楠葵先輩は頼られたい

黒姫百合

文字の大きさ
77 / 78

第七十七話

しおりを挟む
「良かったな葵。中村さんと仲直りができて」
「うん。ありがとね瞳。瞳のおかげで優ちゃんと仲直りができたわ」
「……優ちゃん?」
「今、楠先輩、中村のこと優ちゃんって呼びましたよね」
「私も聞いた。いつの間にそんなに親しくなったんですか」

 葵が優のことを『優ちゃん』と呼んだ瞬間、瞳は自分の耳を疑い、愛音と実乃里が質問責めをする。

「仲直りした後よ。私たち友達だから名前で呼ぼうって私から提案したのよ」

 葵は簡潔に名前呼びになった経緯を話す。

「楠先輩だけズルいです。中村、あたしも優って呼んで良い? あたしのことも愛音って呼んで良いから。優のことは友達だと思ってるから」
「私も優ちゃんって呼びたい。私も実乃里って呼んで」
「二人とも良いよ。これからよろしくね愛音ちゃん。実乃里ちゃん」

 愛音と実乃里の申し出は優としても願ったり叶ったりだった。
 優自身もいつか愛音や実乃里のことを名前呼びをしたいと思っていたが、そのタイミングが分からなかった。
 さん付けからちゃん付けになっただけで、前よりも親しみやすくなった気がする。

「瞳は優ちゃんのこと名前で呼ばないの?」
「別に苗字のままで良いだろ。逆にあたしが中村さんのことを名前で呼んだら中村さんが困惑するだろ」
「そうかな~?」

 一年生が呼び方で盛り上がっている中、葵と瞳がなにか話していたが、盛り上がっていたせいでなにを話していたかは分からなかった。

「そう言えば今日提出の化学のプリント解けた? 結構難しかったよね」
「難しかったからあたし白紙だわ。実乃里、少し回答見せて。四割ぐらい回答埋まってないと内申点下がるから」
「自分で解かないと自分の力にならないよ。自分で解きなさい」
「……化学のプリント……あっ、忘れてた」

 実乃里と愛音の会話で思い出したが、今日は化学のプリントの提出日だった。
 葵と色々あったせいですっかり忘れていた。

「珍しいね優が忘れ物するなんて」
「確かにそうだね。愛音ちゃんと違って優ちゃんが忘れものするなんて」
「そこ、あたしをいじる必要あった?」

 愛音も実乃里も優が忘れ物をしたことに驚いていた。

「任せて優ちゃん。私がすぐに持ってきてあげるわ」
「いやでも葵先輩。もう五分もないですよ。それに歩いて片道十分もかかるんですから。もう間に合わないですよ」
「五分もあれば大丈夫よ。三分で戻ってくるから鍵を貸してちょうだい」
「……分かりました。お願いします。でも無理はしないでくださいね」
「大丈夫よ。先輩の私に任せてちょうだい」

 優のピンチを聞きつけた葵が、取りに戻ると言っているがそれはさすがに不可能だろう。
 優の寮から学校まで片道十分はある。
 約片道八百メートル、往復一・六キロあるということだ。
 それに葵はスカートでローファーである。
 普通に人間が走って戻ってこれる距離ではない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...