柊瑞希は青春コンプレックス

黒姫百合

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87話

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「そう言えば六人でいる時も柊って白鳥と二人でコソコソ話してるじゃん。なにか白鳥と揉めたり、悩みとか聞いてないの?」

 意外にも周りが見えている早織に舌を巻く瑞希。
 てっきり自分たちの会話しか聞いていないとばかり思っていた。

「別に揉めてもないし、悩みとか聞いてない」
「コソコソ話してるんだからあまりあたしたちには聞かれたくない内容なんじゃないの早織」

 早織の言う通り、撫子とはコソコソ話しているが別に聞かれたくないことを話してるわけではなく、ただたんに二人の声が小さいだけである。
 友達がいないと話す機会も少なくなり、声帯が衰える。
 そのため、普通に話していても声が小さいのだ。
 ここで意外にも椿が瑞希と撫子を庇うようなことを言う。
 確かにコソコソ話しているのだから、人には聞かれたく内容だと普通の人は思うだろう。
 瑞希に対しては生意気ですぐに喧嘩を売ってくる椿だが、瑞希たちの秘密を尊重し早織を窘める。

「誰だって人には聞かれたくないことの一つや二つぐらいはあるでしょ」
「いや、私と白鳥はただ声が小さいだけだ。特に白鳥は」

 せっかく良いことを言ってくれた椿には申し訳ないが、そんな深刻な話しは撫子とはしていない。
 椿は一瞬、瑞希がなにを言っているのか分からず呆けていたが、少しずつ理解し始めると顔を赤くして瑞希に噛みついてきた。

「せっかく柊のこと庇ったのに。あたしが馬鹿みたいじゃない」
「別に庇ってほしいとは言ってない」

 またも喧嘩を始める二人。
 それを周りから生温かい目で見守る三人。

「……でも一色の優しさは伝わった。ありがとう」
「……別に。……素直に柊に感謝されるのもそれはそれでむず痒いわ」

 いつも瑞希には生意気な椿だが根は優しい男の娘だ。
 だから嫌いな瑞希にもフォローしてくれるのだろう。
 瑞希もそこには感謝している。だから素直に感謝の気持ちを伝えると、恥ずかしいのかむず痒いのかツンツンしているのにデレているという表情を椿は浮かべる。
 これを人はツンデレと呼ぶのだろう。

「結局僕たちで考えても分からないね」

 帆波はため息を吐きながら結論を出す。
 結局、いくら本人がいないところであーだこーだ考えても答えには辿り着くことができない。

「やっぱり直接本人に聞くのが良いんじゃないの柊」
「私が聞くのかっ?」
「当たり前でしょ。この中で一番仲が良いんだから」

 撫子がなにに怒り、瑞希を拒絶しているのか分からない以上、瑞希たちには打つ手がない。
 なぜかその役を瑞希に命令され、不服だったので椿を睨みつける。
 確かにこの五人の中で一番撫子と話しているのは瑞希だが、それだけで選ばれるのは納得がいかない。
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