茶店の歌姫4

渋谷かな

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エヘッ! 17

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「面白いに拘らない内容だったらどうだろう?」
 逆説的に考えてみた。
「・・・・・・誰も見ないな。」
 7月スタートのアニメも、ほぼ全滅。
「作品を売るのは難しい。」
 同じ内容の繰り返しでもガンダム、仮面ライダー、ラブライブと1回は売れた作品を繰り返した方が製作サイドも儲かりやすい。ただし、どれももう見なくても良いレベル。だって同じ内容の繰り返しだもの。
「再放送の方が面白い。若しくは見れる。」
 北斗の拳、ダイ、らんま、Zガンダム、ガラスの仮面、キャプテンなど。テレビ神奈川がんばってるな。偉い。
「今の作品と何が違うんだろう?」
 昔の作品は単純で分かりやすいので面白い。最近の作品は混沌、人を殺し過ぎで分かりにくいので面白くない。それが全て。今の作品を作っている大人の精神状態にも問題があるのだろう。それを見て育つ子供も将来は怖くならないか心配だ。
「コネも自費出版するおかねもないし、自己満足で頑張ろう。」
 出版業界って大人の事情がないと、まず難しい業界だね。
「仮面ライダー的にいえば、最後はライダーキックで終われば、仮面ライダーなのだ! らしい。」
 茶店の歌姫も最後、おみっちゃんが歌を歌って終われば茶店の歌姫なのだ! でいこう。

「ええー!? 女将さんどうしたんですか!? 熱でもあるんですか!?」
 おみっちゃんが驚いた。
「少し貯まったお金でハワイに海外旅行に行くんだ。イヒッ!」
 女将さんが海外旅行に行くので茶店を休むという。
「こりゃあ、明日は雪だわ。雪だるまを作って遊ぶんだ! エヘッ!」
 天変地異を予想するおみっちゃん。
「こらこら。私はいったいどういう扱いだ?」
 女将さんは悩む。
「まあ、おみっちゃんも茶店が休みの間は自由に過ごすんだね。」
 女将さんはおみっちゃんに休みをくれた。
「ええー!? 私はハワイに連れて行ってくれないんですか!?」
 おみっちゃんも実はハワイに行きたかった。
「行ってもいいけど、お江戸に行くお金が減っちゃうよ。それでもいいのかい?」
 脅す女将さん。
「うっ!? それはダメです!? ハワイは諦めます・・・・・・。」
 おみっちゃんは夢のためにハワイは諦めた。
「じゃあね。お土産はモヤイ像を買ってきてやるよ。イヒッ!」
 女将さんはキャリーバッグを引きながら海外旅行に出かけた。
「それってハワイじゃなくて、イースター島じゃ・・・・・・。」
 おみっちゃんのツッコミは空をきる。
「休みか? 何をして暮らそうかな? そういえば休みなんて初めてだな。」
 茶店の歌姫、休日編が始める。

「ずっと茶店でバイトしてきたから私に青春も無かったな。まるで女子高だ。」
 不幸な女子高校生。
「結局、タイトルは同じでシリーズモノにしておけば、視聴者も分かりやすいから見やすいだろ。」
 ガンダムや仮面ライダー、ラブライブみたいなものを目指す茶店の歌姫。
「要するに最後は私がライダーキックのように歌を歌って終われば茶店の歌姫シリーズになるのだ。」
 これラブライブ的に考えると、茶店の歌姫を毎回変えればいいだけ。
「そうか! 私が引退して次の茶店の歌姫に引き継げばいいんだ! エヘッ!」
 サガの皇帝引継ぎシステムを導入しようとするエヘ幽霊。
「タイトルは茶店の歌姫Zとか、茶店の歌姫ZZとかでいいや。茶店の歌姫アクアとかもありだな。」
 夢は小学生向け。エロは変態向け。それがラブライブだ。
「既存アニメの製作サイドのプロがへばったり、二匹目のドジョウを狙ったものと同じレベルになってしまった。」
 優秀。

「私の名前はおみっちゃん! 夢はお江戸で歌姫になることです! エヘッ!」
 先に自己紹介をしてみたエヘ幽霊。
「いらっしゃいませ! 美味しい! 美味しい! お茶とお団子ですよ!」
 おみっちゃんは夢を叶えるために茶店でアルバイトをしている。
「よし! せっかくのお休みだ! 茶店を離れて冒険に出かけよう! エヘッ!」
 お出かけすることに決めたエヘ幽霊。
「丁度、行ってみたいところがあったのよね。」
 お出かけするおみっちゃん。
「じゃん! 着きました! エヘ遊園地!」
 おみっちゃんは遊園地に行ってみたかった。
「早速、遊びます! エヘッ!」
 おみっちゃんは観覧車やジェットコースターに乗って大喜び。
「わ~い! 遊園地! 楽しいな!」
 そしてメインイベントにたどり着く。
「一度、入ってみたかったのよね。お化け屋敷。エヘッ!」
 おみっちゃんが行きたかったのはお化け屋敷であった。

「幽霊1枚下さい。」
 まずはチケット売り場で入場券を買う。
「え!?」
 戸惑うチケット売り場のおばちゃん。
「あ、違った。大人1枚下さい。エヘッ!」
 笑って誤魔化すエヘ幽霊。
「さあ! 同胞に会いに行こう!」
 おみっちゃんはお化け屋敷の中に入っていく。
「真っ暗だな。これじゃあ前が見えないよ。ライト・アイ!」
 おみっちゃんの目は暗闇で光る。
「明るくなった。これなら進めるね。エヘッ!」
 おみっちゃんはお化け屋敷を進んでいく。
「ガオー!」
 そこにお化けが現れる。
「出た! 私のお友達だ! わ~い! 仲良くしよう!」
 フレンドリーなおみっちゃん。
「え? 驚いてくれないの。」
 お化けを演じる人間はショックを受ける。
「なんで驚くのよ。私も幽霊だもの。ほれ、足も無い。」
 おみっちゃんは幽霊なので術を使わない限り足は無い。
「ギャアアアアアアー! 足が無い! お化け!」
 お化けは驚いて逃げて行った。
「酷い。あんたも幽霊だろうに。ブー」
 ご機嫌斜めなおみっちゃん。
「まあ、幽霊がお化け屋敷に行くお話もよくあると思うけど、実際に行ったらこんなものか。エヘッ!」
 納得できてしまうエヘ幽霊。

「そうね。よくお化け屋敷では痴漢が出るというけれど。」
 お化け屋敷の痴漢の多くは夏だけの短期バイトで働いている男のアルバイト従業員らしい。
「おお! 若い女がやって来た! 俺はお化けだから体を触りたい放題だ! キャッホー!」
 こういうアホが多い。人手不足なので遊園地の面接もいい加減である。
「まあ、いいっか。私、幽霊だから普通の人間には触れることもできないし。エヘッ!」
 幽霊のスキル。スルーを自動発生させるエヘ幽霊。
「なぜだ!? なぜ女の子の体に触れることができないんだ!? うおおおおおー!」
 オオカミの叫び声だけが木霊する。
「それはね。私が本物の幽霊だからです。ほら、体も透明にできるしね。エヘッ!」
 幽霊スキルのステルスを使うエヘ幽霊。
「ギャアアアアアアー! お化け!? お化けが出たぞ! 助けて! お母さん!」
 変態アルバイトはそれっきりお化け屋敷に来なくなったそうな。
「お化け屋敷に幽霊が出るのは当たり前だろう。情けない。最近の若い者は。」
 遊園地の偉い人は普通に思った。
「あの、私、アルバイトで雇ってもらえませんか?」
 おみっちゃんは尋ねてみた。
「いいよ。丁度、若いもんがやめて困っていたんだ。」
 驚かせてやめさせたのはおみっちゃんです。
「やったー! 新しいアルバイトが決まったぞ! わ~い!」
 アルバイトすら無い時代にバイトをあっさり決められるおみっちゃん。
「日本一の・・・・・・いいえ。全宇宙一のお化け屋敷にして見せます! エヘッ!」
 茶店の歌姫からお化け屋敷の歌姫に転職するエヘ幽霊。若しくは茶店の歌姫、お化け屋敷でダブルワークするの巻が始まる。

「恨めしや~。」
 おみっちゃんはお化け屋敷の幽霊として働いていた。
「こわ飯屋~。冷や飯や~。なんかラーメンも食べたくなってきたな。エヘッ!」
 幽霊なので本当は食欲はないはずのエヘ幽霊。
「キャアアアアアアー!」
 お客さんはおみっちゃんを見て恐怖で逃げ去っていく。
「なんて寒いギャグなんだ!?」
 違う意味で。
「すごいリアルな幽霊だったな。」
「そうね。可愛かったし。」
 カップルにも大人気。
「褒められちった。やっぱりお化け屋敷は私には転職ね。エヘッ!」
 だってエヘ幽霊は幽霊だもの。
「キャアアアアアアー! 死ぬかと思った!?」
 そして、お化け屋敷の一番最後にあの世が見える歌が流れると大評判になった。
「そのデスボイスをスマホで録音してSNSに投稿すると聞いた人は呪われるんだって!?」
 正に呪われているお化け屋敷。
「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」
 お化け屋敷の出口ではおみっちゃんの生歌が聞ける特典付き。
「ご清聴ありがとうございました! ああ~気持ち良かった! エヘッ!」
 もちろん人間を殺さない程度にボリュームは絞ってあるエヘ幽霊。
「しまった!? タイトルはお化け屋敷の歌姫でも良かったな。エヘッ!」
 本気で転職を考えるエヘ幽霊。

「私一人でお化け屋敷でお客さんを驚かすのも疲れて大変だな。お友達を呼ん手伝ってもらおう。」
 おみっちゃんはお友達を呼ぶことにした。
「ということで、ガッキーよろしくね。」
「はい! ここが人間食べ放題の会場ですか? アハッ!」 
 現れたのは餓鬼のガッキー。
「おまえ! 人間を食うなよ! 私が遊園地の園長さんに怒られるだろうが!」
 一応、注意するおみっちゃん。
「ええ~食べたらダメなの。面白くない。ブーブー!」
 不満なガッキー。
「分かった。しゃぶるまでは許してやろう。」
 真ん中で妥協する友達思いのおみっちゃん。
「やったー! さすがおみっちゃん!」
 しゃぶれるので喜ぶガッキー。
「私は可愛くて優しいんです。エヘッ!」
 自画自賛なエヘ幽霊。
「ギャアアアアアアー! なめられた!」
 こうしてお化け屋敷で人間をしゃぶりまくるガッキー。
「快感~。」
 気持ち良かったお客さんたちは男女問わず何度もガッキーを求めてお化け屋敷のリピーターになった。
「お化け屋敷経営も面白いな。そうか。私は茶店に拘らずに色々な所で働けばいいのか。エヘッ!」
 戦闘に拘らなければ何でもできることに気づいたエヘ幽霊。

「ドンドン仲間を呼んで、お化け屋敷を成長させていこう。エヘッ!」
 経営手腕が素晴らしいエヘ幽霊。
「天狗さん。遊園地のエネルギを風力と火力に変えたいの。お化け屋敷にも竜巻ゾーンと火あぶりゾーンを作ってほしいの。」
 地球に優しいおみっちゃん。
「任せておいて! それ! 風よ吹け! 火よ燃えろ!」
 天狗のおかげでお化け屋敷に台風が体験できる、火事も体験できるようになった。
「台風と火事が体験出来てお得だね。」
 お客様の評判は上々。
「河童さん。遊園地で巨大プールを作ってちょうだい。ただし水道代はタダにしてほしいの。」
 今度は河童を呼び寄せたおみっちゃん。
「いいよ。おみっちゃんの歌を聞かされるぐらいなら、プールを作るぐらい簡単さ。」
 河童は何も言われていないがおみっちゃんには歯向かえない。
「わ~い! 巨大プールができちゃった! エヘッ!」
 あっという間に流れるプールや巨大なウォータースライダーが完成した。
「でも、プールの運営は痴漢や盗撮が不安よね。私、カワイイから狙われちゃう。エヘッ!」
 乙女の心配をするエヘ幽霊。
「大丈夫! 悪い奴は見つけたら肝を抜き取ってオカマにしてやるから!」
 頼もしい河童さん。
「ありがとう。捕まえたらガッキーのエサにしてね。あの子、お腹空いてるから。」
 しゃぶるだけで禁欲ならぬ禁食生活で耐えているガッキー。
「こうやって設定に拘らずに自由に想像するとネタに尽きないわね。最初っからこうしておけばよかった。エヘッ!」
 疑問や欺瞞、愚痴を書くより、少し設定を変えて創作すれば話には困らないのかもしれない。
「おみっちゃん、ありがとう。おかげで我がエヘ遊園地は世界一の遊園地になったよ。」
 ディズニーやUSJを超えた売り上げと入園数のエヘ遊園地。
「これも可愛い私のおかげですね。エヘッ!」
 決して謙遜しないエヘ幽霊。
「今度は何屋さんにしようかな? 魚屋さん? 海に魚を釣りに行く所から始めないと。八百屋さん? 野菜を育てる所から始めないと。林業さん? 木を植える所から始めないと。映画館さん? 映画を製作する所から始めないと。やっぱりマクドナルドでポテトでも揚げますか。エヘッ!」
 最後は食い気が勝ったエヘ幽霊。
 つづく。
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