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第一章 時の守り人篇
第7話 浄華
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「ヴォオオオォオオォォォォォ!!」
迷える子羊の咆哮が響き渡り、地面を振動させる。腕を振り回し暴れ続けるその姿は悲しげだった。
「大丈夫、少し怖いかもしれないが痛みは無い。一瞬で君を解き放つから。怖いようだったら目を瞑っていてくれ。」
ストレイシープの目をしっかりと見て優しい口調で言うジョーカー。
するとジョーカーの手にある刀「影切り丸」から眩い光が放たれ、その光とともに桜の花びらが螺旋状に溢れ出した。そしてその花びらはストレイシープを包み込み、身動きを止めた。
「ヴヴッ……ヴォオォオオ…ッ!!」
必死にもがき、自身を拘束する桜の花びらを振り払おうとするが払えない。
そんなストレイシープを真っ直ぐに見て、ジョーカーは居合いの構えのまま器用にバック宙をした。
すると空中に「竹と雀」が描かれた巨大な魔法陣…いや、家紋のようなものが浮かび上がり、ジョーカーはそこに着地した。
そして左足で踏み込み勢いよく飛び出し、ものすごい速さで刀を抜いた。
「桜花爛漫…"斬"。」
掛け声とともに刀はストレイシープを捉え、斬り裂いた。一瞬の出来事だった。
反対側に着地をしたジョーカーは、刀を鞘に戻しながら呟いた。
「浄華…!!」
「チンッ」という音で刀が鞘に収まる。その瞬間ストレイシープは崩れさり、少女が1人空中に投げ出された。
急いで踵を返し、少女を抱きとめるジョーカー。
「っと…すまない、少し強引なことをしてしまった。意識は大丈夫かい?」
「あ…あれ……私…たしか…っ!!」
最初は少し意識が朦朧としていたようだが、自分に何があったのかを思い出して怯え始める少女。
「お、屋上から……飛び降りて…それで…それで……。」
「…もういいんだ、君が苦しむ必要はない。ここには君を傷つけるやつはいないから。」
震える少女を優しく抱きしめ、背中をさすり落ち着かせる。
「今まで辛かっただろう、苦しかっただろう…本当によく頑張った。君は偉い、強い子だ。」
「……私…わた…し……っ…うぅ…っ。」
「よしよし…。」
ジョーカーの優しい声がけに少女は安心しきった顔で泣いていた。
「じ、ジョーカー…?今のは…その子は一体……何がどうなって…。」
「すまない士くん、話は後にさせてくれ。」
「あ、う、うん…。」
聞きたいことが山ほどあったが、今聞くべきではなかった。もう少し空気を読まねば。
「さて、何度も言うが君はとてもいい子だ。強くて勇気のある素晴らしい女の子だよ。次はきっといい人生になる。」
「…怖い……またあんな嫌な事ばかりだったら…。好きで生まれたわけじゃないのに…なんで……。」
「…たしかに完全な保証は出来ない。それでもね、生きてみてもいい、君がそう思ったから君が生まれてきたんだ。前は嫌な事ばかりだったかもしれないけど、今度は良い事だらけかもしれないだろう?」
「でも………もしもまた嫌な事ばかりだったらって考えると……生きたくない…。」
「…そっか、そうだよね。君の気持ちにもう少し寄り添うべきだった。よし!じゃあひとまず天国で休憩することにしようか。」
にこっと優しく微笑むジョーカーに困惑した表情で返す少女。
「て、天国……?そんなのあるの…?」
「あるとも。君が想像しているそのままの天国だよ。嫌な事なんて何一つない、正に楽園そのものさ。」
「…そこに行きたい……。もう生きたくない…。」
「うん、うん。分かった、君の望むとおりにしよう。」
そう言うとジョーカーは抱き抱えていた少女をおろし、少女に向かって両手を広げた。
「それじゃあ今から送るよ。君に…幸あれ。」
「はいっ…!!ありがとう…ございます…っ。」
「転送術式!!」
呪文みたいなものをジョーカーが唱えると、少女は白く淡い光に包まれて天へと登って行った。少女を見送ったジョーカーは小さな声で呟いた。
「どうか…彼女に幸せな日々を……。」
「パパー!!」
「バウバウバウ~!!(やったな!!)。」
ジョーカーに駆け寄るイズナとサブロー。
「イズナ!無事で良かった。元気そうだね。サブローもありがとう。」
「うん!パパに会いに来たらお化けに追いかけられて、サブローが助けてくれたの!!」
「バウバウン(どうってことないさ、これが仕事だしな)。」
「あ、あの…、ジョーカー…?」
「あぁ、すまない。士くんには色々と話さないといけないな。1つずつ答えていくことにしよう。」
和気あいあいと話す2人と1匹。仲良さそうなグループに話しかけに行くのは得意じゃないが、今起きた事が知りたかった。
「この子はイズナ。詳しくはまた別の機会になるけど、この子も君と同じで時の廻廊に辿り着いた子なんだ。イズナ、彼は時風 士くん。ほら、自己紹介するんだ。」
"イズナ"と呼ばれた少女の背中を押して1歩前に出すジョーカー。
「…イズナ…5歳…。」
「あっ、時風 士です。よろしくね、イズナちゃん。"士お兄ちゃん"って読んでくれても構わないよっ!!」
この位の年頃の子はまだ人見知りしやすいのだろう。もじもじと自己紹介するイズナに、優しく自己紹介し返えす。
慣れないぎこちない笑顔で笑いかけサムズアップのポーズをとってみたら、イズナは少し心を開いてくれたようでクスッと笑ってくれた。
「よく挨拶できたね、偉いぞイズナ。」
「えへへ!ありがとうパパ!!」
イズナの頭を優しく撫でながらジョーカーは言った。頭を撫でられているイズナも嬉しそうにニコニコしている。
「さて、イズナ。パパは士お兄ちゃんと大事な話があるんだ。向こうの方でサブローと遊んでてくれるか?話が終わったらパパ達もすぐ行くから。」
「うん!分かった!!」
「よし、いい子だ。それじゃあサブロー、頼むよ。」
「バウバウバウ!!(まっかせとけ!子供のお守りは大好きだからな!!)」
いつの間にか元の小さい犬に戻っていたサブローはイズナとじゃれながら時の庭園の方へと走っていった。
「…話の続きといこうか、士くん。」
迷える子羊の咆哮が響き渡り、地面を振動させる。腕を振り回し暴れ続けるその姿は悲しげだった。
「大丈夫、少し怖いかもしれないが痛みは無い。一瞬で君を解き放つから。怖いようだったら目を瞑っていてくれ。」
ストレイシープの目をしっかりと見て優しい口調で言うジョーカー。
するとジョーカーの手にある刀「影切り丸」から眩い光が放たれ、その光とともに桜の花びらが螺旋状に溢れ出した。そしてその花びらはストレイシープを包み込み、身動きを止めた。
「ヴヴッ……ヴォオォオオ…ッ!!」
必死にもがき、自身を拘束する桜の花びらを振り払おうとするが払えない。
そんなストレイシープを真っ直ぐに見て、ジョーカーは居合いの構えのまま器用にバック宙をした。
すると空中に「竹と雀」が描かれた巨大な魔法陣…いや、家紋のようなものが浮かび上がり、ジョーカーはそこに着地した。
そして左足で踏み込み勢いよく飛び出し、ものすごい速さで刀を抜いた。
「桜花爛漫…"斬"。」
掛け声とともに刀はストレイシープを捉え、斬り裂いた。一瞬の出来事だった。
反対側に着地をしたジョーカーは、刀を鞘に戻しながら呟いた。
「浄華…!!」
「チンッ」という音で刀が鞘に収まる。その瞬間ストレイシープは崩れさり、少女が1人空中に投げ出された。
急いで踵を返し、少女を抱きとめるジョーカー。
「っと…すまない、少し強引なことをしてしまった。意識は大丈夫かい?」
「あ…あれ……私…たしか…っ!!」
最初は少し意識が朦朧としていたようだが、自分に何があったのかを思い出して怯え始める少女。
「お、屋上から……飛び降りて…それで…それで……。」
「…もういいんだ、君が苦しむ必要はない。ここには君を傷つけるやつはいないから。」
震える少女を優しく抱きしめ、背中をさすり落ち着かせる。
「今まで辛かっただろう、苦しかっただろう…本当によく頑張った。君は偉い、強い子だ。」
「……私…わた…し……っ…うぅ…っ。」
「よしよし…。」
ジョーカーの優しい声がけに少女は安心しきった顔で泣いていた。
「じ、ジョーカー…?今のは…その子は一体……何がどうなって…。」
「すまない士くん、話は後にさせてくれ。」
「あ、う、うん…。」
聞きたいことが山ほどあったが、今聞くべきではなかった。もう少し空気を読まねば。
「さて、何度も言うが君はとてもいい子だ。強くて勇気のある素晴らしい女の子だよ。次はきっといい人生になる。」
「…怖い……またあんな嫌な事ばかりだったら…。好きで生まれたわけじゃないのに…なんで……。」
「…たしかに完全な保証は出来ない。それでもね、生きてみてもいい、君がそう思ったから君が生まれてきたんだ。前は嫌な事ばかりだったかもしれないけど、今度は良い事だらけかもしれないだろう?」
「でも………もしもまた嫌な事ばかりだったらって考えると……生きたくない…。」
「…そっか、そうだよね。君の気持ちにもう少し寄り添うべきだった。よし!じゃあひとまず天国で休憩することにしようか。」
にこっと優しく微笑むジョーカーに困惑した表情で返す少女。
「て、天国……?そんなのあるの…?」
「あるとも。君が想像しているそのままの天国だよ。嫌な事なんて何一つない、正に楽園そのものさ。」
「…そこに行きたい……。もう生きたくない…。」
「うん、うん。分かった、君の望むとおりにしよう。」
そう言うとジョーカーは抱き抱えていた少女をおろし、少女に向かって両手を広げた。
「それじゃあ今から送るよ。君に…幸あれ。」
「はいっ…!!ありがとう…ございます…っ。」
「転送術式!!」
呪文みたいなものをジョーカーが唱えると、少女は白く淡い光に包まれて天へと登って行った。少女を見送ったジョーカーは小さな声で呟いた。
「どうか…彼女に幸せな日々を……。」
「パパー!!」
「バウバウバウ~!!(やったな!!)。」
ジョーカーに駆け寄るイズナとサブロー。
「イズナ!無事で良かった。元気そうだね。サブローもありがとう。」
「うん!パパに会いに来たらお化けに追いかけられて、サブローが助けてくれたの!!」
「バウバウン(どうってことないさ、これが仕事だしな)。」
「あ、あの…、ジョーカー…?」
「あぁ、すまない。士くんには色々と話さないといけないな。1つずつ答えていくことにしよう。」
和気あいあいと話す2人と1匹。仲良さそうなグループに話しかけに行くのは得意じゃないが、今起きた事が知りたかった。
「この子はイズナ。詳しくはまた別の機会になるけど、この子も君と同じで時の廻廊に辿り着いた子なんだ。イズナ、彼は時風 士くん。ほら、自己紹介するんだ。」
"イズナ"と呼ばれた少女の背中を押して1歩前に出すジョーカー。
「…イズナ…5歳…。」
「あっ、時風 士です。よろしくね、イズナちゃん。"士お兄ちゃん"って読んでくれても構わないよっ!!」
この位の年頃の子はまだ人見知りしやすいのだろう。もじもじと自己紹介するイズナに、優しく自己紹介し返えす。
慣れないぎこちない笑顔で笑いかけサムズアップのポーズをとってみたら、イズナは少し心を開いてくれたようでクスッと笑ってくれた。
「よく挨拶できたね、偉いぞイズナ。」
「えへへ!ありがとうパパ!!」
イズナの頭を優しく撫でながらジョーカーは言った。頭を撫でられているイズナも嬉しそうにニコニコしている。
「さて、イズナ。パパは士お兄ちゃんと大事な話があるんだ。向こうの方でサブローと遊んでてくれるか?話が終わったらパパ達もすぐ行くから。」
「うん!分かった!!」
「よし、いい子だ。それじゃあサブロー、頼むよ。」
「バウバウバウ!!(まっかせとけ!子供のお守りは大好きだからな!!)」
いつの間にか元の小さい犬に戻っていたサブローはイズナとじゃれながら時の庭園の方へと走っていった。
「…話の続きといこうか、士くん。」
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