ウザい先輩と可愛げのない後輩

黒姫百合

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83話

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 春祭り当日。
 特にすることもないでの真希はリビングで読書をしていた。
 時刻は夕方ということもあり、階下に広がる河川敷では人で溢れ屋台も数多く出店されている。
 祭り会場から近いということもあり、家の中からでも祭りの状況が分かるし花火も特等席で見ることができる。
 紗那は春祭りを楽しみにしていたので、きっとこの人混みの中に紗那たちもいるのだろう。

「きっと今頃、鈴木先輩たちは楽しんでるんだろうな……」

 窓から見える景色を見て、真希は悲しくなる。
 自分はこんなにも悩んで気まずい思いをしているのに、春祭りを楽しんでいる紗那を想像するとなぜかモヤモヤして悲しい気持ちになる。

「……性格悪いわ、私」

 春祭りで楽しんでいる紗那を想像して、それに嫉妬している自分に気づいた真希は自己嫌悪に陥る。
 真希が春祭りを楽しんでいる紗那を想像して、モヤモヤして自己嫌悪に陥っていると玄関のチャイムが鳴った。

「こんな時に誰だ?」

 真希は思考の沼から現実に戻り、訝しげに玄関に向かう。
 もし配送なら親からなにか一言連絡はあるし、休日遊びに出かける友達もいない。

「はーい、お待たせしました」

 もしかしたら今日配送が来ることを親が真希に連絡し忘れたのかもしれない。
 そうだったら申し訳ないので、真希はゆっくりと玄関を開ける。

「久しぶりだな北野後輩。お邪魔するよ」
「ちょ……鈴木先輩」

 玄関前にいたのはキスをしてから気まずくて避けていた紗那だった。

「どうしてここにいるんですか」
「それは北野後輩と一緒に春祭りを楽しみたいからだよ。これはあたしたちからのおごりだ。一緒に食べようじゃないか」

 なぜここにいるのか真希が質問すると、真希と一緒に春祭りを楽しみたいからここに来たらしい。

「せめて来るなら連絡ぐらいよこしてください」
「それはすまないと思っている。だが連絡手段がなかったのだから今回は大目に見てほしい」
「あっ……そうですね」

 紗那が来ることを予想していなかった真希は、動揺して思わず噛みついてしまった。
 もし来ることが分かっていれば、心の準備ができていたのに。
 いきなり家に押しかけたことは紗那も悪いと思っているのか、素直に謝罪する。

「ちょっとちょっと二人ともー。あたしもいるんだけど」
「私もいます北野さん。連絡なしで来たのは申し訳ないと思っています。誰一人北野さんの連絡先を知らなかったので今回だけは許してください」
「……沢田先輩……黒木先輩。こちらこそいきなり怒鳴ってすみません。心の準備ができていなかったもので」

 二人の気まずい空気を察したのか、清美はわざとらしく自己主張をして気まずい空気を霧散させようとし、麗奈も紗那を庇いつつ、真希を落ち着かせる。
 真希も少し冷静になり、いきなり怒鳴ったことを謝罪する。
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