BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている

青緑三月

文字の大きさ
128 / 151
<ジルベール>シリアス ルート

4

しおりを挟む

 
 ―― だいぶ場所を、とるな
 ジルベールからもらったウサギのぬいぐるみを、眺めながら溜息をつく。
 乗せるための台は結局、背もたれと肘掛けのある椅子の形にした。大きすぎるせいでその形にしないと、バランスが悪くて落ちそうになるんだ。

 ―― 可愛いんだけどな……
 なにせでかい。あげくに重い。せめて夢に出てきたウサギくらいの大きさなら、困らなかっただろうに。

「……あれ」
 夢の中で跳ねるウサギを、思い出しているとあることに気づいた。
 ―― あの人、髪が白かったな
 子供の傍に線の細い人がいた。一つに結ばれた長い髪が、白かったことを思い出す。顔はよく見えないから、目の色は分からない。けどもし緑ならあの人は、光の術師ってことになる。

 ―― なんで俺の夢に、光の術師が出てくるんだ?
 目の色が見えなかったから、断定はできない。なのに何故だが、あの人は光の術師であるきがした。

 ―― そもそも、あれは夢なのか?
 寝ていたときに見ていたのだから、夢なのだとは思う。けれど前に何度か見たバグに出てきた人達と、同じな気がした。その子の視点で見てるからまったく容姿の分からない子供、その子の親らしき男の人、あとは線の細い男の人
 この三人は前にもバグが、おきたときに見たことがある。なら今回のも夢じゃなくて、バグなんじゃないだろうか。あと今回はいなかったけれど、優しい声をした女の人がいた。
 全部が全部同じではないけれど、共通点もある。ということは少なくともこのバグに関しては、誰か一人に関連するものかもしれない。

 ―― まさか、先生?
 光の術師と考えて、思いつくのが先生しかいない。けど髪の白いあの人は、先生ではない。顔は見えないけれど、声が違う。あと同じく細いけど、背の高さが違う気がした。子供目線で見てるから、違うように感じるだけかもしれないが。

 ―― もしかして
 子供が先生だったりしないだろうか。あれが先生の過去だったり記憶だったりして、それがバグのせいで俺が見ているとしたら―― ばれたら、とんでもないことになりかねない。
 話さなければバレる可能性なんてないのだが、想像して鳥肌が立った。話してもいないことを、知られていると先生が知ったらどう思うか。

 ―― 大丈夫だ、ばれなければ問題はない
 元々誰かに話すつもりもない。それに先生と決まったわけじゃない。とても少ないとは書いてあったけれど、光の術師は他にもいるはずだ。
 今のところ分かっているのは光の術師らしき人と、関わりがあった誰かのバグということだけだ。

 ―― あっ
 あともう一つあった。子供の親らしき男の人は水の適性を持ってる。氷のウサギを作ったのだから、そこは確定でいいはずだ。
 けどそれだけだと誰かは、分からない。適性が必ず親と同じなら、誰から絞れるのだがあいにくとそうじゃない。

 ―― 考えてもしょうがないか
 もし誰であるか分かっても、モブの俺にはどうしようもない。話されていないことを勝手に知ってしまって、相手に罪悪感は持つだろうけれど。
『ウサギしゃん!』
 元気の良い子供の声を、思い出す。
 知られたくない。もし俺だったら子供の頃だからといってウサギを、ウサギしゃんと呼んでいたことを第三者に知られたくない。
 

 ―― 寝る準備をするか
 眠気と共に欠伸が出る。
 ぬいぐるみに合う台を作るのに、試行錯誤していたせいでだいぶ遅い時間になってしまった。 明日も学園がある日だから、もうそろそろ寝た方が良い。講義の時に寝てしまって、その理由がぬいぐるみを載せる台を作っていたからなんて言えないしな。

「ふあっ……」
 欠伸と共に間抜けな声が出る。今すぐにベッドにダイブしたくなったが、準備をしないと朝に困ることになる。首を振って眠気をごましてから、明日の為に手を動かした。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。

時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!? ※表紙のイラストはたかだ。様 ※エブリスタ、pixivにも掲載してます ◆4月19日18時から、この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」を1話ずつ公開予定です。そちらも気になったら覗いてみてください。 ◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

転生したが壁になりたい。

むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。 ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。 しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。 今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった! 目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!? 俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!? 「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」

ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね

ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」 オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。 しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。 その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。 「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」 卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。 見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……? 追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様 悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼2025年9月17日(水)より投稿再開 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

某国の皇子、冒険者となる

くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。 転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。 俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために…… 異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。 主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。 ※ BL要素は控えめです。 2020年1月30日(木)完結しました。

処理中です...