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死
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「おはようございます。お父様、お母様。」
「おはよう。叶。」
「あら? 叶さんは今日は早いのね。」
「は、はあ。」
「おはようございます。心お兄様。」
「おはよう。叶。」
「おはよう。月。」
「おはようございます。叶お兄様。」
僕は普段通り家族の待つ食卓に行く。そして家族と挨拶をかわす。いつもと同じ朝の光景だった。その時、父親の勝のスマホが鳴った。
「なんだ? 電話か。もしもし。な、なに!? 高校で殺人事件だと!? 警察も来ているだと!? 分かった。直ぐに向かう。」
「あなた、何かあったんですか?」
「高校で生徒が死んだらしい。」
「ええ!?」
「私は学校に向かう。」
「あなた、気をつけて行ってらっしゃいませ。」
父親にかかってきた電話は、僕の通う夢見高校で、生徒の誰かが死んだというものだった。直ぐに出かける父を母が見送る。
「叶、今日は学校は休んだ方がいいんじゃないか?」
「大丈夫だよ。心兄さん。」
「私、知ってる。中学もだけど、高校もかなり荒れてるんだって。ヤンキーとか、不良とか、いじめとかが流行ってるって、みんな噂してるよ。」
「おまえ、よく知ってるな。」
「だって私は夢見グループのお嬢様。教師も生徒も、私に歯向かって、クビや退学にはなりたくないでしょう。みんな、私に頭を下げてくるわよ。」
兄の僕と妹の月は、なぜ同じような環境で、全く違う人生を送っているんだ? いえることは、僕は大人しく自己主張しない。一方の月は、お嬢様気質で、我がままで自分勝手。親の会社の名前を使って、教師に生徒を脅迫なんか普通にやっているだろう。うらやましい。
「こ、これは!?」
僕は学校に着いた。生徒が死んだとされる現場は、ブルーシートで覆われていた。僕は警察と話をしている父を見つけたので、父に話しかけるフリをして、ブルーシートの中をそーっと覗いた。
「火油!?」
僕は死体を見て驚いた。いじめっ子の火油注だった。遺体の傷は悲惨で、何かに斬られたように大きな切り傷から、体全体から血が噴き出している。
「こら! 学生が勝手に入って来てはダメだ!」
「あれは私の息子です。」
「失礼しました。」
父、夢見勝は警察を制する。お金持ちの権力は地元の警察署長ともコネがあるのだろう。
「叶。この生徒を知っているのか?」
「はい、お父様。」
「よっぽど恨まれていたんだろうな。でなければ、こんな残虐な殺され方はしないだろう。」
「この生徒は、いじめっ子グループのリーダーです。」
本当は僕をいじめていたいじめっ子と言いたかった。でも、自分がいじめられていたということの恥ずかしさ。父には知られたくないという思い。そして、何よりも、死んだコイツに関わりたくないという気持ちが一番強かった。
「いじめっ子か、死んで当然だな。学校の名前を汚すゴキブリだから。」
「はい。そうですね。お父様。」
不思議と僕の心には、火油が死んで「ざまあみさらせ!」という、スッキリとした気持ちはなかった。いじめられていた僕にあったのは「可哀そう。」という、自分をいじめていた相手なのに、実は自分の方が上から見ていたという事実だった。
「いったい誰が火油を殺したんだろう?」
こうして僕の世界は平和になった。
つづく。
「おはよう。叶。」
「あら? 叶さんは今日は早いのね。」
「は、はあ。」
「おはようございます。心お兄様。」
「おはよう。叶。」
「おはよう。月。」
「おはようございます。叶お兄様。」
僕は普段通り家族の待つ食卓に行く。そして家族と挨拶をかわす。いつもと同じ朝の光景だった。その時、父親の勝のスマホが鳴った。
「なんだ? 電話か。もしもし。な、なに!? 高校で殺人事件だと!? 警察も来ているだと!? 分かった。直ぐに向かう。」
「あなた、何かあったんですか?」
「高校で生徒が死んだらしい。」
「ええ!?」
「私は学校に向かう。」
「あなた、気をつけて行ってらっしゃいませ。」
父親にかかってきた電話は、僕の通う夢見高校で、生徒の誰かが死んだというものだった。直ぐに出かける父を母が見送る。
「叶、今日は学校は休んだ方がいいんじゃないか?」
「大丈夫だよ。心兄さん。」
「私、知ってる。中学もだけど、高校もかなり荒れてるんだって。ヤンキーとか、不良とか、いじめとかが流行ってるって、みんな噂してるよ。」
「おまえ、よく知ってるな。」
「だって私は夢見グループのお嬢様。教師も生徒も、私に歯向かって、クビや退学にはなりたくないでしょう。みんな、私に頭を下げてくるわよ。」
兄の僕と妹の月は、なぜ同じような環境で、全く違う人生を送っているんだ? いえることは、僕は大人しく自己主張しない。一方の月は、お嬢様気質で、我がままで自分勝手。親の会社の名前を使って、教師に生徒を脅迫なんか普通にやっているだろう。うらやましい。
「こ、これは!?」
僕は学校に着いた。生徒が死んだとされる現場は、ブルーシートで覆われていた。僕は警察と話をしている父を見つけたので、父に話しかけるフリをして、ブルーシートの中をそーっと覗いた。
「火油!?」
僕は死体を見て驚いた。いじめっ子の火油注だった。遺体の傷は悲惨で、何かに斬られたように大きな切り傷から、体全体から血が噴き出している。
「こら! 学生が勝手に入って来てはダメだ!」
「あれは私の息子です。」
「失礼しました。」
父、夢見勝は警察を制する。お金持ちの権力は地元の警察署長ともコネがあるのだろう。
「叶。この生徒を知っているのか?」
「はい、お父様。」
「よっぽど恨まれていたんだろうな。でなければ、こんな残虐な殺され方はしないだろう。」
「この生徒は、いじめっ子グループのリーダーです。」
本当は僕をいじめていたいじめっ子と言いたかった。でも、自分がいじめられていたということの恥ずかしさ。父には知られたくないという思い。そして、何よりも、死んだコイツに関わりたくないという気持ちが一番強かった。
「いじめっ子か、死んで当然だな。学校の名前を汚すゴキブリだから。」
「はい。そうですね。お父様。」
不思議と僕の心には、火油が死んで「ざまあみさらせ!」という、スッキリとした気持ちはなかった。いじめられていた僕にあったのは「可哀そう。」という、自分をいじめていた相手なのに、実は自分の方が上から見ていたという事実だった。
「いったい誰が火油を殺したんだろう?」
こうして僕の世界は平和になった。
つづく。
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