楠葵先輩は頼られたい

黒姫百合

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第九話

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「どうしたの中村さん」

 最初に口を開いたのは葵だった。
 葵はご飯を食べていたため口を手で押さえながら言葉を話す。

「知り合い?」

 葵の友達は首を傾げて葵に質問する。
 突然やって来た後輩に少し警戒し困惑している。

「うん、昨日一緒に帰ったんだよ」
「葵が高校一年生の男の娘と……未成年に手を出すのは犯罪よ」
「手なんか出してませんー。それに同じ高校生だからセーフですー」

 葵の同じ高校生だからセーフは良く分からないが、黙っておこう。
 優自身もよく分からない。

「すみません、勝手に訪ねてしまって」

 どう反応すれば良いか分からなかった優は二人に謝罪する。

「ううん、別に大丈夫よ」

 優しい葵は別段気にしていないようだ。

「それよりも瞳は中村さんと初対面だよね」
「まぁー初対面だけど」
「二人ともせっかくだから自己紹介したら」

 これは名案とばかりに手を叩く葵。
 優はその葵の言動に困惑し、瞳と呼ばれた女子生徒の方を見る。
 戸惑っていたのは雄二だけではないらしく、瞳の方を見た瞬間に目が合う。
 そのまま視線を合わせること数秒、お互い気まずくなったためどちらともなく視線を逸らす。
 これも人見知りの弊害である。
 その後葵の勧めもあり、お互い自己紹介する。

 葵の友達の名前は西条瞳(さいじょうひとみ)というらしい。
 学年はこの教室にいることからも分かる通り三年生の女子である。
 座っているので正確な身長は分からないがきっと、優よりは大きいだろう。
 身長百六十六センチ。
 黒髪のセミロングで肩よりも少し長い。
 葵とは違って少しくせっ毛のせいか、毛先にかけてゆるくウェーブを描いている。
 目は少し釣りあがっていて少し、きつそうな印象を与える。
 肌も葵と負けないぐらい潤っていているが、唇は少し薄い。
 胸の方は制服の上から分かる通り、凹凸がない。
 きっとAぐらいしかないだろう。
 優の第一印象は少し性格がきつそうだけど勉強できる女子生徒だった。

「それで中村さんは葵になにか用なの」

 食事を中断されたことを怒っているのか、言葉に棘がある。
 それだけでも、優は弱ってしまう。
 先輩の女子生徒にすごまれたら、誰だって畏縮してしまう。

「こらっ、瞳。そんなに中村さんを睨んで。後輩をあまり苛めないの」

 先輩にいびられている後輩を助けてくれようとしたのか、葵が優の味方になってくれる。
 葵の優しさが身にしみる。

「これは睨んでいるんじゃなく、生まれつきだ」

 どうやら瞳の目つきの悪さは生まれつきらしい。
 二人の言い合いを見ていると、お互い信頼しているんだなと感じる。
 お互い喧嘩しているように見えて、目が笑っている。
 これも二人にとってはじゃれ合いの範疇なんだろう。
 そう思うと少しだけ羨ましいなと思った。
 高校で優にこんな冗談を言い合えるぐらい仲の良い友達はいないからだ。
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