汚れ無き純粋な瞳の平凡な日常。2 魔法少女育成編

渋谷かな

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谷子、立つ

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 ここは代々木の体育館。渋谷区剣道女子個人戦が行われようとしている。
「渋谷高校剣道部! 団体戦は負けたけど、個人戦は絶対に勝つぞ!」
「おお!」
「ハチ!」
「ハチ!」
「ハチ!」
「ドキ!」
「ハチ!」
「渋谷高校! ハチ公!」
「おお!」
 特色のある渋谷高校の円陣が完成した。
「カワイイ怪獣ちゃんは何の心配もしなくていいんだよ!」
「私たちが絶対に勝たしてみせるからね!」
「まさかお茶に薬を盛られていたなんて!? 不覚。」
 以後、結は試合中の優雅なティータイムは禁止された。
「でも、私、数合わせだけで剣道なんかやったことないんですけど。」
 谷子も楽子、ドキ子同様、剣道の素人である。
「大丈夫。私たちがどこまでも空高く飛ばしてあげるから!」
「そうだ。仲間を信じる心は魔法をより強い絆にしてくれる!」
「もうお茶を飲まない私に油断はない! 必ずあなたを守るから!」
「本当はドキ子が出て、ニューヒロインのシンデレラガールになりたいんだけど、ドッキドキー砲を撃って疲れちゃったから、今回は谷子ちゃんに譲ってあげるわ。」
「みんな、有難迷惑。」
 谷子は本が大好きな女の子なので剣道に興味はない。谷子は軽い芸能活動をしている。谷子が部活動をすれば、現在放送中のNHK教育番組「ほんのおねえさん」の収録に穴が空いてしまうかもしれないのだ。もちろん本が大好きな谷子は、ほんのおねえさんである。多くの仕事関係者とほんのおねえさんのファンに迷惑が掛かってしまう。
「安心したまえ、谷子ちゃん。」
「ゲッ!? プロデューサー!?」
 そこに、ほんのおねえさんのプロデューサーが現れる。
「渋谷区高校剣道の放送は、我がNHKが行っている。もしほんのおねえさんの正体がバレそうなときはCGチームに言って、チコちゃんのように顔を大きくするCGでもリアルタイムで入れさせるよ。」
「そんな、有難迷惑な。」
 谷子は本が好きなだけの女の子である。
「いいね! まさか本だけ好きと思われていた、ほんのおねえさんが、実は剣道の凄腕の女子高生だったなんて。これが話題になり、視聴率も50パーセント越えの国民教育番組になり、ほんのおねえさんは全国の学校の授業に採用、教科書にもほんのおねえさんは掲載される。そしてグッツもバカ売れの完売状態。全世界からほんのおねえさんの生の朗読会の申し込みが殺到。ほんのおねえさんのSNSは大絶賛の大炎上。ほんのおねえさんを仕掛けた敏腕プロデューサーとして、私が取締役になる日も遠くはない! ワッハッハー!」
「なんて自己中な有難迷惑。」
 文字数に余裕があれば、話はこれぐらいは簡単に膨らむ。
「渋谷区高校剣道女子個人戦を始めます。出場者の選手は集まってください。」
 代々木体育館にアナウンスが流れる。
「怪獣ちゃん、がんばってね。」
「うん。栞お姉ちゃん、私の正体に気づいた人間の記憶は全て消してね。」
「うるさいプロデューサーの記憶も消してしまおうか?」
「うう~ん。悪い人ではないんだけどね。何とも言えない。」
「そうよね。これからもスタジオで顔を会わせるもんね。セクハラされてないなら、まあ、いいか。」
「行って来るね。」
 いざ、谷子は戦場に旅立つ。元々は内気だったが、ほんのおねえさんで多くの人の前で仕事をしているの、特に緊張をしなくなった谷子。
「怪獣ちゃんもたくましくなったものね。うるうる。」
 姉の栞は妹の成長を頼もしく感じている。
 一方、その頃、救急車の中。
「大丈夫か!? 楽子!?」
「痛い!? 痛い!? 頭が割れそうだ!? やめろ!?」
 変態教師アンディの支配から解放された楽子は閉じ込めていた嫌な記憶の甦りにもがき苦しんでいた。それを見守る代官山男。

つづく。
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