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音楽の授業
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「ひよこの歌が聞こえてくるよ。ピヨピヨピヨピヨ、ピヨピヨ、ピピピ。」
僕は、父の経営する高校、夢見学園に在学している。高校一年生なのに、音楽の時間で歌う歌は「ヒヨコの歌」であった。
「なあ、鈴木。」
「なんだよ? 夢見。」
「僕たちは高校生だよな。」
「そうだけど、今更、どうした?」
「なぜ、ヒヨコの歌など、恥ずかしい歌を歌わなければいけない?」
「仕方がないだろう。それが音楽の授業だ。」
「そういうものか? おまえたちはどう思う?」
僕は、鈴木だけでなく、友達の高橋、田中、渡辺、山本、中村にも聞いてみた。
「イベントする時に困るだろ。私たちはアイドルではないからな。」
「そうそう。異世界ファンタジーとした場合、アイドル設定はおかしいからな。」
「アイドル、ブラスバンド、オーケストラ、軽音部、ライブハウス、ヴィジュアル系ロック等、百人一首は、私たちに無理だ。」
「油ギッシュな手でいいなら、カワイイ女の子と握手会はしたい!」
「苦肉の策が、音楽の授業だ。これでイベント、コンサート、CD、DVDなど、ラジオ出演等が可能になる。これからの主流は、音楽の授業だ! ワッハッハー!」
「アニメやアイドルオタクの、おまえたちに聞いた僕がバカだった。」
普通に作品やキャラクターが好きという者もいる。しかし好き過ぎて、どうすれば売れるのか? とマーケティングやセールス方法を検討する者もいる。それがアイドルやアニメのオタクだ。
「夢見、あいつらを見てみろ。」
「んん?」
鈴木は、前の席に座る生徒たちを指さす。伊藤、小林、加藤、吉田、山田、佐々木、山口の優等生たちであった。
「カー。」
「カー。」
「カー。」
「カラスの歌が聞こえてくるよ。カカカカカカカカ、カーカーカー、カ。」
伊藤たちは「カラスの歌」を指パッチンしながら、アカペラで歌ってみせる。
「これが本当に音楽の授業かよ!?」
「カッコイイ!」
「感心すな! んん? ピアノの音色が聞こえてくる。」
そして、今度はピアノの音色が聞こえてくる。ジャズだ。ピアノでジャズを演奏している。
「伝家宝刀!?」
「カッコイイ!」
意外にも教師の伝家宝刀がピアノの演奏をしている。
「佐藤!?」
クラスメートの佐藤美姫が、なぜか前に立ち一人で歌を歌い始める。
「夢。あなたに夢はありますか? 夢を見たいと思いませんか? もし夢が見つかったなら叶えたいと思いませんか? さあ! 一緒に素晴らしい夢の世界へ行きましょう! ドリーム・イン・ザ・ワールド~。」
きれいな歌声だった。いや、まさに歌姫だ。僕たちは佐藤の歌声に全てを忘れ、心地良い夢の世界に誘われる。伊藤たちや伝家宝刀のアカペラやピアノはどうでもよかった。
「夢の世界では、あなたを苦しめる者はいない。全てがあなたの思う通り。やりたいことをやってください。誰も邪魔しないから。誰もダメって言わないから。あなたは、あなたのままでいいんですよ。ドリーム・イン・ザ・ワールド~。」
「素敵だ。」
僕たちは佐藤の歌声に歌の持つ人間に与える影響をもろに受けていた。授業を忘れ、嫌なことを忘れ、歌を聞いている間だけは、本当に夢の世界にいるみたいだった。
「目が覚めたら、お別れね。でも、私は待っています。もしあなたが、また現実に疲れたなら、いつでも眠ってね。そうすれば私は待っているから。この夢の世界で。ドリーム・イン・ザ・ワールド~。」
佐藤が「夢の歌」を歌い終えた。感動した生徒たちがスタンディングオベーションで迎えると思われた。
「zzz。」
しかし、その場にいた全員が眠りにつき、夢の世界へ旅立っていた。
「キーンコーンカーンコーン。」
音楽の授業はベルと共に終わり、佐藤だけが次の授業に向かった。当然、眠っている他の生徒は、次の授業に遅刻した。
つづく。
僕は、父の経営する高校、夢見学園に在学している。高校一年生なのに、音楽の時間で歌う歌は「ヒヨコの歌」であった。
「なあ、鈴木。」
「なんだよ? 夢見。」
「僕たちは高校生だよな。」
「そうだけど、今更、どうした?」
「なぜ、ヒヨコの歌など、恥ずかしい歌を歌わなければいけない?」
「仕方がないだろう。それが音楽の授業だ。」
「そういうものか? おまえたちはどう思う?」
僕は、鈴木だけでなく、友達の高橋、田中、渡辺、山本、中村にも聞いてみた。
「イベントする時に困るだろ。私たちはアイドルではないからな。」
「そうそう。異世界ファンタジーとした場合、アイドル設定はおかしいからな。」
「アイドル、ブラスバンド、オーケストラ、軽音部、ライブハウス、ヴィジュアル系ロック等、百人一首は、私たちに無理だ。」
「油ギッシュな手でいいなら、カワイイ女の子と握手会はしたい!」
「苦肉の策が、音楽の授業だ。これでイベント、コンサート、CD、DVDなど、ラジオ出演等が可能になる。これからの主流は、音楽の授業だ! ワッハッハー!」
「アニメやアイドルオタクの、おまえたちに聞いた僕がバカだった。」
普通に作品やキャラクターが好きという者もいる。しかし好き過ぎて、どうすれば売れるのか? とマーケティングやセールス方法を検討する者もいる。それがアイドルやアニメのオタクだ。
「夢見、あいつらを見てみろ。」
「んん?」
鈴木は、前の席に座る生徒たちを指さす。伊藤、小林、加藤、吉田、山田、佐々木、山口の優等生たちであった。
「カー。」
「カー。」
「カー。」
「カラスの歌が聞こえてくるよ。カカカカカカカカ、カーカーカー、カ。」
伊藤たちは「カラスの歌」を指パッチンしながら、アカペラで歌ってみせる。
「これが本当に音楽の授業かよ!?」
「カッコイイ!」
「感心すな! んん? ピアノの音色が聞こえてくる。」
そして、今度はピアノの音色が聞こえてくる。ジャズだ。ピアノでジャズを演奏している。
「伝家宝刀!?」
「カッコイイ!」
意外にも教師の伝家宝刀がピアノの演奏をしている。
「佐藤!?」
クラスメートの佐藤美姫が、なぜか前に立ち一人で歌を歌い始める。
「夢。あなたに夢はありますか? 夢を見たいと思いませんか? もし夢が見つかったなら叶えたいと思いませんか? さあ! 一緒に素晴らしい夢の世界へ行きましょう! ドリーム・イン・ザ・ワールド~。」
きれいな歌声だった。いや、まさに歌姫だ。僕たちは佐藤の歌声に全てを忘れ、心地良い夢の世界に誘われる。伊藤たちや伝家宝刀のアカペラやピアノはどうでもよかった。
「夢の世界では、あなたを苦しめる者はいない。全てがあなたの思う通り。やりたいことをやってください。誰も邪魔しないから。誰もダメって言わないから。あなたは、あなたのままでいいんですよ。ドリーム・イン・ザ・ワールド~。」
「素敵だ。」
僕たちは佐藤の歌声に歌の持つ人間に与える影響をもろに受けていた。授業を忘れ、嫌なことを忘れ、歌を聞いている間だけは、本当に夢の世界にいるみたいだった。
「目が覚めたら、お別れね。でも、私は待っています。もしあなたが、また現実に疲れたなら、いつでも眠ってね。そうすれば私は待っているから。この夢の世界で。ドリーム・イン・ザ・ワールド~。」
佐藤が「夢の歌」を歌い終えた。感動した生徒たちがスタンディングオベーションで迎えると思われた。
「zzz。」
しかし、その場にいた全員が眠りにつき、夢の世界へ旅立っていた。
「キーンコーンカーンコーン。」
音楽の授業はベルと共に終わり、佐藤だけが次の授業に向かった。当然、眠っている他の生徒は、次の授業に遅刻した。
つづく。
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