最強の歯科助手、みなみちゃん4

渋谷かな

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「億劫だな。」
美代先生が愚痴っている。
「どうしたんですか? 先生。」
「キュル?」
いつものように歯科助手とパンダが現れる。
「なんだか毎日、小説に書かれるのが億劫で。」
これが美代先生が億劫な理由である。
「仕事だから仕方がないですよ。」
「キュル。」
慰めてくれる歯科助手とパンダ。みんな、そう言いながら、体を壊すまで会社の成長、経営者に舞い込む大金のために使い捨てのボロ雑巾になるまで働かされている。辞めたら、おしまいの世界である。会社に残っても地獄である。
「小説書いても、コネがなければ拾い上げしてもらえる訳も無く。コネ持ちは書籍化して爆死しても、何度でも出版させてもらえるんだから、世の中って理不尽だね。」
美代先生が愚痴りたくなる気も分からなくはない。
「コンテストって言ったって、最初から大賞者が決まっていることが多いし、ランキングも人がいないのに異常な数のアクセス数やポイントばかり、運営か個人の不正しかランキング上位にはなれないネット小説投稿サイトがほとんど。」
美代先生は不貞腐れている。
「美代先生、何を言ってるんですか? それが世の中ですよ。子供みたいなことを言わないで下さい。」
「キュル。」
「すいません。」
歯科助手とパンダに怒られる歯科医師。
「さあ! 仕事ですよ! 仕事! 外には患者さんがたくさん待っているんですから!」
「キュル。」
「は~い・・・。」
サボることを諦めた歯科医師。ここまでくると、書きたいから書いているというレベルではなく、普通でも書き続けられることの大切さに気付く。でなければ続けるというのは無理である。そういう意味では、美代先生は優秀なのである。
「次の患者さん、いらっしゃい。」
歯科医師も態度を明るくしてみた。
「ドキドキ。」
次の患者が歯科医院に入って来た。
「歯がドキドキして痛いんです!? 治してください!?」
妙な、いや、正常ではない女子高生がやって来た。
「ギョ!? 頭が痛くなってきた・・・やっぱり今日は休業にしよう。」
「まともな患者さんはやって来ないんですね。」
「キュル。」
ラノベに個性の無い患者が来るはずがない。
「あの・・・お名前は?」
「土器ドキ子。」
「どき!?」
「ドキドキと呼んでください。」
ドキンちゃんは不採用である。
「あ、頭が痛いよ!?」
「美代先生!? 大丈夫ですか!?」
「キュル!?」
さすがの美代先生も倒れ込んだ。
「ドキ、土器、どき、ドキ子だよ! 全員集合!」
「悪魔め!? 仲間を呼ぶ気か!?」
「美代先生!? 動いたらダメですよ!?」
「キュル!?」
かなりノイローゼ気味の歯科医師。
「悪いけど、みなみちゃん。休憩室で横になるから、後よろしく。」
「はい。分かりました。」
「キュル。」
こうして美代先生は、いつもと違うパターンで去って行った。
「ドキ! ドキ! ドッキドキ砲!」
女子高生は口からドキドキの文字を吐き出し、美代歯科医院を破壊し始めた。
「なんという高出力!? おまえはガジラか!?」
「キュル!?」
このままでは、みなみちゃんは働き先を失ってしまう。働いて給料がもらえないと家賃が払えなくなったら、住むところが無くなってしまうのだ。
「ドキ子さん、診察室へ行きましょう!」
みなみちゃんは覚悟を決めて治療することにした。
「は~い。」
患者は笑顔と破壊を振りまいている。
「診察台に座ってください。」
「は~い。かわいいドキ子。みんなをドキドキさせちゃうぞ。ドキドキ。」
「ゴミ・・・。」
会社に一人はいそうなタイプに、みなみちゃんは思わず患者さんにゴミと小さな声で嫌味を言った。患者はアホなので聞こえていない。
「口を大きく開けて下さい。」
みなみちゃんによる虫歯治療が始まった。
「あ~ん。」
「な!? うわああああ!?」
口を開けたドキ子は口の中でドッキドキ砲のエネルギーチャージが完了し、口からドキドキの文字を吐き出した。
「し、死ぬ!? こ、殺される!?」
さすがの最強の歯科助手みなみちゃんも一瞬、生死の境を彷徨った。今までのアホな出来事が走馬灯のように思い出される。
「キュル!?」
なぜか無傷の無敵パンダも心配する。
「ドキドキ! ドキドキ!」
周りの危機は関係ないサイコパスなドキドキ患者。
「このままではいけない! 世界が滅んでしまう!」
遂に我がみなみちゃんが立ち上がった。
「さっさとダイジェスト虫歯治療で終わらせよう!」
「キュル!」
待ってましたと喜ぶパンダ。
「みなみ! いきます!」
「虫歯がドキドキしている!?」
「負けるものか!」
「みなみに治せない虫歯は無い!」
「全身全霊! クリーニング波動砲!」
「ああ! 白い歯って、いいな!」
こうして、僅か100文字で人類滅亡の危機から世界を救ったのである。
「ありがとう。またドキドキしに来るね。」
「二度と来るな!?」
「キュル!?」
こうしてドキドキ患者は去って行った。
「はあ・・・疲れた。」
「キュル・・・。」
歯科助手とパンダは疲れ切っていた。
「お腹空いた。パンパン、カップラーメンでも食べようか?」
「キュル。」
休憩室に移動する歯科助手とパンダ。
「ああ、美味しかった。」
休憩室では仕事をサボっていた美代先生がカップラーメンを食べ尽くしていた。
「み、美代先生!? みなみのラーメンが!?」
「キュル!? キュル!?」
「無いよ。」
大好物のラーメン食べて復活の歯科医師。
「ガーン・・・。」
「キュル・・・。」
こんな歯科医院、絶対に辞めてやると億劫になり固まる歯科助手とパンダであった。

つづく。
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