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神の子たち
しおりを挟む人間の血は錆の香りがして美味しいの。
でもね、大して好きでもないのに飲めるからと出された、酸味の強いコーヒーと一緒。
ゴクゴク飲んだら、不味さしか残らないわ。
始祖、ってね。
生みの親にして、ヴァンパイアの世界における神に等しいのよ。
何も混ざらない、人間とも魔族とも違う、神に創られし万能。
悪魔の一柱。
よく出来すぎて神に飽きられた、希少な存在。
わたしに限ってはひとりきり。
出来損ないの人間の血じゃ、飲んでも飲んでも足りないの。
極上の血を、ちびちび飲むのが至高なの。
だからね。
愛しいペットを手に入れるの。
無知の契約に重ねて、神の愛し子であれば合格ね。
優しくして、怪我を癒やすのに舐めたりするの。
飲めるのはそれだけ。
普段は、雑魚を狩ってきて湯水のように飲む。
意識さえ保てれば、時折ペットがその神のエキスで攻撃的にトッピングされた、甘美な蜜をくれるんだから。
私は養子ばかりの大家族の母になったわ。
恵まれる者は疎まれるもの。
爪弾きにされた愛し子を迎え入れ、口実のために魔女にさえなったわ。
迫害なんてとうに潰えたし、魔法が使えるとあれば始祖の唾液の効能が、体液に魔力を乗せた治癒魔術に早変わりするもの。
気付けば永遠の命を得た魔女として名を馳せていたわ。
私は満足だった……あの子に出会うまでは。
幼い風貌も、わがままそうな意志の強い瞳も気にならなかったの。
ただ、魂の輝きが見えて。
私だって神の子よ。
神の加護を受ける愛し子すら超越する、神の寵愛を受ける神の子。
私と同じ、でも違うの。
この子はまだ飽きられていない、いま、神の興味の中心にいる。
いいえ、それも正しくないわ。
この子は神の子の中でも特別なの。
唯一にして未知の存在。
神の初めての子。
神の子は初子の玩具になるべく創られたと、噂に聞いたことがあったわ。
それが本当なんだって……命すら選んで、世界すら飛び越えて、愛すら簡単に得てしまえる。
そんな子がいるんだって、私は王城であの子とすれ違って、初めて知ったの。
私、あの子を愛すために生まれたんだわ。
この揺らがない地位も、絶えない富も、世界一と言わしめた美貌も、あの子の前には塵に等しい。
ならば、その塵でさえ積もらせて、せめてあの子の前に跪くだけの高さにしてやる。
そう思ってからの私の行動は、至極単純だったわ。
あの子のことを始祖の力を使ってでき得る限り調べたわ。
私の力が及べたのはあの子の前々世までだったけど、おかげで今のあの子のすべてを知ることが出来た。
前世の記憶を持つあの子が、何を望むのか。
前世に引っ張られ、戻れなくなってしまったあの子が、どんな人間なのか。
全部ぜんぶ知って、私は自分を改造することにしたの。
あの子は男性しか愛せないわ、性別なんて始祖の力で変えられる。
あの子が望むのは、愚痴が言えて、けれど全肯定はしない。
程よい緊張感かつ安心感を持つ、絶対的味方。
素の自分を晒け出せる相手。
口にせずとも、すべてをわかってくれる相手。
なるのは簡単。
あとはただ、腕の中に抱き込んでしまうだけ。
誰も知らないの。
私が、あの子と一番仲が良い存在だなんて。
そして私は知ってるの。
官能的なキスまでなら、あの子も喜んでくれるってこと。
貞操観念の緩い子は、大歓迎よ?
「ガウディ」
「先生付けろ、アンドリュー=デルタ」
「ミドルネーム付けろ、ガウディ=ヴァンザント=パンドラ」
「……おい、婚約者の方が手っ取り早いとか言ってなかったか?」
「啄ばむようなキスじゃ、今は満足出来なくてね」
「外の世界の匂いがするな、初対面の人間は誰だったんだ?」
「さすが、国内一の魔法使い。今日、初めて天才編入生に会ったよ」
「愛される天才が、ただ暗記が出来るだけの出来損ないに天才と言うのは頂けないな」
「うっせーガウディ。ガウディのくせに」
「なんだと?!」
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