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わたしの王子様
しおりを挟む「席に着いてください」
担任のクォーツ先生の声掛けに従い、全員が席に着くと賑やかだった教室内はまるで無音のように静かになった。
リュー様がいないせいで、この空間が色褪せて見えてしまう。
輝くブロンズも、涼しげな青の瞳も、優しい声も聞こえない。
早く休み時間になればいいのに。
朝っぱらから……勘弁してくれないかな、編入生ちゃん。
学園の王子様なんてやってるもんだから、表情筋が笑顔で固定されそうな程凝ってるんですけど。
まさか、気の抜ける貴重な登校時間に、1番欺かなくちゃいけない危険人物との出会いがあると誰が思う?
あー、お姫様抱っこで腕が痛いわぁ。
男の頃の感覚で人を担ぐと駄目だな、後悔しかしねえ。
天才は勘も良いって言うし、過剰なほど王子様してやったんだから、上手く騙されてくれてると助かるんだけどな。
あー、腕がだるい。
これはあれだ、男と会わなきゃやってられない。
あいつでいいや、婚約者のマイナー。
溺愛っぷりがうざってえけど、テキトーに可愛がってれば良い感じに付き合えるし。
なにより、抱きしめても頭を撫でてもキスをしても許される!
マジ俺得案件だわー。
「御機嫌よう、アンドリュー様」
っと、
「やぁ、シャーロット嬢。いつものシニョンも良いけれど、下ろしていても綺麗だね。とても似合っているよ」
「まぁ、そんな……アンドリュー様にそう言って頂けるなんて。嬉しいですわ」
「そうだ、今度また勉強会を開こうと思っているんだ」
「そう言えばもうそんな時期ですわね。メンバーは前と同じですの?」
「いや、ひとり新しく招こうと思っているんだ」
「例の編入生かしら」
「あたりだよ。凄いな、よくわかったね」
「今日の朝、仲良くご登校なされたでしょう?アンドリュー様に関する噂は早いんですのよ」
「なるほど。そんなに注目されていると思うと、迂闊なことはできないな」
「あら、何をされるおつもりですの?ふふ、大丈夫ですわよ。アンドリュー様の評判を下げるような噂など、親衛隊が揉み消してしまうでしょうし」
「はは、手荒な真似はしないよう伝言頼むよ」
「承知しましたわ」
「そうだ……シャーロット嬢は青い薔薇に憧れていたよね?」
「四年ほど前の会話ですのに、よく覚えていらっしゃるのね」
「ふふ、まぁね。造花だけれど、貴女の深い緑の瞳とよく合いそうだと思って作ったんだ。良ければ付けさせてもらっても?」
「お上手ね、慣れてるのかしら。良くってよ?」
「ふふ、拗ねないでロッティ。君だけの青い薔薇なんだから……ほら、良く似合う」
「……ほんと、私のために作られたみたい」
「そう言ったと思うけど?」
「アンったら、なんでも出来るのね。ドレスも合わせて作って欲しいくらいよ」
「それは……良いけれど。ふふ、覚悟はあるのかい?」
「ないわ。……でも、そうね。貴女の白い首には、私の好きな青がよく似合いそう……それとも、緑の荊で縛ろうかしら?」
「そんなこと出来もしないのに。ロッティは相変わらず夢見がちだな」
「見るのは決まって幸せな夢よ。貴女の隣で歩く、平凡だけれど至福の夢」
「……プリウス殿下じゃ、だめかな?」
「だめに決まってるじゃない、意地悪ね。私が貴女しか想えないと知っていて、婚約者の元へ行けと言うんだから」
「……ごめん、ロッティ」
「いいのよ、私こそごめんなさい。私、未だに絵本の中の王子様に恋をしているのね」
「独身の今のうちに、夢を見るのは悪いことじゃないと思うよ」
「酷い人ね。受け入れないと言うくせに、甘い言葉で誘惑するんだから」
「ロッ……ん、」
「ん……キスくらい、許してくれるわよね?」
「……君が望むなら」
「やっぱり絵本の中ね。臭いセリフばかりだわ」
「そんな私だからいいんだろう?」
「そうね」
「ん……っ、ロッ、んんっ……ふ、ぅ…」
「かわいい、んっ……ふふ、アン、かわいいわ……わたしの王子様…」
勘弁してくれ、女の子たちぃぃいいいいいい!!!
「リュー様、やっぱり女もいけるんだ……私にも、チャンス、あるよね…」
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