ウザい先輩と可愛げのない後輩

黒姫百合

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86話

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「紗那、北野。かき氷食べたくなったから買ってくるけど何味が良い?」
「そうだな。イチゴ味、練乳付きでお願いするよ」
「はいよ。北野は何味が良い?」
「あっ、はい。ブルーハワイでお願いします」
「了解。それじゃー行ってくるね」
「私も荷物持ちで行きますので紗那と北野さんはしばらく待っていてください」

 食後のデザートが食べたくなったのか清美がかき氷を買いに行く。
 紗那と真希は何味のかき氷が食べたいかを聞かれたのでそれぞれ好きなフレーバーを注文する。
 紗那のことを考えていた真希は思わず反射的に答えてしまった。
 そのせいで声が上ずってしまった。
 恥ずかしい。
 一人では三つもかき氷が持てないので麗奈も清美についていった。
 リビングに残される真希と紗那。
 気まずいと思うのと同時に千載一遇のチャンスだ。
 紗那と本音で話し合うならこれ以上のシチュエーションはなかなかないだろう。

「あの、鈴木先輩」
「北野後輩」

 勇気を出して紗那に声をかけた瞬間、紗那もなにか真希に話したいことがあったらしく声がハモる。
 真希は出鼻をくじかれ、反射的に紗那から視線を逸らす。

「あっ、すみません」
「いや、あたしこそすまない」

 お互い、声がハモったせいで気まずくなり謝罪する。
 その後、十数秒の間気まずい沈黙が流れる。
 沈黙が辛い。
 真希がなにも言えずにいると、その間に覚悟を決めた紗那は一度息を吸ってから真希に話しかける。

「あたしは北野後輩と出会えたことに感謝している。おかげで毎日が楽しいよ」

 重い空気からは想像できないほど、紗那は嬉しそうな表情を浮かべている。
 いきなりべた褒めされると真希だって反応に困る。

「残念ながら北野後輩にはウザがられているようだが」
「だって本当にウザいですし」

 紗那は大仰に頭を抱えながらショックアピールをしているが、同情の余地はない。
 なぜなら本当にウザいからだ。

「先輩にここまでオブラートに包まないで言える北野後輩は凄いよ」
「褒めてくれてありがとうございます」

 もちろん、褒められていないことは分かっているが真希は紗那に皮肉を返す。

「……全く可愛げのない後輩だ」

 紗那はそんな真希に文句を垂れるものの、なんだか嬉しそうな表情を浮かべていた。

「やっぱりこういうのが良いな。あたしは北野後輩とこういう馬鹿みたいなやり取りが好きだ。だけどあたしが事故とはいえキスをしたせいで、北野後輩に気まずい思いをさせてしまった。すまない。こういう時はもっと先輩の自分がリードしたりフォローするべきだった」

 紗那は自然な流れで本題に入る。
 あの日、紗那は真希とキスをしてしまったことをずっと反省し、思い悩んでいた。
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