ブラッディソード・エクレア

渋谷かな

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「エクレアさん!?」
奈落を照らす光は、シューの一番会いたいエクレアの姿になる。
「エクレアさんなの!?」
「そうよ。シュー。」
「え、エクレアさんだ! 本当にエクレアさんの声だ!」
シューがエクレアと会話をしたのは、シューがエクレアを剣で刺した時以来であった。それでもシューはエクレアの声を忘れてはいなかった。
「シュー。」
「エクレアさん。」
まるで何年も会っていなかった恋人が久しぶりに再会したかのような雰囲気が漂う。
「お腹空いた。」
これがエクレアの第一声であった。
「はあ!?」
シューの感動の再会のイメージは音を立てて崩れていく。
「エクレアはどこ!? 私のエクレアは!? 食わせろ!?」
口から火を噴きそうな勢いで叫ぶエクレア。
「相変わらずの食い意地ですね。他に言うことはないんですか?」
シューは呆れて物も言えない。
「恐らく冥王ハーデースの血を剣が吸って、私の神の血を司る天使としての本能が、私を目覚め刺したのね!」
「うわあ!? エクレアさんがまともなことを喋った!?」
エクレアは神の血を司る天使であった。
「さあ! 私が現れた理由も言ったし・・・エクレアちょうだい!」
天使エクレアの名前の由来はエクレアが食べたくて天界から足を滑らした天使だからである。
「無理です。」
「どうして無理なのよ。」
「ここは暗い暗闇の底ですから。」
シューは奈落にいるので、エクレア屋さんはない。
「それなら簡単よ。」
「え?」
「暗闇に剣を突き刺して・・・血を吸えばいいのよ。奈落神、タルタロスの血を。」
大好きなエクレアを食べるためなら、普段使わない脳みそも使うエクレア。
「そうだね。一緒に戻ろう。人間界に戻ったら、エクレア食べ放題だ!」
シューは剣を暗闇に突き刺す。
「ギャアアア!?」
ブラッディソードが霧を、暗闇を、奈落を吸い始めた。
「黒が赤に染まっていく!?」
シューの周囲が黒い世界から、赤い世界へと変わっていく。
「奈落神タルタロスの血を吸って、シュー、あなたは奈落さえも自由に扱えるようになったのよ。」
シューはエクレアの宿るブラッディソードに血を吸わせれば吸わせるほど強くなっていく。
「エクレアさん!? エクレアさんの光が赤くなっていく!?」
ブラッディソードに血を吸わせれば、エクレアも神の血を司る天使として、赤く染まっていく。
「気にすることはない。これも私の宿命だ。」
「エクレアさん。」
「それよりもタルタロスがお礼を言いたいそうよ。」
神の血を司るエクレアは神と会話することが許されている。タルタロスが姿を現した。
「私自身が奈落になってしまい、このまま永遠に暗闇を彷徨うと諦めていた。まさか奈落の呪縛から解き放たれる時が来るとは思わなかった。これからはおまえを通して世界の様子を眺めることにしよう。ありがとう。生身の人間。ありがとう。シュー。」
「タルタロスさん。」
タルタロスは赤い奈落に消えていった。
「シュー、感傷に浸っている暇はないぞ。」
「はい。」
「エクレアを食べに行くぞ!」
神の血を司る天使エクレアの脳みその99%は大好きなエクレアでできている。
「なんでそうなるんだよ!?」
エクレアの食いしん坊ぶりにズッコケるシュー
「シュー。あなたが悪い。」
「どうして僕が!?」
「雑魚の血ばっかり集めるから、私は復活できなかったじゃないか!?」
ただの天使の八つ当たりであった。
「10年だぞ! 10年! やっと神の血に触れるのに、10年かかったんだぞ! こっちは剣の中で永遠の眠りにつくかと思ったわ!」
「それなら、死ぬ時に甦る方法も教えといてくださいよ!?」
「なに!? 逆ギレ!? 私のことを殺したくせに!?」
「自分で刺したんでしょうが!?」
10年ぶりに再会してもシューとエクレアは仲良しだった。
「まあ、いいわ。エクレア食べ放題に免じて許してあげよう。」
「どこがいいんですか!? まったく無茶苦茶なんだから。」
二人のテンションが下がったところで本題に入る。
「エクレアを美味しく食べるためにやることが一つあるわ。」
「はい。あいつだけは許せない!」
ついにシューとエクレアは冥界の底の世界、奈落を脱出する。

「天に居られる神は、これで天界と冥界を治めることができた。他の世界も手に入れるのは時間の問題だな。」
エリュシオンでは冥界の審判者となったアダイブ・シャンゼリゼが勝利に酔いしれていた。
「おまえの思い通りにはさせないぞ!」
「ば、バカな!? 確かに奈落に落としたはず!? 奈落から脱出するなど不可能なはずだ!? いったいどうやって奈落から出てきた!?」
シューとエクレアが現れた。
「奈落なんてどうってことないわ! エクレアを食べるためなら、奈落だろうが、地獄だろうが這い上がってくるわよ!」
「あの・・・エクレアさんは黙っていてもらえませんか。」
エクレアは前に前に出しゃばる。
「なんだ? この気違いな女は?」
「ごめんなさい。ごめんなさい。」
アダイブ・シャンゼリゼに尋ねられたシューはエクレアの奇行を謝るしかできない。
「また奈落に送り返してやろう。」
「こい! 奈落に落ちるのはおまえだ! アダイブ!」
仕切り直してシューとアダイブ・シャンゼリゼの戦いが始まった。
「冥界の審判者として裁く! 生身の人間の分際でエリュシオンを汚した罪で、おまえは永遠に奈落行きだ! ヘル・ドロップ!」
アダイブ・シャンゼリゼが元の冥界の審判官のラダマンテュス、ミーノース、アイアコスから血を吸いあげて殺し、手に入れた冥界の審判者の地位を悪用して、シューを再び霧に覆われた暗闇の世界に落とそうとする。
「私に歯向かったことを奈落で反省するがいい。」
自分は勝ったと思い余裕のアダイブ・シャンゼリゼ。
「誰が奈落で反省するって?」
シューはアダイブ・シャンゼリゼの放った必殺技を受けてもビクともしていなかった。
「なんだと!?」
アダイブ・シャンゼリゼは冥界の審判者である自分が決めたとおりに事が進まないのが理解できなかった。
「今度は修道士として僕がおまえを裁く番だ。アダイブ、おまえに殺された人々の無念を晴らすためにも、血の奈落へ誘ってやる!」
「血の奈落だと!?」
「ブラッディ・タルタロス!」
アダイブ・シャンゼリゼの全身を赤い闇が襲う。
「な、なんだ!? これは!? な!? 血!? 血だというのか!? うわあ!? 私は、私は冥界の審判者だぞ!? うわあああ!?」
アダイブ・シャンゼリゼは血でできた赤い暗闇に呑み込まれて消えていく。
「恨むんなら、私がエクレアを食べることを邪魔したことを恨むんだな。」
「エクレアさんは何もしてないでしょうが!?」
「そうだっけ?」
可愛く惚けるエクレア。
「さあ! 人間界にエクレアを食べに戻ろう!」
「まだです。剣が共鳴している。」
シューの剣、ブラッディソード・エクレアに血を吸われた何者かが現れる。
「来ます! あなたは・・・冥王ハーデース!?」
そこにハーデースが現れる。
「やあ、模造品を倒したんだね。エクレア少年。今回は冥界のことで大変迷惑をかけた。お詫びにお茶に招待したいんだが、どうかな?」
神妙で何を考えているのか分からないハーデースからお茶を誘われる。
「シュー。なんだか嫌な感じがするわ。」
「そうですね。冥界のことを知り過ぎた僕たちを地上には返さないつもりかもしれませんね。」
シューとエクレアは身構える。
「暖かい紅茶と美味しい冥界エクレアを用意しているんだがな。」
「エクレア!?」
エクレアと聞いて、エクレアさんの目の色が変わる。
「行きます! どこまでもついて行きます!」
「ええ!? エクレアさん!?」
エクレアに呆れるシュー。こうしてハーデース主催のお茶会に行くことになった。

つづく。
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