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渋谷かな

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オリンピック、前夜6

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「4、5才くらいの女の子を知りませんか?」
「女の子? ああ! 本田さんとこの、結ちゃんかしら?」
「結ちゃん?」
「結ちゃんの中学生のお姉ちゃんの真帆ちゃんが、あなたと同じ病気なのよ。」
「白血病なんですか?」
 私は初めて知った。自分以外にも白血病の人がいることを。彼女は入院してから自分の世界にふさぎ込み病室から出ようとすらしなかった。彼女が入院してから始めて知ろうとしたことが、自分のことを「バカ」と言ってくる女の子のことだった。
「あの、真帆ちゃんに会うことはできるんですか?」
「できるけど・・・・・・そうね。きっとあなたが真帆ちゃんに会ってくれたら、真帆ちゃんも喜んでくれるわ。」
 私は気軽に看護婦さんに頼みごとをした。彼女は自分の今後のことも分かっていない。白血病のことも分かっていない。彼女の興味本位の同じ白血病の人間に会ってみたいという行動が、自分の運命を変えることを。

 私は看護婦さんに連れられて、真帆ちゃんの病室に行く。
「真帆ちゃん。大好きな小池選手が来てくれたわよ。あら? 寝てる。」
 真帆ちゃんは眠っていた。ベットに横になっている。頭の髪の毛は薬の副作用なのか丸坊主だった。腕に白血病の治療をしているのか、点滴の針が刺さっていた。
「こ、これが白血病!?」
 彼女には衝撃が強かった。今まで実感の無かった白血病。同じ症状の真帆ちゃんの姿を見て、彼女は初めて白血病は怖い病気なのだと感じた。病気が怖い、自分もああなってしまうのか、と嫌な気持ちに体全身が覆われて怖気づいた。
「あ、私のポスター?」
 真帆ちゃんの病室には彼女のポスターが貼ってあった。
「真帆ちゃんの夢は、小池選手みたいな水泳選手になることなんですって。」
「え?」
「全国大会の切符を初めて獲得したんだけど、白血病になってしまったらしいの。可哀そうにね。」
「そ、そんな!?」
 彼女は初めて死を感じた。彼女には自分と同じ白血病の真帆ちゃんのことが他人事には思えなかった。周囲の人間が今までの態度と豹変してショックを受けた以上の衝撃を受けている。
「真帆ちゃんは大丈夫なんですか!? 真帆ちゃんは助かるんですか!?」
 彼女は真帆ちゃんを心配した。本当は同じ病気の自分も将来たどる真帆ちゃんの姿に怯えたからだ。真帆ちゃんが助かるなら、自分も助かる。そう、彼女は思いたかったのかもしれない。
「真帆ちゃんの骨髄の提供者がいてくれたらね。」
 看護婦さんの言葉に、彼女は泣いていた。どうして涙が出てくるのか、上手に言葉では説明できない。ただ目から涙がこぼれていた。

 つづく。
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