なに
『……迷惑だよ』
『迷惑をかけたのに、なにもしないで帰るつもり?』
自分の発した言葉を思い返して、溜息をつく。
引き留めるために、酷いことを言ってしまった。いくら迷惑じゃないって伝えても、帰ってしまいそうだった。一人になってほしくなくて、放っておくことなんて出来ないで、でもレイザードは帰ってしまう。どうすれば良いのか考えて、彼の言葉を肯定することにした。
結果的にレイザードは留まってくれて、穏やかな表情で眠りについている。結果だけ見れば良いのだろうけれど、その過程で彼を傷つけたかと思うとやるせない気持ちになる。
―― あいつなら、もっと良い方法をとれるんだろうな
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―― 何もできないのって、辛いな
人を好きになったことがないから、好きな人が苦しんでいるときに何もできない。それがこんなに、辛いって初めてしった。
―― ヴァルゼーエンさんなら、何か知ってるのかな
世話になった人だって言ってた。レイザードが向けていた表情も穏やかで、信頼しているのが分かる。
―― 聞いたら、教えてもらえるだろうか
浮かんだ考えを、頭を軽く振って追い出す。話したくないってレイザードは、そう思っているから話さない。なのにそれを、他の人から聞き出すなんてレイザードの意思を無視しているようなものじゃないか。
力になりたい。けど一方的で身勝手な願いを、かなえるために気持ちを踏みにじるようなことはできない。
『お父さん……』
瞼を閉じながら涙を流しているとき、レイザードが小さい声でけどはっきりと口にした。家族の夢を見ていたのだろうか。
家族の、レイザードから一度も聞いたことのない家族の――
『ごめんなさい、ごめんなさい……』
消えるような小さい声でずっと謝っていた。どうしたら彼の苦しみが癒えるのか分からなくて、気づいたら頭を撫でていた。何も意味がないって思ったけど、表情が穏やかになっていく。小さく震える手を握り締める。それが何の意味を成すかなんて分からなかったけれど、少しでも力になればと願って離さずに傍にいることにした。
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