剣物語

渋谷かな

文字の大きさ
10 / 78

実験

しおりを挟む
「ひえええー!? 助けてくれ!?」
 僕は夜、ベットで眠ることで、再びゲームの世界、夢の世界、剣物語の世界にやって来た。そして僕は昼間、学校で導き出した、一つの仮定を確かめるために実験することにした。
「私が何をしたというんですか!? 私は、ただ妻と子供と幸せに暮らしているだけなのに!?」
「幸せ?」
 僕の剣を握る手に力がこもる。僕のことをいじめておいて、こいつは結婚したり、子供がいたり、幸せに暮らしていると言う。いじめっ子が幸せに暮らしていいのか? そんな権利がゴミ以下の存在のこいつらにあるというのか? そんなことが許されていいのか? 許されて良い訳がない。
「おまえに幸せを語る資格はない!」
「ギャア!」
 僕は幸せな人間を一人殺した。これは僕の仮説に基づく検証である。もし、この剣物語の世界で、現実にいる人間と同じ顔の人間を殺す。もし現実世界で火油が死んだのが、僕が異世界で火油と似た騎士を殺したことが原因であるならば、この顔は知っていても名前は知らない幸せな人間は、現実世界では僕をいじめていた不良グループの一人として、明日、学校で死んでいるだろう。
「夢から覚めれば、全てが分かる。この夢の世界と、現実世界の関連性が。」
 人生はおもしろい。いや、ゲームは面白い。救世主として、召喚されたはずの僕が人を殺している。この世界の人々には現実世界の記憶は無いのに。もしかしたら僕は、この世界では罪のない人々だけど、現実世界では罪を犯している人々を殺そうとしている。
「あと4人は殺したい。」
 これは夢。僕の夢の世界だ。せめて夢の中だけは、僕は僕の生きたいように行動する。これも僕の騎士の鎧が、夢を司るナイト・アーマーだからなのか。僕は夢を見るだけでなく、自分の望む夢を叶える力があるに違いない。
「これは夢であり、夢でない。でも僕は悪くない。今まで、いじめに耐えに耐えてきた僕に対するご褒美だ。僕にも生きる権利はあるんだ!」
 歪んだ形で目覚めた僕の自我。悪い者を倒している。正しいことをしている。それでも人殺しは人殺しであった。それは危険なものだった。どんどん心が血で黒く染まっていく。
「夢移動(ドリーム・ムーブ)。」
 僕は他人の夢の中を移動できるみたいだ。これも夢の剣騎士の特殊能力なのだろう。僕は人を探すのではなく、願えば探していた人の夢にたどり着けた。
「ギャア!」
「ウギャ!」
「ドピュ!」
「アベシ!」
 一晩あれば十分だった。夢と夢を移動する僕は一晩で、現実世界の僕をいじめていた連中を殺しきった。僕には恨みを晴らしたという喜びはなく、あったのは、人を殺しまくったという、普通の人間がしてはいけないことをしているという高揚感だけだった。
「目を覚ますのが楽しみだ。」
 これで僕は平和に学校生活を過ごせる。これはあくまでも夢の世界で人を殺しているだけなので、現実世界では殺していないので、僕に罪悪感は無かった。ただ、夢で殺せば、現実で死なすことができるという可能性からくる、確信犯的な行動ではあった。
 つづく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

【1話完結】あなたの恋人は毎夜わたしのベッドで寝てますよ。

ariya
ファンタジー
ソフィア・ラテットは、婚約者アレックスから疎まれていた。 彼の傍らには、いつも愛らしい恋人リリアンヌ。 婚約者の立場として注意しても、アレックスは聞く耳を持たない。 そして迎えた学園卒業パーティー。 ソフィアは公衆の面前で婚約破棄を言い渡される。 ガッツポーズを決めるリリアンヌ。 そのままアレックスに飛び込むかと思いきや―― 彼女が抱きついた先は、ソフィアだった。

処理中です...