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自意識過剰の王子様9
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強い敵意が一部に絞られ、私の周囲の環境は以前に比べ、格段に良くなっていた。
授業中、再び手紙が私の元へと届けられようとした時には、隣の席のクラスメイトがその手紙を握りつぶしてくれた。
昨日、私の授業中断の効果もあったのだろうが、可憐や深朱、史華のフォローや強化担任の先生からの注視が、私の環境を整えてくれた。
おかげで、復帰後初めて、授業に集中できたように思える。
まぁ、元々頭が良いほうではないので、集中と理解は別問題であるのだが。
昼休憩のチャイムを待って、カバンから素早く弁当箱を取り出す。
羽衣の作る弁当は、色鮮やかで薄味だ。
彼女曰く、『料理は出汁』らしい。
私の好み的には、塩コショウたっぷりを所望したいのだが、作ってもらっている以上、そんなことを口にできるはずもなかった。
「……神代さん」
隣の席の子が小さく私の名前を呼ぶ。
「どうかしたかの?」
「……あれ」
指さす方に視線を走らせれば、教室の入り口に空回り俳優がソコに立っていた。
目が合うと、イカは小さく触腕を上げた。
「ふぅ、イカは好まぬのだが」
私は重い腰を上げ、教室の入り口へと向かう。
「なんじゃ?わらわに何か用かの?」
「用がなければ、来てはいけないのかい?」
「うむ。来てほしくはないの」
「じゃあ、用がある。二人で話をしないかい?」
「したくないのう。わらわは、昼食を食すゆえ」
「君はわかっていないな。君は僕の傍に居ればいいんだよ」
あぁ、埒が明かない。
「わかっておらぬのは、お主のほうじゃと言っておろう」
ふいに後ろに温もりを感じる。
振り向かなくともわかる、親友の温もり。
私越しに、俳優は史華を見る。
「どういたんだい?サインを書いてほしいのかな?」
「つ、つばきちゃんの傍にいるのは、わたしですっ!」
史華が私の右腕を抱きしめた。
「じゃよ。お主の傍にいくつもりは微塵もない」
私の言葉を聞いて、長宗我部は長いため息を吐いた。
「仕方ないな。君も一緒に来るといいよ」
私たちに背を向け、廊下を歩きだした。
「……このままついて行かぬ、という手はないかのう」
「あの、いつまでも付きまとわれると思うな、わたし」
「そうじゃのう…」
足を引きずるように、長宗我部の背中を付いていくことにしたのだった。
通されたのは、空教室。
何もない教室に、教卓だけが、この部屋の主だと主張していた。
「単刀直入に言うね。僕の恋人になるべきだ」
「は?」
軽い衝撃を覚えた。何を言っているのだろう。
「昨日から、お主は何を言っておるのじゃ?」
「君は、なんと言えば理解できるんだい?」
思わず史華に目配せをすると、史華は小首を傾げた。
「僕に相応しい美しさを君は持っている。僕と釣り合えると思ったのは君くらいだ」
「わらわの意見はないのか?」
「僕を断る理由なんてないだろう?光栄だと思って欲しい」
「全然、思わぬの」
自分の意見、主張ばかりだ。
「わらわは、お主のことが不愉快じゃ」
「どういうことなんだい?」
「…長宗我部先輩、お言葉ですが…つばきちゃんは、先輩の恋人にはなりません」
「僕が決めたんだ。なんの不満もないよね?」
「私たちは先輩のシナリオ通りに動く脇役ではないんです!」
珍しく、史華の表情に怒りが浮かんでいた。
「その通りじゃ。確かにお主の人生はお主が主役じゃ。お主から見れば、わらわたちは、お主の人生において脇役であろう。しかし、わらわたちは、わらわたちの人生の主役でもあるのじゃよ。お主の人生を彩るだけの人生など、以ての外じゃ!」
「他人を理解できず、自分視点でしか考えられない人が、他人を演じることである芝居なんてできるはずないです!失礼します!」
「なっ!?」
長宗我部が大きく動揺した。その様子を見て、史華が私の腕をとって空き教室から飛び出した。
空き教室の外には、私たちの弁当箱をぶら下げた可憐と、コーヒーを4本抱えた深朱が立っていた。
「ふむ、お昼ごはんにするかの」
4人で、校舎の屋上へと歩き出すのだった。
私の隣には、史華と可憐。
私はそれで不満などあるはずもなかった。
授業中、再び手紙が私の元へと届けられようとした時には、隣の席のクラスメイトがその手紙を握りつぶしてくれた。
昨日、私の授業中断の効果もあったのだろうが、可憐や深朱、史華のフォローや強化担任の先生からの注視が、私の環境を整えてくれた。
おかげで、復帰後初めて、授業に集中できたように思える。
まぁ、元々頭が良いほうではないので、集中と理解は別問題であるのだが。
昼休憩のチャイムを待って、カバンから素早く弁当箱を取り出す。
羽衣の作る弁当は、色鮮やかで薄味だ。
彼女曰く、『料理は出汁』らしい。
私の好み的には、塩コショウたっぷりを所望したいのだが、作ってもらっている以上、そんなことを口にできるはずもなかった。
「……神代さん」
隣の席の子が小さく私の名前を呼ぶ。
「どうかしたかの?」
「……あれ」
指さす方に視線を走らせれば、教室の入り口に空回り俳優がソコに立っていた。
目が合うと、イカは小さく触腕を上げた。
「ふぅ、イカは好まぬのだが」
私は重い腰を上げ、教室の入り口へと向かう。
「なんじゃ?わらわに何か用かの?」
「用がなければ、来てはいけないのかい?」
「うむ。来てほしくはないの」
「じゃあ、用がある。二人で話をしないかい?」
「したくないのう。わらわは、昼食を食すゆえ」
「君はわかっていないな。君は僕の傍に居ればいいんだよ」
あぁ、埒が明かない。
「わかっておらぬのは、お主のほうじゃと言っておろう」
ふいに後ろに温もりを感じる。
振り向かなくともわかる、親友の温もり。
私越しに、俳優は史華を見る。
「どういたんだい?サインを書いてほしいのかな?」
「つ、つばきちゃんの傍にいるのは、わたしですっ!」
史華が私の右腕を抱きしめた。
「じゃよ。お主の傍にいくつもりは微塵もない」
私の言葉を聞いて、長宗我部は長いため息を吐いた。
「仕方ないな。君も一緒に来るといいよ」
私たちに背を向け、廊下を歩きだした。
「……このままついて行かぬ、という手はないかのう」
「あの、いつまでも付きまとわれると思うな、わたし」
「そうじゃのう…」
足を引きずるように、長宗我部の背中を付いていくことにしたのだった。
通されたのは、空教室。
何もない教室に、教卓だけが、この部屋の主だと主張していた。
「単刀直入に言うね。僕の恋人になるべきだ」
「は?」
軽い衝撃を覚えた。何を言っているのだろう。
「昨日から、お主は何を言っておるのじゃ?」
「君は、なんと言えば理解できるんだい?」
思わず史華に目配せをすると、史華は小首を傾げた。
「僕に相応しい美しさを君は持っている。僕と釣り合えると思ったのは君くらいだ」
「わらわの意見はないのか?」
「僕を断る理由なんてないだろう?光栄だと思って欲しい」
「全然、思わぬの」
自分の意見、主張ばかりだ。
「わらわは、お主のことが不愉快じゃ」
「どういうことなんだい?」
「…長宗我部先輩、お言葉ですが…つばきちゃんは、先輩の恋人にはなりません」
「僕が決めたんだ。なんの不満もないよね?」
「私たちは先輩のシナリオ通りに動く脇役ではないんです!」
珍しく、史華の表情に怒りが浮かんでいた。
「その通りじゃ。確かにお主の人生はお主が主役じゃ。お主から見れば、わらわたちは、お主の人生において脇役であろう。しかし、わらわたちは、わらわたちの人生の主役でもあるのじゃよ。お主の人生を彩るだけの人生など、以ての外じゃ!」
「他人を理解できず、自分視点でしか考えられない人が、他人を演じることである芝居なんてできるはずないです!失礼します!」
「なっ!?」
長宗我部が大きく動揺した。その様子を見て、史華が私の腕をとって空き教室から飛び出した。
空き教室の外には、私たちの弁当箱をぶら下げた可憐と、コーヒーを4本抱えた深朱が立っていた。
「ふむ、お昼ごはんにするかの」
4人で、校舎の屋上へと歩き出すのだった。
私の隣には、史華と可憐。
私はそれで不満などあるはずもなかった。
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