ハリウッド・クエスト 後編

渋谷かな

文字の大きさ
82 / 103

カスピル

しおりを挟む
「無事に逃げれたのはいいけど、どこに行こうかな?」
 地球の神の座を捨てたアースに行く当てはなかったので見つからないように森を身を潜めながら進んでいる。
「冥界のハーデースを頼るか? いや、夫婦仲円満の中に邪魔をしたら、魂を抜かれて死んでしまう!?」
 簡単に神の座は捨てることはできても、せっかくもらった自分の命は大切だったアース。
「なら魔王ネロの元へ行き、ネロの推し進める、モフモフ教に入教するからと言って匿ってもらうか? いや、モフモフ教はゴロゴロ教との宗教戦争を抱えているから、宗教戦争に僕が関わる訳にはいかない!?」
 地球の神の座を捨ててもアースは地球の平和のことを考えている。
「やはりデミの元へ行くべきか? いや、臆病者のデミのことだ。僕の身柄を拘束して神の座に戻すはずだ!?」
 アースは冷静に相手のことを分析して危機を察知していた。
「最後はブラピの所か・・・・・・絶対にダメだ!? クエストばっかりやらされる!? いや、クリスティーナならブラピの魔の手から僕を守ってくれるかもしれない。・・・・・・しかし天界に行く羽が僕にはない。」
 地球の神といっても絶大な権力はなく、ただの象徴にしか過ぎない。地球の神は軍事権を剥奪されている。言ってしまえば、僕は、ただの普通の人間であった。 
「ウエエエエ~ン!!!」
 その時、森で小さな女の子が泣いている。
「迷子かな? お嬢ちゃん大丈夫?」
 僕は優しく声をかけた。
「お家に帰る道が分からないの!? ウエエエエ~ン!!!」
 やはり女の子は迷子だった。
「僕はアース。お嬢ちゃんお名前は?」
「カスピル! ウエエエエ~ン!!!」
 女の子の名前はカルピス。いつまでも泣いているので可哀そうに思った僕は、彼女を家まで送り届けてあげようと思った。
「お嬢ちゃん、お兄さんがお家まで送り届けてあげよう。」
「ダメ! ウエエエエ~ン!!!」
 しかしカルピスは僕の誘いを断る。
「え~っと、どうしてダメなの?」
 僕は気を取り直して質問してみた。
「お姉ちゃんが、知らない人についていってはいけません! ついていったら食べられちゃうぞ! って言ってたもん! ウエエエエ~ン!!!」
「なんとしっかりしたお嬢ちゃんだ!?」
 僕は思わず感心した。この小さな女の子にも、また彼女を教育した親御さんにも。
「カスピル!?」
 きれいな女の人が現れた。
「お姉ちゃん!?」
 どうやら、このきれいな女性がカスピルの家族のようだった。
 つづく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~

菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。 だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。 車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。 あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。

押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました

cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。 そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。 双子の妹、澪に縁談を押し付ける。 両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。 「はじめまして」 そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。 なんてカッコイイ人なの……。 戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。 「澪、キミを探していたんだ」 「キミ以外はいらない」

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

処理中です...