21 / 22
自意識過剰の王子様10
しおりを挟む
コーヒーを渡すと姿を消した深朱を省き、三人屋上で弁当に舌鼓を打つ。
少し雲の多い空模様ではあるが、日差しを気にせず、過ごしやすい環境である。
「ふぅ、これでわらわと距離を取ってもらえるかのう」
「さあね」
私の言葉に、すぐ首を傾げて応対する可憐。
「あやつは忙しい俳優なのであろう?わらわなんかで時間を潰さずに、その時間を有効に使えばよかろうに」
「あの人までとは行かなくても、つばきちゃんは、もう少し自意識過剰であるべきだと思うの!」
珍しく強い口調の史華。
通る声は、まっすぐ私の心を貫くよう。
「つばきちゃんは、長宗我部先輩ですら見劣りする美しさを持っているんだよ」
「そんなことはないであろう。わらわより美しい女性など沢山おる」
「ロシア人の美しさ、日本人の美しさ、その両方が融合した美しさがあるんだよ。そして、なによりも…」
聞こえる、唾を飲み込む音。暖かな呼吸音。
「私は、つばきちゃんの心が美しいと思うの」
目立つ容姿ではなく、心…?
「……史華の言う通りよ。あなたの本当の魅力は、『心』だと思うわ」
可憐も無表情で静かに頷いた。
「つばきちゃんの見た目しか見てない人に、つばきちゃんの心を知らない人に…近づかれるのは、私、いやだよ!」
「確かに不愉快だわ」
複雑な気持ちで、私は弁当を一口含む。味がよくわからない。
「…わらわは、よくわからぬのでの。見た目は派手じゃから目立つだけであろう。最近は堪えることもできず、声を荒げることすら増えておる」
「そうね。昨日はびっくりしたわね。でも…」
言葉を切る可憐。
「悔しいけど、カッコいいと思ってしまったわね」
卵焼きを箸でつまもうとし、空振る。
「史華、可憐、買い被りすぎじゃよ」
私は、母のように何も隠さずに生きたかっただけなのだ。
白い髪、青い瞳、白い肌…そしてアニメヲタクである自分を。
なんだろ…私、単なるマザコンか?
そのマザコンの自分を魅力的だと言ってくれてる。
あぁ。
だから、申し訳ない気持ちが強いのか。
みんなが思うような人間ではないんだよ。
私は、そこらへんにいる矮小な人間なんだ。
「私は、あなたの存在をしっかり認識したのは、確かについ最近ね。でも、史華は違うのでしょう?」
「確かに昨日今日の仲ではないがの…なっ!?」
突如、私は史華の香りに包まれた。
私、抱きしめられている…?
「つばきちゃんは、私の王子様なの…!孤独から救ってくれた王子様なの!」
横で可憐は静かに頷く。
「私の王子様は凄く魅力的なんだよ。その魅力を自覚して欲しい」
私を抱きしめる腕の力がさらに強くなる。
「少しでも、自意識過剰な王子様になって…自分の魅力に気づいて」
「そうね」
ふいに、可憐の甘い香りも鼻腔を刺激する。
「私の王子様にもなってもらえるかしらね」
屋上で抱きしめ合う三人。
雲から覗く太陽は、私たちのことを見て、どんな表情を浮かべるのだろうか?
「きっと微笑んでおるのじゃろうな」
少し雲の多い空模様ではあるが、日差しを気にせず、過ごしやすい環境である。
「ふぅ、これでわらわと距離を取ってもらえるかのう」
「さあね」
私の言葉に、すぐ首を傾げて応対する可憐。
「あやつは忙しい俳優なのであろう?わらわなんかで時間を潰さずに、その時間を有効に使えばよかろうに」
「あの人までとは行かなくても、つばきちゃんは、もう少し自意識過剰であるべきだと思うの!」
珍しく強い口調の史華。
通る声は、まっすぐ私の心を貫くよう。
「つばきちゃんは、長宗我部先輩ですら見劣りする美しさを持っているんだよ」
「そんなことはないであろう。わらわより美しい女性など沢山おる」
「ロシア人の美しさ、日本人の美しさ、その両方が融合した美しさがあるんだよ。そして、なによりも…」
聞こえる、唾を飲み込む音。暖かな呼吸音。
「私は、つばきちゃんの心が美しいと思うの」
目立つ容姿ではなく、心…?
「……史華の言う通りよ。あなたの本当の魅力は、『心』だと思うわ」
可憐も無表情で静かに頷いた。
「つばきちゃんの見た目しか見てない人に、つばきちゃんの心を知らない人に…近づかれるのは、私、いやだよ!」
「確かに不愉快だわ」
複雑な気持ちで、私は弁当を一口含む。味がよくわからない。
「…わらわは、よくわからぬのでの。見た目は派手じゃから目立つだけであろう。最近は堪えることもできず、声を荒げることすら増えておる」
「そうね。昨日はびっくりしたわね。でも…」
言葉を切る可憐。
「悔しいけど、カッコいいと思ってしまったわね」
卵焼きを箸でつまもうとし、空振る。
「史華、可憐、買い被りすぎじゃよ」
私は、母のように何も隠さずに生きたかっただけなのだ。
白い髪、青い瞳、白い肌…そしてアニメヲタクである自分を。
なんだろ…私、単なるマザコンか?
そのマザコンの自分を魅力的だと言ってくれてる。
あぁ。
だから、申し訳ない気持ちが強いのか。
みんなが思うような人間ではないんだよ。
私は、そこらへんにいる矮小な人間なんだ。
「私は、あなたの存在をしっかり認識したのは、確かについ最近ね。でも、史華は違うのでしょう?」
「確かに昨日今日の仲ではないがの…なっ!?」
突如、私は史華の香りに包まれた。
私、抱きしめられている…?
「つばきちゃんは、私の王子様なの…!孤独から救ってくれた王子様なの!」
横で可憐は静かに頷く。
「私の王子様は凄く魅力的なんだよ。その魅力を自覚して欲しい」
私を抱きしめる腕の力がさらに強くなる。
「少しでも、自意識過剰な王子様になって…自分の魅力に気づいて」
「そうね」
ふいに、可憐の甘い香りも鼻腔を刺激する。
「私の王子様にもなってもらえるかしらね」
屋上で抱きしめ合う三人。
雲から覗く太陽は、私たちのことを見て、どんな表情を浮かべるのだろうか?
「きっと微笑んでおるのじゃろうな」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる