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第二章
決闘 ライ対レット
しおりを挟むバイマンの屋敷の訓練場。そこでは今、異様な雰囲気に満ちていた。
「ふっ。言い出したのはこっちだが、まさか乗って来るとは思っていなかったよ。互いの力量差も見抜けないとはな」
「何をっ!? それより約束は忘れてないだろうな?」
「ああ。僕が負けるような事があれば、僕の分の通行証を譲ってやる。だが僕が勝ったらその口を閉じて、大人しくここで勇者様を見送れ。いいな?」
訓練場の端と端で、そう言いながら視線で火花を散らすのは二人の少年。ライとレットである。
聖都からの一団はオーランドを残して帰り支度の為にここを離れ、バイマンとユーノ、開斗とヒヨリは事の成り行きを見守っていた。
「ライ」
「先生っ! 止めないでくれよ。これは好機なんだ。ここで勝って聖都への通行証を分捕る」
『ライ君っ! やっちゃってくださいよっ! お兄さんとして良いとこ見せなきゃっ!』
「う~ん。個人的にはライだけ付き添うのもまだ不安が残るんだが……確かにユーノのメンタル的にはライが一緒の方が良いか。何はともあれ、頑張ってきなさい。ただし油断しないように。相手は中々に強そうだ」
「おう!」
開斗とヒヨリの激励に、ライは勢いよく腕を上げて応える。そこへ、
「兄さん……気を付けて」
「分かってるって。任せろ!」
大切な妹からの言葉を背に受け、ライは訓練場の中央へと進む。そして、
「レット。君らしくもない。何故こんな勝負を持ち掛けた? この勝負勝っても負けても君に得がない」
「さっき言った事が全てですよ。少しカチンときたから、あの世間知らずのお坊ちゃんに痛い目を見せてやろうってだけ。……大丈夫。ちゃんと手加減はします」
オーランドとそう言葉を交わしつつ、レットの方も訓練場の中央へ。それに合わせてオーランドと、これまで黙っていたバイマンも歩き出す。
「審判役は私、バイマン・ブレイズと」
「オーランド・リオネスの両名が受け持とう。……というものの本当にやるのかねライ君?」
「ああ……じゃなくてはいっ!」
流石に父の友人とあり、ライもオーランドに対して少しだけ口調を改める。
「そうか。ではもう止めはすまい。ルール説明はバイマンから」
「では私から。ルールは簡単だ。相手をこの円の外に出すか、降参させるか、私達がそれぞれこれ以上の続行は不可能だと判断するような一撃を与えたら勝ち。やり方は問わない。武器は公平を期すため、こちらで用意した訓練用の木剣をそれぞれ使用してもらう。勿論オーランドが検分済みだ」
そう言って差し出された二振りの木剣を、ライ達はそれぞれ受け取る。
「では両者位置について。こちらが合図したら試合開始だ」
「試合になれば良いですけどね」
「はっ! 言ってろよ」
レットがそう言って挑発するが、ライも言葉少なにそう返す。試合は剣を交える前から始まっているのだ。そしてそれぞれが剣を構え、
「では…………始めっ!」
「はあああっ!」
試合開始の宣言と同時に、先に切り込んだのはライの方だった。その神速の踏み込みは一瞬にして互いの距離を詰め、レットを袈裟懸けにしようと振り下ろされる。並の剣士では普通に不覚を取る一撃だったのだが、
ガツンっ!
レットは咄嗟に反応して剣を受け止める。そのまま互いに木剣が軋む音を立てながら鍔競り合い、
「……今度はこっちの番だ。はあっ!」
「くっ!?」
そのままガンっと力強く剣を振るわれてライは数歩押し返され、今度はレットが剣撃を打ち込む。
一撃、二撃、三撃。一つ一つの剣は重く、ライも中々攻撃に移れない。だが、
(コイツ手強い。だけど……勝てなくはない。父さんに比べればずっと弱い)
単純な力はレットに分がある。しかし剣の速さと型の正確さは互角かライの方が僅かに上。そして足運びは間違いなくライの方が上だった。
実際レットの剣筋を、少しずつではあるがライは既に見切り始めており、最初に比べて反応する速度が速くなってきていた。そして、
「……ふっ!」
短い一呼吸と共に、一瞬の隙を突いてライが攻勢に転じる。それも細かいステップを織り交ぜて、右かと思えば左、左かと思えば右と剣筋を読ませない猛攻だ。これにはレットも僅かに冷や汗をかきながら防御に徹し始める。
「ほぉ。中々良い動きをするじゃないかライ君は」
「ああ。親のひいき目を抜きにしても、ライの剣才は同年代でも頭一つ……いや二つ抜けている。その上最近では、そこのカイト殿からジュードーなる武術まで学んでいてな。足運びを重点的に鍛えた結果あそこまでに至った。それに剣だけで張り合えているレット君も見事なものだ」
「ああ。様々な事情から隊で預かっているのだが、いずれは正式に入りたいと再三せがまれている。多少気がかりな点はあるが将来有望だよ。……魔法戦においてもな」
審判二人がそう二人の戦いを評する中、戦いはより激しさを増していき、
「ふんっ。言うだけはあるじゃないか。ちょっとはやるみたいだな」
「そっちこそ、ただ口が悪いだけの奴ってわけじゃなさそうだ。だけどこのまま行けば勝つのはオレだぜ」
一度仕切り直すように再び距離を取ると、二人は軽く汗を拭いながらニヤリと笑う。ここまでの戦局だけを見るならライの方がやや有利。だが、
「ああ。認めよう。勇者様のお兄さん。確かにお前の方が少しだけ剣の実力は上だろう。このまま行けば僕の不利。なら……これはどうかな?」
レットは一度深呼吸すると、大上段に剣を振りかぶって一気に突撃を仕掛ける。ライはカウンター気味に胴を横薙ぎにしようと待ち構えて、
「ライっ!? 気を付けろっ!?」
「……っ!? ダメ兄さんっ!? 足元っ!」
「遅いっ! “土壁”っ!」
開斗とユーノが叫ぶのと、走りながらレットが無詠唱で魔法を使ったのはほぼ同時。その瞬間足元がぐらついたかと思うと、急に地面が盛り上がってライの身体は上に跳ね上げられる。
そしてそれは、丁度目前に迫ったレットの剣の絶好の位置取りで、
「おおおおっ!」
ガツンっ!
「ぐああああっ!?」
鈍い音と痛みがライの肩口に響き、そのまま勢いよく身体ごと地面に叩きつけられた。
◇◆◇◆◇◆
作中で言ったように、剣の腕だけならライの方が上ですが、魔法戦の経験がまるで足りなかったためそこを突かれてレットに軍配が上がりました。やはりライバル枠ですからね。最初は向こうに勝ってもらわないと。
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