銀河英雄戦艦アトランテスノヴァ

マサノブ

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王家の絆編

PART16 木星奪還指令

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宇宙戦闘機
アローホーク

翼形式 中翼 後退翼
エンジン数 1幾
武装 25mm6基
   AAM 2基
   ASM 2基
全長14、6m
全幅7、0m
全高4、5m

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ハヤテは駆逐艦として地球防衛艦隊に加わり
木星を目指して突き進んでいく。

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ハヤテ工作室

その頃、空いた時間で春吉進一郎は
真耶に頼まれていたアシスト・ロイドの
仕上げを終わらせた

「さあ出来たぞ」
春吉はロボットの頭に手を置いてから

「さてと、こいつに名前を付けるか・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

暫く考え込むが
「駄目だ・・思いつかない・・」

考えを纏めるのに工作室からテラスに移動する
その後ろから犬のように出来立てホヤホヤの
ロボロイドが春吉にテクテクついて来た

カフェでコーヒーを飲みながら
「駄目だな~・・思いつかない・・出てくるのは
ポチやらコロやら、犬みたいな名前ばかりだ」

春吉という人は、メカには強いがこう言った事は
全くダメだった、そして丁度其処にジョンが来た

「そうだジョンにしよう!」

「僕を呼びましたか?」

ジョンスミスは自分が呼ばれたと勘違いをする
「いやこいつの名前さ・ん?・君も確かジョンか」

ロボの頭を撫でながら
「先客が居たな~それにジョン何て名前付けたら
真耶君に怒られるだろうな」

ジョンはムットして
「悪かったですね、こんなコンガラがったガラクタ
同じ名前を付けられたらこっちが迷惑ですよ」

春吉は怒るジョンに詫びつつ
「そう怒るなよ・・ん?そうだなコンガラかった
ガラクタ・・・・コンガラクか」

ポンと一つ手を叩き
「コンガラクにしよう!」

春吉が平気な顔でこんな事を言ったので
ジョン・スミスはズッコケタ
「参った負け負け~天才には敵わないよ」

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イザベルスミスは姉妹の誓いを交わした
大城真耶とハヤテで行動を共にしていた

「今日はイザベルのお兄さんを見ないわね」

「本当よね真耶と一緒なら何時も
直ぐに飛んでくるのに」

その時イザベルが「あれ景子さんじゃない?」

見ると崎景子が艦内スポーツジムで格闘技を
複数の女性隊員等に指導していた

「景子さんはああ見えて坂巻流護身術の有段者よ」

「エッうそ!いつも物静かで綺麗な人なのに」

「あの坂巻さんの妻になる女性よ
戦ったら誠矢兄さんより強いわよ」

「それはもう・・最強ペアなのでは」

小原庄二(戦闘班補佐)
小原がポケーっと天井を見ている
そこに北本医師がやってきて小原に声を掛けた

「おい小原どうしたんだ?」

返事がないので小原の目の前に手をやり
振ってみても反応しなかった

大声で「何をボケットしてる若い奴が!」

その声にやっと小原が反応を返した
「あれ?北本先生居たんですか?」

「さっきから居たわ、何か悩みでもあるのか?」

小原は誤魔化すように「何にもないですよ」
そう言ってその場を足早に去っていった。

その胸中には滝川鏡子と言う
想い人が居るのだがこればかりは
医者も薬も効かない病だ

やがて早歩きになり、トボトボ歩いていると
そこでバッタリ真耶とイザベルの二人に出くわし

「わあ!」「きゃ」

「はは・・いや~清々しい良い天気だ」

訳の分からない事を言って
ソソクサと立ち去る

「変なの」「本当に変ね・・此処は宇宙なのに」

真耶とイザベルは第一艦橋に戻ると
見慣れないロボットが真耶の席の横に立っていた
その側に春吉(科学班長)が近づいて

「真耶君出来たよ御注文の品が」

そう言いながらロボットの頭を撫で
「但し中古の部品や余り物の
コンピューターを使ってるから
多少問題があるかも知れないが」

「テヤンデー、この・コンガラク
真耶チーフのお役に立つンダゼ!」

春吉は溜息をつき「ほらねこんな調子なんだ」
すると真耶はコンガラクに近寄り頭を撫で
「良いじゃないですか可愛いと思いますよ
これから宜しくねコンガラク」

コンガラクは喜びのあまり直立不動で敬礼し
「このコンガラク全能力を真耶チーフに捧げマス」

イザベルは真耶のその様子に
『真耶ったら兄さんより心を許したみたい
又ライバルが増えたみたいよ兄さん』
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冥王星ではヘルターナが
木星の主力空母艦隊を
銀河円盤によって超重力竜巻兵器で
壊滅させられた為ガルスグレーサー本星に
戦力の補充を打診していた

併し135隻の空母を要求するも
未だに良い返事がこない。

「普通なら降格処分され何処かに
左遷される所だが・・」

「つまり俺に此処で死ねと言う事だろう」
ヘルターナは自分でも驚くほど冷静だ
「銀河円盤が相手では100隻程度の戦力では
焼け石に水で到底太刀打ち出来ないのも
仕方なかったな、だと?」

ターナーは肩を落とし
「俺の評価も地に落ちたものだ・・な」と言って
力なく笑った

副官のグラダーは、尊敬する司令官に
「本国は何も知らないのです、ターナー司令が
いかに部下想いで優秀な方であるかを」

ターナーはそう褒められても
「現実は厳しいものだ」と言う感想しかない

「135隻の空母など・・ガルスグレーサーの
戦力を考えれば微々たる物だ・・」

「しかし地球攻略を小手先でやって
大した戦力を投入しないのも
銀河円盤にどうせ破壊されるから
これ以上損失を出すのを渋っているからだ」

「何と愚かな・・」
グラダー副官の言う通りだ
このままでは木星の防衛が全く出来ない
「兎に角、戦力を掻き集めるしかあるまい」

其れからグラダーは奮起し
戦力補充に奔走した
「イカン!空母など最低数でいいから
貴様等の部隊から余分な空母を回せ!」

「何っ2隻しか回せない?」

「自分の艦隊も銀河円盤に備えて
兵力を温存しろと言われただと!?」

グラダー副官が躍起になって
他の艦隊に余剰戦力を貸し出すよう
交渉してくれてはいるが芳しくは無い。

『此はいよいよ計画を実行する時が
来たようだな』
ヘルターナーが以前から暖めていた、
その企みの内容は・・・

ターナーは怒鳴り過ぎて声が枯れている
副官グラダーに「何隻集まった?」と聞いた

「ハッ、未だに9隻であります」

「たった9隻か・・135隻には遠く及ばんな」

「このグラダー力及ばず・・申し訳ありません」

「グラダー、本国より借り入れている
バダイ・全自動式{移動式要塞工場}
の調子はどうなんだ?」

「ハッ!現在の稼働率は約40%
400隻を建造中ですが完成まで20日
程度掛かるとの報告が・・」

「20日だと?戯ざけた事を・・」

バダイ・全自動式無限戦艦量産
{移動要塞工場}と呼ばれている其れは

全長6000メートル
全高6000メートル
全幅6000メートル

形状は完全立方体で自信で
移動も出来る最大リープ速度4

資源さえ放り込めば
無限に戦艦を製造し続ける
ガルスグレーサー自慢の
{別名}宇宙戦艦無限量産箱

機械のメンテナスさえも自体で行う
2万年稼働を続ける不死の怪物
ガルスグレーサーにはこれの同機が
何と100基存在するのだ。
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そして、こんな時に限って
グラダー副官に悪い知らせが届く

「木星に地球艦隊接近!」

グラダー副官は天を仰いだ
「しまった、もう来てしまったかぁあ!!」

最終的に、
10隻の補充が出来て総数19隻になった
木星のガルスグレーサーの防衛力は
それが全てだった。
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ハヤテが参加する艦隊の旗艦は宇宙戦艦金剛
地球は防衛軍艦隊の主力3割を引っ張り出した

金剛艦長は全艦隊に命じた
「これよりアステロイドベルトまでリープする」

「リープアウト後に全艦砲撃戦準備!」

金剛艦隊はアステロイドベルトの目前に姿を現し
砲撃を開始しようとした、その時だ
直上より重戦闘機フライキラーの大編隊が強襲した

「緊急防空体制!」

宇宙戦艦金剛の防空兵装が火を噴き
他の戦艦もそれに追従した

金剛の機銃やAAMは両舷に12門ずつの単装
パルサーライトガンを装備、その数48門
下部にもインパルスガンを50門ずつ100門装備
している

宇宙戦艦金剛は間違いなく
防衛軍艦隊最強クラスその一隻だった

普段は発揮する機会がない為に敵機が油断して
接近すると264門のインパルスガンが火を噴く
近づいた敵機は無事では済まない。

この時強襲したフライキラーも
その例に漏れなかった
500幾以上のフライキラーは金剛艦隊に接近した
者から順に次々と撃墜されていった

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この事態はガルスグレーサー側の将兵に
大きな波紋を投げかけた、
これはまずパイロットの出撃拒否に始まった

「確実に死ぬような戦場に行けるか!」

「そんなに迎撃幾を飛ばしたいなら上の奴らが行けよ、
後で損をするのは俺達下っ端だからな」

「上の奴等は高見の見物かよ」

そしてパイロット達は基地の中で暴動を
起し始めた、ガニメデ基地の兵士の8分の1は
パイロットだったため、忽ち基地はパニクに陥り
この時点でもう基地は陥落したと言ってよかった。

ある者はミサイルを発射したがそのミサイルも
網の目のように張り巡らされた
インパルスガンの光条に触れて四散していく

「どうだガルスグレーサーのクソ虫共
我が金剛艦隊の威力を思い知ったか!?」
金剛艦長は大いに自慢の力をふるえて上機嫌だ

同時刻、偽装駆逐艦ハヤテも参戦し
味方艦を援護していた

偽装艦とはいえ春吉技術班長が
改造した偽ハヤテの活躍は素晴らしかった

本来の駆逐艦が果たすべき仕事で
存分に活躍できた、流石は駆逐艦、
敵幾の発射した宇宙魚雷を味方の
戦艦に命中する前に次々に撃墜していく

「宇宙戦艦の天敵は魚雷だからな、その為に
駆逐艦は存在するんだ」

響に代わり、偽装ハヤテを繰艦するのは
岩川(運航班副長)

そして戦闘班は小原(副長)である
艦長席には当然ながら勝艦長が座る
艦隊行動の際、他の艦長との
コミュニケーションだけは
勝艦長自身でないと務まらないからだ。

<我が艦の露払い誠に御苦労ですな勝艦長>
金剛からハヤテに通信が入る
<貴方ほどの英雄にこんな地味な仕事を押しつけて
誠に心苦しい限りだ>

魚雷から艦を守られた金剛の艦長が
皮肉気に言ったその言葉に勝艦長は表情一つ変えず
「礼には及ばん戦艦を守るのは駆逐艦の仕事だ」

フンと鼻を鳴らし金剛の艦長は通信を切った
通信班長のジョンが「一々嫌味か」と言うと

「ハヤテを煙たく思っているのに、
守られて面白くないんだろうよ」
小原がそう言うと艦橋内に笑いが漏れる

「まあこのまま行けば地球艦隊の圧勝ですね」
ジョンの言葉に乗って小原が

「本物の出番も無しか」
そう言い後方に控えるハヤテに想いを馳せる

遙か後方にあるアステロイドベルト
その中にガードミラーリングで
隕石に擬態し、戦況を見守る
本物のハヤテがあった。
{状況に応じて援軍を送る準備は既に整っている}

「凄いな敵幾500幾が全滅するのに5分掛からな
かったぞ」

「金剛艦隊もなかなかやるもんだな」

そう言う誠矢の横で響がイライラしながら
「畜生、岩川の奴・・俺の駆逐艦ちゃんを」

誠矢は最後まで自分に繰艦させるよう
艦長に食い下がっていた響を窘める

「お前に駆逐艦で魚雷とか迎撃する夢を
横から浚われる気持ちが解るかよ!」

夢・・って
「ヤレヤレだな・・」

通信席では補充要員として任務に就いた
イザベルスミスが、姉妹の誓いを立てた
大城真耶の横で笑っている

「響さんたら駄々をコネて子供みたい」

「男の子はああ言うのが大好きなのよ」

「大きなオモチャを取り合う子供みたいですね」

「本当にね」真耶とイザベルは
本物の姉妹の様に仲良く笑った。

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「戦闘機部隊全滅」

「500幾全てが撃墜されました」

木星ガニメデ基地の衝撃は
計り知れないものだった
グラダー副官は顔色を無くして司令を見た
だがヘルターナーは沈黙している

   「ターナー様」
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アステロイドベルトの側に今地球から
1隻の超大型空母が接近していた
その空母こそ地球防衛軍の
最新鋭宇宙空母ワイマールである

全長1830m
搭載機数580幾は地球最大の航空戦力を
保有していた

春吉は誇らしそうにその雄志を見ている
但し隕石に偽装しているハヤテからだが

「私の設計した空母が・・
この日を待ち望んでいたよ」
ハヤテのメインスクリーンを見てそう漏らした

「どうりで・・まるでハヤテの空母版だ」
大城誠矢は地球の宇宙戦艦はそのうち全て
ハヤテの兄弟艦だらけになる予感がする。

偽装宇宙駆逐艦のハヤテに乗る勝艦長から
本物のハヤテに秘密回線で連絡が入り

<いよいよ木星奪回作戦が開始される>

<ワイマールが金剛艦隊と合流した後
作戦を開始する>

<ハヤテはそのまま待機、不測の事態が起きない
限り戦闘への参加を禁止する、以上だ>

言葉少なく勝艦長の指示が出され
本物のハヤテのメンバーは落胆した
よりにもよって木星を取り戻す作戦に
参加出来ないとは

今回は地球の通常艦隊の方が、
ガルスグレーサーの残存兵力を上回るため
このような作戦内容になったのだ
そして駄目押しとも言える
宇宙空母ワイマールの参戦である

「木星を攻撃するのは1時間後だ」

ハヤテのクルー全員が張りつめた面持ちになった

「ワイマールより戦闘機が一機来ます」
ジョンに変わりイザベルの声が流れる

「秘密回線で入電、我ドイツの白いトラ」
その名を聞いて誠矢が直ぐに反応した

「ハルトマンか!」
誠矢はイザベルの横に行き

「繋いでくれコイツは事情を全部知っている」
イザベルは素早くタッチパネルを操作して繋げた

「こちらシロ・ワシ」
その言葉でハルトマンの方からも返事が

<お前誠矢か?>

「そうだハルトマン」

<要件がある地球から指令書を持ってきた>

誠矢は全てを察し動いた
「転移ゲート展開ハルトマン幾を回収せよ」

アステロイドベルト内で秘密の密会である
無数の隕石が目隠しになり敵味方に知られる
心配はない

そして不在の流水に代わり
代理で春吉進一郎艦長代理が
ハルトマンから指令書を受け取った

「余程の重大事項らしいな」

それに目を通してからイザベルに
「勝艦長に伝令、司令部より緊急指令
攻撃は5分繰り上げ・隊型は
フォーメーション<パンドラ>」

「了解です」イザベルは勝艦長に通信した。

春吉進一郎は席に戻り
指令書を電子スキャナーで
分析し、指令書に隠された
秘密文章を読んだ

「チッ!」春吉は舌打ちをし

「こっちが本命ですか・・小田司令」
それは直ぐにシュレッダーに掛けられ処分される。

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大城誠矢・坂巻進吾・ハルトマン
この3人が初めて出会ったのは
誠矢と坂巻が防衛隊学校でドイツに1年間
留学した時だった

彼等の好む機体色が白だったので、
いつしか人は彼等3人の才能を知り、
白竜・白虎・そして白鷲と呼びはじめる

誠矢と坂巻が日本に帰国し、チームは解散
したが今この瞬間にまさかの伝説復活である
ハヤテの戦闘機ハンガーに
その伝説のチームが勢揃いした

「あれが伝説の白い3聖獣か」

「一人でもSSSクラスなのに
3身一体で戦うとか恐ろしいよな」

「敵にとっては地獄だぜ」

ハヤテのパイロット達も高レベル揃いだが
この3人が気にならない者はいない

「木星奪還作戦でこの3人が揃うのも
運命を感じるよな」
誠矢は又3人で敵と戦える事を心から喜んだ

「さあいよいよ反撃返しだ
木星の空を取り返すぞ!」
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アキレス・F・ハルトマン
ドイツの白い虎(ホワイト・タイガー)

戦闘機の操縦技術が最早神業
彼に言わせると戦闘空域内にいる
敵味方が一瞬止まって見えるらしい
動体視力がどうかしている怪物
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いよいよ木星奪還作戦決行の時が来た。

ヘルターナーは未だに動かないで居た
副官グラダーに後を任せ何かを待っている。

「空母がまだ30隻足りない・・」

「直ちに残存空母をガニメデ基地防衛に回せ」

「戦艦は全て地球艦隊に決戦を挑む!」
副官グラダーが先導するが
ガルスグレーサー兵の志気は上がらない
どう考えても此が負け戦だと解っているからだ

恐らくガルスグレーサー本陣は
銀河円盤に対抗する戦略に切り替えた
だから木星戦に戦力を回さないのだろうと。

副官グラダーは肩を落とす
「掻き集めた19隻も寄り集めならやる気もない
気の毒なのは搭乗員だ、それこそ意味のない
戦争で死にたくはないだろう」

グラダーのボヤキもターナーは許していた
いや、敢えて聞き流す(咎める必要がないからだ)

{こんな醜態を部下の大勢居る前で
させて良いわけがないのだが}
ヘルターナーは何も言わない。

「副司令6隻しか動きません!」

「エエイ叛徒は許さん!」

「それとも反逆罪で処刑されたいか!?」
(だが、不利になれば逃げても良い)
それだけを小声で言った

援軍への無線を切らせて
残存艦隊を任せた艦長に交信する
「お前の艦隊は何隻いる?」

<110隻です>

「何とかやれるな」

<ハッ!お任せ下さい!>
だがグラダーは一言つけくわえる

「絶対に死ぬなよ」

「これは勝利より生き残る為の戦いと知れ」
この一言にモニター先の艦長は逆に
決意した顔つきになった

<ガルスグレーサー万歳!>
副司令に敬礼をして通信を切る

______________________
★付箋文★

この戦いは彼等、ガルスグレーサー
太陽系攻撃隊にとって
勝ち目のない最後の戦だった。

NZ334宇宙域で地球艦隊は敵艦隊を捕捉し
此処に両軍は遂に激突した
宇宙戦艦長門を旗艦とする長門艦隊

長門の艦長
『木星の主力だな、まだ此方に
気づいてないようだ』

「全速前進、敵に先制攻撃を仕掛ける!」

長門以下155隻の艦隊は
116隻のガルスグレーサー艦隊を強襲した
長門型の主砲が火を吹き、不意をつかれた敵艦が
次々に炎に包まれる

その報を受けた副官グラダーは
「しまった、敵艦隊は二手に別れていたか」

其処で敵艦隊の動きを判断し
「木星付近で二手に別れ挟撃する作戦だろう」

「挟撃!?」
敵の狙いが解っていても、どうにも成らない
体制を立て直そうにも敵の速度が速いのだ

「味方艦の3割が敵の餌食になりました」

グラダーが声を荒げる
「その宙域から直ちに離脱せよ!」

<残念ながら旗艦である任務を他の艦に
命じて下さい>

旗艦フレイドの艦長が
申し訳なさそうにそう言った
それを聞きグラダーは言葉をなくす

<エンジンをやられました後は頼みます>

<最後まで着いて行けず・・申し訳ありません>

その艦名はフレイド
今回一番、貧乏くじを引かされた艦である
旗艦を返上した只のフレイドは
2基のエンジンのうち1基が火を吹いていた

そのままフレイドは150隻の地球艦隊に向かって
主砲を発射しながら突撃する
その合間に残されたガルスグレーサーの
残存艦隊が次々に戦場をリープで離脱していく

フレイドは長門8番艦ニュージャージーの
主砲が第一番砲塔に命中し
それを皮切りに集中砲火を浴びせられた
副官グラダーはフレイドに敬礼した

「お前の犠牲のおかげで多くの兵の命が
救われた感謝するぞフレイド」

フレイドはそれでもまだ交戦をやめず
長門15番艦プリンス・オブ・デュークの
主砲に艦橋を直撃される

次の瞬間フレイドは光の玉となり宇宙に消えた
敵ながら天晴れな戦いぶりに長門の艦長は
フレイドの残滓を敬礼で見送った。

_______________________
★付箋文★

フレイドの犠牲により生き残った戦力は
戦艦46隻・空母3隻、まさに惨敗だった

その内戦艦は32隻が大破、9隻が小破
空母も動いているのが不思議な状態である
無傷なのは戦艦5隻と空母2隻の計7隻だけだった。

副官グラダーは「天は我等を見捨てたかと」
又しても天を仰いだ。

その時ガニメデ基地を守る艦隊で立て続けに
3つの爆発が起こった
副官グラダーが慌てて原因を問いただすと
レーダー手の一人がそれに応じ

「味方の戦艦が3隻爆発しました
どうやらエンジンに致命の傷を負って
いた模様です」

「此処に来て駄目押しか・・この会戦は
我々の完敗だ」

「戦艦が7隻まだ爆発の恐れがあるため
離脱すると・・」

「それに続き14隻が自沈の必要があります」
通信士の報告後直ぐ、一つ爆発が起きた。

副官グラダーは通信士に
「7隻から離れさせろ後の14隻からもだ」

次々に味方艦が爆発の炎に包まれていく悪夢の中
動ける戦艦は辛うじて離脱したが大破した数隻が
エンジン出力が下がったのか着いて来なかった
そして続けて7隻が爆発を起こした

「8隻が着いてきません!」

「一体どうしたんだ!?」

「エンジン出力が上がらない為です!」

「その8隻に連絡しろ!地球に降伏してでも
生き延びよとな!」

「それから他の艦に連絡せよ!此より
14隻を処分すると」

「!!」
「敵艦隊接近、新手です!」

レーダー手が悲鳴を上げる

「スクリーンに出せ!」
副官グラダーの指示で映し出されたのは
クルセイダーの率いる第2波だった。

「砲撃用意、14隻を急いで処分する、
全艦リープ準備!お前達は逃げろ」

副官グラダーからの命令である
「乗員の避難は済みました」

「本国よりの折角の最新鋭艦が・・機密保持の
為にこの手で沈めねば成らんとは・・」

「撃て!!」

友軍艦隊からの砲撃を受け14隻もの
最新鋭艦隊は宇宙の藻屑となる
戦艦8隻・空母1の艦はもう
レーダーから外れている

14隻の戦艦と2隻の空母はリープして
その戦場から離脱した。

______________________
★付箋文★

背走したガルスグレーサーの艦隊は
アステロイド付近でリープアウトした
{不運}にもその宇宙域はハヤテの
レーダ圏内だったのだ、そんな事を知らない
ガルスグレーサー背走艦隊は

「まさか司令官を見捨てて
敗走する羽目に成るとは」

自分達が生き残れたのはすべて、あの副官の
英断の御陰だ・・寄せ集められた
背走艦隊の艦長が、残念に思うのは

「ヘルターナー司令も思えば哀れな最後だな・・
あの若さで彼処まで出世出来たのも運が良かった
からで、運に見放されればこんな物か・・」

ガルスグレーサーで出世するには人の心を
捨てる以外にない、重責に堪えきれなければ
廃人と化す者も少なくないからだ

「最後は副官に全ての指示を任せ
己は無気力に玉座に座るだけだった」

其れは地に落ちた英雄ターナーを貶した罰か?

「隕石に紛れて100幾にも及ぶ編隊がこちらに
向かってきます!」

レーダー手が疲れた喉を酷使し掠れた声でそう伝えた
その100幾の中に3幾の(白い聖獣)が混じっていた

「寄りによって俺達の目の前に出てくるとは・・」

「運がないにも程があるな」

「せめて苦しまないように葬ってやろう」

ガルスグレーサー背走艦隊15隻は
ハヤテ搭載の戦闘機部隊に為す術もなく
撃沈され宇宙の墓標と化した。

_____________________
★付箋文★

木星ガニメデ基地は
その守りを完全に失った

地球艦隊はガニメデ基地を
箱に閉じこめた様に取り囲み砲撃を開始
まさに希望無きパンドラの箱だ

そしてある程度ダメージを与えてから
降伏を薦めた。

ガニメデ基地が武装解除し
地球艦隊に降伏したのは
それから間もなくの事である。

彼等は殆どがガルスグレーサーに侵略された
星の人間だった事もあるが、無条件降伏を
選択し受け入れてくれたことは地球にとって
願ってもない完全勝利となった

木星ガニメデ基地は、元々地球の物
それを破壊せず取り戻せた事は想像以上に
大きな意味がある

多くの戦士が犠牲になった木星大戦
幾多の困難を乗り越え、木星は
太陽系防衛圏に帰ってきたのだ
宇宙戦士達の目には涙が光っていた。

その中には大城誠矢もいる
『やっと・・やっと木星が帰ってきた・・
キャサリン・・やっと取り戻したよ』

木星を取り戻しても失った命は戻らない
思えばキャサリンが死んだのは木星が
ガルスグレーサーに侵略された翌日だった

大城誠矢は改めてガルスグレーサーへの
復讐を誓った。

______________________
★付箋文★

偽装駆逐艦ハヤテの艦長席で
勝艦長は、この勝利を噛みしめていた

『木星で多くの命が失われた、あの日の屈辱も
今は過去の事だ・・次に屈辱を味わうのは
ガルスグレーサー貴様等だ!』

偽装ハヤテ以外の4分の1の艦隊は
木星にクルセイダーなどの4分の3の艦隊を
1時残して、一路進路を地球に取った

だが・・地球に戻ったら{一波乱}ある事を
この時のハヤテ主要メンバーはまだ知らない
━━━━━━━━━━━━━━━━━━★付箋文★

ヘルターナー司令が
木星陥落前に脱出したのには訳があった。

「グローカーとシューカーから秘密回線で
連絡が入りました」

副官グラダーが司令席に寡黙に座る
ヘルターナー司令官に耳打ちした

「そうか・・それで首尾は?」

グラダーは本来の目の輝きが戻り
頼りになる副官に戻っていた
そしてヘルターナーも

「全て手筈通りに運んだ模様です」

ヘルターナは悪魔のような笑顔を見せる
「そうか、どうやら俺は神に・・いや
悪魔に愛されている様だ」

副官グラダーが司令室にいる全員に言い渡す
「諸君等に知らせる事がある」

何事かと副司令に注目する将兵達
「何だ」「副司令」「何を発表するんだ」

グラダーは先程までと同一人物とは思えない
覇気を纏い話を始める
「我々はこの基地を放棄する
基地の防衛体制は自動にして
時間を稼ぎその間に脱出するのだ」

水を打った様に司令室は静まりかえる
そしてヘルターナがマントを翻し席を立った

「俺はガルスグレーサーを抜ける!
そして銀河に俺達の為の王国を作る
着いてくるのは自由だ!選択は各々に任せる!」

総司令官の突然の爆弾発言に
当然ながら反発の声も出た

「ガルスグレーサーから逃れるなんて不可能だ!」

「直ぐに何千もの艦隊に追いつめられ
捕らえられて地獄よりも辛い罰を
受けるに決まっている!」

ガルスグレーサーの恐怖を植え付けられた
彼等は自分の命を失うよりも
ガルスグレーサーを裏切る行為に
恐怖を感じていた

だがヘルターナーは大笑いする
「その心配は皆無だ、ガルスグレーサーは今
銀河円盤を警戒し大艦隊を派遣出来ない」

「そして銀河連邦は腑抜けの巣窟であり
この俺が星の一つ二つ手にした所で
今は何も出来ないのだ」

それを聞き司令室の反対派が
「ですがそれこそ、銀河円盤が我等を
攻撃してくる口実になるのでは?」
最もな意見だ

だがヘルターナーは自信に満ちた態度で
「案ずる必要はない、銀河の盾は
ガルスグレーサー軍でなくなった時点で
我々を国を捨てた亡命者扱いにする」

「何故ならガルスグレーサーからの離反者を
銀河系に迎え入れると言い出したのは銀河の盾だ」

今や有名な話だ、この情報を知らない者はいない
「た・・確かにその通りだ」

「総司令の言う通りかも知れないぞ!」

ヘルターナーは更に畳みかける
「俺は惑星を手に入れそこで力を蓄える
そしてこの先、銀河に亡命してくる同胞を
全て迎え入れ国を作るつもりだ」

この言葉を聞き反対していた者達の
死んだ目が生き返り活き活きしだした

「この動きはやがて主流と成り大きくなる
だが一番早く動いた者が圧倒的優位に立つのだ」

ターナーの言葉は木星の
ガニメデ基地内に広く流れた
予めそうなる様、グラダーが手配したのだ

{自分達の星が・・国が手に入る}
ガルスグレーサーに侵略され
星を国を滅ぼされた彼等の心に
この誘惑は恐るべき猛毒となって
浸透する、ガルスグレーサーに対する
恐怖さえ食い尽くす程の魅力があった。

ガルスグレーサーに対する恐怖の洗脳も
この猛毒の前には効力を失う
{まだ全員の洗脳が解けたとは言わない}

其れでも大多数がそうなれば後の少数は
多数の意志に逆らえなくなる
この心理状態を{同調圧力}という

そしてトドメを刺すように
司令室のスクリーンに
信じられない人物達が姿を現した

「ヘルターナー司令お待たせしました」

その言葉を発したのは
あのハヤテとの戦闘で艦隊ごと死亡した筈の

第8空母隊グローカー艦長
第15戦艦隊シューカー艦長
その2大英雄だったのだ

其れを見て
肩を抱き合い感激のあまり歓声を上げるもの
鳴き始めて止まらない者
二人の無事を神に感謝する者までいた

先程までの絶望的な敗戦ムードから一変して
明らかに流れが変わった、その上にである

「それで例の物は手に入れたのか?」

スクリーンのグローカー艦長が
「当然です、制圧するのは余裕でしたよ」
そう言ってグローカー艦長が
正立方体の建造物を映す

それは

バダイ(移動要塞工場)
全長6000メートル
全高6000メートル
全幅6000メートル

形状は完全立方体で
自信で移動も出来る
最大リープ速度4

資源さえ放り込めば
無限に戦艦を製造し続ける
ガルスグレーサー自慢の
別名 宇宙戦艦無限生産箱

{機械のメンテナスさえもマシーン自身で行う
2万年稼働を続けるガルスグレーサーの至宝である}

ガルスグレーサーには此が
100基存在すると言う

グラダーとシューカーは特別部隊を結成し
この巨大な移動要塞工場を武力制圧したのだ。

「長年こき使われた退職金代わりに
こいつを1基貰っていく」

「俺に着いてくる者は
全員あのデカ物に集合しろ!」
それだけを言い残し
ヘルターナは司令室を後にする

凄まじい覇気を全身に纏い
ヘルターナーは歩み出した
「此処からだ、此処から俺の伝説は始まる!」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━★付箋文★

ヘルターナーに賛同する全ての兵士達は
ガルスグレーサーに帰還する僅かな兵達を残し
新たな拠点となるバダイ移動要塞工場に

ある者はフライキラーで
又ある者は戦艦から脱出したシャトルに
揚陸艦やボートまで使い・・

ありとあらゆる移動手段を駆使して
ヘルターナーという新たな希望の光に向かい
集結していった。

ターナー出奔の報は
ガルスグレーサー中に驚きを持って伝わった
その知らせはウルフシューターとワルダー
そしてグリフォンの3将軍にも伝わり

「奴めやりおった!」

「まさか此処までやるとは」

「このタイミングでとはな・・恐れ入った」

「バダイ迄も手に入れ実に鮮やかな手並みだ」

3将軍の内緒話はウルフシューターの
ミサイル戦艦スペースヴォルフの艦長室が
定番となっていた、今の所互いに
胸襟を開いて話せる唯一の集会所だ

「前々から狙って居たのだろう・・その為に
度々私財を投じ高額な巨大装置類を借りては
返すをヘルターナーは繰り返したのだ」

「木星で隕石掘削装置をハヤテに破壊された時も
私財を使い機械の損害と、遺族の補償金を
滞りなく支払った」

「だからバダイの貸し出しも国は疑問無く許す」
ウルフシューターはヘルターナに男のロマンの
何たるかを教えられた気がした

ワイルダーも酒が進む
「まさかバダイが狙いであったとは、
アレは無限に戦艦を生み出す帝国の至宝だ・・
此までの投資など無いようなものだ」

「おまけに死んだ筈のグラダーに
シューカーまで匿っていたとは・・
人材まで手に入れて見事と言うしかあるまい」
思わず笑いがワイルダー将軍の口から漏れる

「リンクス宰相などは怒りの余り
木星から戻った艦を全て
そのまま地獄と言われる最前戦に
送り出してしまったからな」
ウルフシューターも苦笑いだ

「ああいう普段冷静で優しい振りをしている
男の方が怒らせると冷酷で酷い真似を
するものなのだ」
グリフォンが心理学で宰相を分析するのも
此処だから出来る事だ

「ターナーに討伐隊を送りたくても
銀河円盤が居るので出すに出せまい」
ワイルダーはリンクスを心良く思っていない
だからこの状況を本気で楽しんでいると
グリフォンは分析した

「ああ、銀河円盤のアストラは
ガルスグレーサーからの逃亡者は
全て保護すると言っているからな」

「下手をすれば討伐艦隊は全滅だ」

「そして銀河円盤が必ずそうすると
我々には断言できる」

「銀河円盤の正体もアストラの正体も
我等だけの秘匿というのが実に酒が旨い話だよ」

「ああ、この旨い酒はやめられんな!」
ウルフシューターまでもがリンクス宰相の
敵に回っているのがグリフォンには驚きである
これもアストラの与えた影響なのか?

「我等の酒の肴リンクス宰相に乾杯!!」
3将軍の祝杯は続く。
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