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第一章異世界に舞い降りたキチガイ

NPCと主人公3/3

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俺が聞いた恐ろしい話を聞かせてやる。
この学校には、いろいろな噂が多数あるがその中でも特にこれは恐ろしい。
ちなみに一番恐ろしい噂は新聞部についてで、これは二番目に恐ろしい噂だ
この学校にとても仲の良い親友といえる中の少年が2人いたそうだ。

ところが野球部員のハマ、、、ここではH氏としておこう。
そのH氏が自分の私利私欲を満たすためにもう片方の親友を裏切って文化祭実行委員に着任させた。
もう片方の友人は抵抗したが先生すら味方につけるH氏の卑劣な計画的犯行の前にはあまりにもその親友は無力だった。
君が出来ないことを僕みたいなNPCが出来るわけないじゃないか・・・という思いを伝える為に彼は仕置き人となって行動を起こした。

報復対象の野球部員H氏は運悪く何者かに昼食に睡眠作用を高める食物を大量に混入されていたらしく、放課後にはぐっすりと眠っていた。
それを確認した仕置き人はあらかじめ用意されていた、バリ・・・バチカン先生の協力により仕置き人は彼に処置を施した。

作戦考案中、俺、、、ゲフンゲフン!、、、仕置き人は思ったらしい。
報復対象とはいえ大事な友人、あまりにきついお仕置きは心が痛むwwwwwww
そんな考えが頭をよぎったとき、天啓が下りた。

そういえば、彼は坊主頭がネックであまりモテないと愚痴を漏らしていた。
しかし、坊主頭でもモテる人間が世の中にはいるじゃないか。
彼が周りの人から奇異な目で最初は見られたとしてもは最初は仕方ない。だって最新鋭のシャレオツは周囲の駄凡なNPCには理解されないものだから!

そうして仕置き人は野球部員H氏にEXAカットを施した仕置き人は結果に満足げに頷くと闇の中へ消えていった。
ちなみに文化祭実行準備委員会が今日から始まるのでちょっと顔を出して見れば闇の仕置き人があなたの後ろにバチカン先生をもって立っているかもしれない
おや?ウイいいん!とホントに音がするよ?

FROM 鷺ノ宮高校七不思議より 『恐怖の仕置き人とEXAカット』

「恐ろしい話もあるもんだ・・・」
「うん、僕にバリカンを向けて、話すHANASIじゃないよね?」
「仕置きの前に、言い残すことそれだけかい?」
「・・・周りを見て?目立ってるよ?」
「チッ」

目立つことはNPCにとっては論外・・・俺はういいいいんと唸るバチカン先生を懐にしまった。
安堵する新聞君。
バリちらをするとその顔はまた凍り付く。・・・なにこれ面白い。

ちなみに後日、新聞君の家の自室に実姉モノのイケない本が大量に何者かによってばらまかれたことにより家族会議が行われたらしいが、それはまた別の話である。
俺ことNPCの如峰月桜と重要NPCの新聞佑君は、生徒会館にいる。

何故に主人公でもないのにごく平凡な一NPCがリア充空間な生徒会にいるんだとか思うだろうが、ここが文化祭実行委員会の会議場になっているからだ。
私立鷺ノ宮学院は新校舎設立以降、方針の一大転換を行い始めたため、他の学校から見ると変に思える点が多い。
この生徒会館もその一つだ。

たかが生徒会7人の為に100人は余裕で入れる大広間に、クーラー完備、ソファはイタリアの高級家具ブランド、仮眠室などのあまりに膨大な設備をこれでもかと詰め込んだため、生徒会『室』というよりも生徒会『会館』だ。

こんなことになってるのは、鷺ノ宮が新校舎設立と共に行った方針転換として、ただの自治組織であった生徒会を学校のメインシンボルとすることを決定したことが理由だ。
その超厚待遇の結果がこの館なのである。

そして文化祭実行委員会とはその素晴らしい好待遇の生徒会の拡大組織であるため、こうして生徒会室に集められている。
なんだかんだで実行委員会が生徒会のパシリであることを匂わせる。

「はあ、、、初日は学級長まで集められるなんて聞いてないよ・・・まだ課題曲すら決めてないのに。」
「新聞君、もう独断で決めちゃえよ?誰も責めないって、絶対。」

俺は新聞君と隅の隅にあるソファを占領して寛いでいた。
朝日奈さん?
どっかで上位カーストさん達とお話されてると思いますよ?

「ハーイ!全員ちょっと場所開けてくれ!隅によって!」

と、、、男子生徒会副会長が隅によってと、二階の本室から現れた。
生徒会副会長と書かれた銀色のピンバッジを胸元に縫い付けてあるためこの前の彼だと分かったが、髪は黒色に戻されピアスの穴はどうやったのか塞がれていた。
妙に疲れた顔をしたその生徒会副会長は、皆が隅に寄ったことを確認したら、合図をした。

次の瞬間、天井がガンと大きく開いたかと思うと、床が開いた天井からゆっくりと降りてきた。
床の上には予備校においてあるかのような新型のマックのノートパソコン完備のシステムデスクずらり。
そしてその横には指定の札とプリントがしっかり設置されていた。
高校生の分際でどんなハイテク会議になるのだろうか・・・

そして大きなシアター。
「第58回文化祭実行委員会」という文字が大々的に映し出されていた。
皆が移動し始めたので、俺たちも移動をし始める。

それはいいんだが、生徒会役員が遠くで6人集まって生徒会長はどこ行ったみたいな話をしている・・・大丈夫かよ?
1年は年功序列の為かかなり後ろの席だったため、元からNPCっぽく隅の隅にいた俺たちはあっさりと1-Bの席を見つけた。

あれ?
そこにはすでに一人の女性が座っていた。
もちろん朝日奈さんではない。
彼女は美少女であり女性ではないからだ。・・・ここは譲れない。

うちの制服を着て、上級生のリボンをつけているからこそ彼女が高校生だと分かった。
もし私服でも着ていれば、大学生かと思ってしまうだろう。
隣の席に着くことすらためらわれるほどの美貌だったため、俺も新聞君もその場に手持無沙汰に突っ立っていた。
彼女はどうぞ座ってと手振りで示したので恐る恐る座る。

「ごめんなさいね、ちょうどいいところにこの席があったから。ほら?木を隠すなら森の中っていうじゃない?」
「まあ、そこの席の人はまだ来てないみたいなんで、もうちょっとだけなら大丈夫だと思います。けどあんまりわがまま言っちゃだめですよ?あの人たちもかわいそうですし。」
「ふふふ、手厳しいのね。」

どうやら新聞君は彼女のことを知っているらしい。
どっかで見たことのある顔なんだが、あんまり覚えていない。
ゆるくウェーブがかかった腰まで伸びた髪。穏やかな物腰に落ち着いた声。
お嬢様系・・・巨乳ヒロインがここにいる!

良くあるデカければいいというものではなく美巨乳という体の黄金比にしっかりと一致した素晴らしい代物である。
理想の大きさがここにある!
良く引き締まった腰との対比も黄金比!
これは、、、黄金比先輩として崇め奉らねばならんレベルである。

新聞君と黄金比先輩がぎこちない世間話をしているのも軽くする―して、俺の視線が黄金比の探求にいそしんでいると急に声をかけられた。

「君、、、もしかしてこれが気になるのかな?」
「ひゃい!?」
「ふふふ、図星みたいね。」

そう言って彼女はポンポンと自分の胸を叩いた。
わ、わずかな振動であったにもかかわらず、ふるんふるんとかすかな揺れが、、、見える、、、だと?

「触ってみる?」
「な、、、、なんです、、、、、と。」
「ふふふ、、、柔らかいよ?凄く。気もちくて病みつきになっちゃう。」
「い、良いんですか?」
「良いわよ、、、ほら♡」
「ではお言葉に甘えさせていただきます!」

俺の指でどんどん形が変わっていく。
おおう、、、柔らかい、、、なんて柔らかいモノなんだ。
そしてなんて、俺に、、、、悲しみを与えるシャーペンの持ち手のゲルの柔らかさだ(泣)

新聞君は『騙されるなよ、童貞・・・おい、童貞www』と耳元で囁いてくる。
うっさい、お前とは絶交だ!この秀才イケメンめ!
後で母親に実姉物のエロ本が見つかって、泣き喚くがいい!

ちなみに黄金比先輩の『胸ポケット』から取り出されたペンは、人体で一番柔らかいモノの柔らかさを真似た高級ペンだったらしい。
畜生、ご馳走様でした!

んん!?・・・あの人今、間違いなく『してやったり顔』をしていた。
ま、まさかこいつ、、、アクティブ系逆ハー主人公か!?
アクティブ系逆ハー主人公とは朝日奈が無自覚にモテまくっているのとは反対に、自分がモてるようにあらゆる策を用いちやほやされる自分を楽しむ、『純粋で清らかな童貞』の『敵』である!

このアクティブ系逆ハー主人公という名のビッチは、恋愛経験が豊富なため憂さ晴らしにと童貞をこうやって弄んでそんな自分って罪だわーとかするのが好きなんだ!悪趣味すぎるっ!
現在の女性主人公の主流は朝日奈のようなパッシブ系逆ハー主人公であるが、乙女ゲームでもハーレムルートが存在しそんなゲームをハーレムルート目当てでやってるくそビッチ共がいる限り、アクティブ系逆ハー主人公は未だに無視できない巨大な勢力であるといっていい。

俺が涙目で歯を食いしばりながら、黄金比先輩に負の念を送っていると先輩はそんな俺の様子にくすくす笑いながら急に立ち上がった。

「後ろのお嬢さんが怖いし、もうそろそろお暇するわね。楽しませてくれてどうもありがとう。面白い意見期待しているから、『生徒会長』として。」
「「あ、はい」」
「さっさとどいてもらえないと、座れないんですけど?」
「あら、ごめんなさい」
「うわっ!いたの、朝日奈さん!?」

マイナスなオーラが後ろから圧し掛かって来たので、後ろを見る。
そこにいたのは朝日奈楓さんであられた。
普段だったら見惚れてしまうところだが、何故か今日に限っては彼女を見てると残念な気持ちになってしまう・・・なぜだ?
そんなことを考えているうちに黄金比先輩はじゃあねと手を振って、生徒会役員の机へと向かっていった。
ぼおっとそんな黄金比先輩を見ていたら不機嫌そうな朝日奈さんが珍しく話しかけてきた。

「桜ちゃ、、、如峰月くん、たのしそうだね?何にやつきながらペンをにぎにぎしてんの?あんな乳女見ながら?」
「へ?」
「ぶふっ!?まじかあ・・・」

主人公の朝日奈さんが話しかけてくるなんて、そうとうアクティブ系逆ハー主人公に対抗心を持っているのだろう。
清純派な人ほど、ビッチを毛嫌いするという童貞の妄想は現実だったのか。
それとも主人公は二人いてはいけない論的に、主人公同士は仲が悪いのだろうか?

俺と同じ感性の新聞君も驚きで吹き出し、その後に悩んでしまうくらい興味深い事である。
もにゅもにゅしながら考察を深めていく・・・ん?もしや。

「胸が『チッぱい』だから黄金比先輩を見てイラついてんの?朝日奈さん?」
「・・・・・」
「え?なにいってんの?桜君?」

ものっそい冷たい目で、朝日奈さんは無言で俺を睨みつけた。
新聞君は無いわあと唇をひくひくさせた。
よく考えたら、結構セクハラ発言だったろうか?
もにゅもにゅしながら、首を傾げる。

もにゅりながら考えを深めていく。
様々なラノベヒロインも貧乳でありながら多くの主人公を落としてきたというのに・・・何が不満なんだ・・・分からない。
考えを深めてく間も会議は順調に進んでいた・・・・『いた』。

そう、、、その時までは、黄金比先輩の手腕により皆が一致団結していた。
その最高のボルテージの中、黄金比先輩は今日の本題に入った。
それでも歯車は狂っていった・・・・何気ない一言から。

「明日までに文化祭のスローガンをクラスでそれぞれ一つ提出してください。」
「「なん、、、、だと、、、、」」
「・・・?1-Bさん、なんかすんごい男子の方々が絶望したって顔してるけど、、、大丈夫かしら?」
「会長!うちのクラスでは最低2000個はスローガンの案が出ます!最低1週間下さい、じゃないと無理です!」
「2、2000個・・・?さ、最低・・・?スローガンの案提出だけで・・・1っ週間!?」

俺たちが絶望して灰になってると、うちの『主人公』がさっそく暴走し始めた。
生徒会長ですら、若干引いている。
誰か本当にあいつの口塞いでくれ。
願い届かず主人公は暴れ出す。

「いや、スローガンって大事だけど、他にも体育祭の協議とかいろんな仕事が山積みだから1週間もかけるのはちょっと無理ね・・・」
「何言ってんですか、会長!?学校皆の思い出になる行事でも文化祭は特に特別なんですよ!スローガンから全力出していかないでどうするんですか!?」
「え?今理由言ったわよね?」
「スローガンから全力出してかないでどうするんですか!先行きが不安になります!皆いつから全力出せばいいのか不安になります!『たった3ヶ月』しかないんですよッ!」
「だーかーら!予定組み立てて作ってんのよ!スローガンにそんなに時間をかけるようなやり方してたらせっかく『3か月も』時間もらってても全然足りないわよ!」
「足りないから寝る時間と食事を取る時間と風呂に入る時間と登校時間と下校時間を削って作っていくんじゃないんですか!?そんなことも分かんないんですか!?生徒会長のくせに!デカ乳のくせに!」
「この脳足りん!3か月も文化祭前日のテンションで持つわけないでしょ!?」

全力少女は主人公であり、そしてその主人公テンプレをしてしまうほど頭が悪い。
まあ、そこも萌えーとか言ってしまうバカもいる。
生徒会長と朝日奈さんが肩を激しい怒りで上下させる中、朝日奈さんの逆ハー要員の男子生徒副会長がまるで戦場に行く死兵のような顔をしながらマイクを取って立ち上がった。

「いや、出来る!」
「何言ってんの、あのバカ!過労死するぞ、新聞君みたいに!」
「僕、まだ生きてるよ!?」
「朝日奈たんの為なら死ねるっ!・・・点滴打っとくか」
「やれやれ、ナンパの時間を減らすしかないね・・・生命保険はどうすれば入れたっけ?疲労で倒れるかもしれないし。」
「朝日奈さんが死ねっていうんだから仕方ないね、僕も協力しよう!・・・総合的に睡眠時間を何百時間削ればいいんだろうね?」

他の逆ハー要員まで、暴走し始めたッ・・・アンタら、やっぱり漢だよっ!
主人公の窮地(頭が残念な子という事が発覚)には必ず駆けつけるとは・・・
ネット上でも『朝日奈たんが死ねっていうんだ・・・俺死んでくるよ!』とか、『俺、過労で死んだら天国から朝日奈たんに告白するつもりなんだ・・・』とか盛り上がり始める。
やばいやばいやばいっ!このままでは、俺まで過労死決定な文化祭になってしまう!
場はどんどん荒れ始める。

収拾をつける立場の生徒会長が生徒副会長君をアイアンクローしている為に、いつまでも収拾がつかない。
てか、生徒副会長君の髪とかピアスとかいろいろ直させたの絶対この人だ!

そんな中、女の方の生徒副会長が仕方ないなあという感じで、壇上に上がった。
お?もしかして、『生徒会』という物語の中の苦労人役の重要NPCか!?その人は大きくため息をつくと息を大きく吸い込んで・・・

「なに、無い乳のいう事にいちいち大騒ぎしとんじゃああ!お姉さまが明日までゆうちょんやけん、明日までに何とかせんかい!この無い乳好きのロリコンの変態どもがっ!」

まさかの第二勢力の乱入来たああああああああっ!
『そうだ、無い乳の横暴を許すな!』、『巨乳こそ至高!』と口々に騒ぎながら、朝日奈派の前に立ち塞がる。

まとまりは無いが質だけは最高級の朝日奈派(貧乳派)と黄金比にこれまで男の夢や女のこの大事なものを捧げた忠誠心溢れる生徒会長派(巨乳派)。
会計や書記までその不毛な戦いに参入し始め、戦争はいよいよマックスビートに突入・・・する前に俺は新聞君を見捨てて逃亡した。

「いや、僕は別に貧乳とか好きじゃないです・・・え?巨乳が好きかって?いやそんなに魅力は感じてないです・・・え?巨乳派につかねばお前の命は無い?君、女の子がそう簡単にからかわないで・・・なんで包丁っぽいもの持ってんの?・・・いや、そんな目だけが笑ってないヤンデレスマイル向けられても僕の答えは・・・ぎゃああああああ、桜君タスケテーーーーーーーー!」

秘儀、『友人の尊い犠牲(ベスト・フレンド・サクリファイス)』! 
新聞君、いつも朝日奈さんに過労死に追い込まれ最終的に生徒会長派の手段を選ばないヤンデレっ娘に刺殺される(まだされてないし、生存フラグがあるかもしれんが)という最後とは・・・主人公に最後まで振り回される悲しい人生だった。

「桜くうううううううううん、貧乳派の君を差し出せば、僕は巨乳派に入会だけで済むらしいんだけどーーーーーー?どこーーーーーーーー?僕を見捨ててどこに行ったのーーーーーーー?」

ま、まさか新聞君まで、禁断の魔法である『友人の尊い犠牲(ベスト・フレンド・サクリファイス)』を習得しているだと!?
俺は遠くから聞こえるそんな声に、耳を貸さず全力で校内から脱出した。
さ、さあて、、、今日の夕飯は何にしようかな・・・


「ぎゃあああああああああ、包丁がああああああああ、皮膚にくいこんでるうううううううう!」

に、肉と包丁を使わない料理にしよう・・・トラウマになりそうだ。




教室で荷物をまとめながら新聞君への黙祷をしていた。
今日の夕飯はローストビーフを作ることにしていたが、切り分けるときに・・・思い出すので包丁を使わなくていい一日分の野菜シリーズとウインナーとチーズとマカロニでグラタンでも作るか。
そんなことを考えていると、ガラッと扉が開いた。

屍人(新聞君)が俺を追って来たのか!?
・・・と思ってしまったが、そこにいたのは生徒会室で今でも戦場の中心にいるはずの朝日奈楓だった。

「あ、さくらち・・・・」
「あれ?もう戦争終わったの?朝日奈さん?」
「え?うん?・・・如峰月君。なんか、私の意見みんな尊重してくれるのは良いんだけど松山先輩とか畑君とか途中から自分の意見をしゃべって私の話聞いてくんないから途中で抜けてきちゃった。」

てへ・・・と何故か照れた顔で笑いかけてきた。
てか、あの戦場をそのままにして出てきただと・・・・ななな、なんてことをしてくれてんの。
今、あの戦士たちの心を支える女神が普通に帰還・・・・俺だったら泣くぞ!?

まあ、朝日奈さんのようなノンアクティブ主人公の場合、逆ハー要員の制御がたまにしかできないSEKKYOUしかない為こうして暴走してしまうことが多い。
『主人公』として物語の中盤では暴走気味な逆ハー要員に悩まされるというのは主人公にありがちなテンプレである。

「そう、大変だね。俺は夕飯の買い物あるから・・・じゃあね。」
「ちょっ・・・ちょっとだけお話していかない!」

夕日に照らされた彼女の顔は真っ赤に染まっていた。ちょっとドキッとしたが俺は何とか言葉を紡ぐ。

「な、何をお話しますか・・・?」

もじもじしながら彼女はうーんとここは率直にとか、いや婉曲的にとか言いながら悩んでいる。
最終的に最初に別の話題嚙ませてから別の話を・・・とか口にしてから彼女の脳内会議(口に出てる)は終了した。

彼女はきゅっと小さな手を何かを決意したように握りしめてから、彼女は見慣れているはずの俺ですらどきっとするような真面目な顔をしていった。

「わ、私とちょっとだけ文化祭のスローガンについてお話しませんか!」


一瞬の沈黙の後、俺の体は逃げの姿勢をとって駆けだした。
・・・全力で俺は逃げ出そうとしたが、残念なことに俺の制服の裾を彼女は全力で引っ張っていた。
普段は美少女の手なのに、こんな時だけギリギリとまるで地獄に引きづりこむかのような禍々しい手である。

「いいじゃん!そんなに長い話にしないようにするよお!他にも大事な話あるし!」
「断る!」
「即答!?」

俺の世界がこんなに歪んで見えるはずがない!恐怖でただ目から涙がこぼれてるだけだ!
tasukete,tasukete,tasukete...
コレハトモダチヲミステタ『バツ』デスカ?

この超越美少女のちょっとは、丸々3時間はかかることを示す!
それを俺は昔から知っている・・・経験的に俺の夕飯を作る時間の危機だ!
やめて!これ以上引き止めないで!桜さんのSAN値がゼロになっちゃう!

そんな俺の生命の危機なぞ知ったことかと、この鈍感系美少女主人公は俺を引き留める。
彼女謎の馬鹿力で、ギリギリと俺の腕を両腕で締め付けながら必死に叫んだ。

「なんでそうなの!昔はこういう時、『面白いからあり!』とか言って一緒にがんばってくれたじゃん!桜ちゃんのばか!」

体の動きが・・・思わず止まってしまう。
考えてしまうのは、昔の記憶。
まだ、『他人』ではなく『幼馴染』として側にいれたころの記憶。
当時、朝日奈さんが俺を桜ちゃんと呼んでた記憶。
まだ、『こんな自分』でも、『主人公』になれるなんて信じてた頃の記憶。

朝日奈さんと対等に付き合えるなんて考えて、結局、現実を突きつけられた惨めな自分の記憶・・・強張って固まる自分を、ようやく諦めたのかと勘違いしたのか、俺の前にニッコニコで現れた朝日奈さんに俺は・・・

「ごめん、昔と今では全然違うから。」

もがくことをあきらめたことで、
感情を爆発させてたあのころの自分を恥ずかしいと思ってしまったことで、
随分体に染みつけられてしまったNPC顔の無難で、、、無様な笑みで・・・

俺は彼女に笑いかけた。

「え・・・?」

その笑みをみて彼女は後ずさりしてヘタレこむ。

「だ、大丈夫!?」

俺はなんとなく彼女がそうなった理由には気付いているが、俺は気付かなかったことにして彼女を近くの席に座らせる。
本当は分かってる・・・でも俺はただのNPC。
『主人公』を慰めるのには、『NPC』の俺では役不足だ。

「あっ!・・・ごめん、スーパーで今日絶対に買いたい特売品があったんだ!急がないと無くなっちゃうからもう出るね!じゃあ!」

教室から出ようとしていたら面倒な人が教室に入って来た。
朝日奈の逆ハー要員のちょい悪イケメンのヤンキーさんだ。
恋するヤンキーさんは落ち込んだ様子の朝日奈さんを見るや、俺にいきなり突っかかって来た。

「てめえ、楓に何しやがった!」

まず最初にするのは朝日奈楓の慰めだろうが・・・
原因がそばにいられちゃ、主人公も何も話せなくなんじゃん・・・
俺をさっさと教室から出せと思っていたらまた、胸ぐらを掴んで吊り上げ・・・

またかよ・・・馬鹿の一つ覚えみたいに・・・
下手したら窒息させられそうだし、逆ハー要員にしては血の気が多すぎるからすぐに退場させられるだろうこいつは・・・イライラする・・・・もういいか。

「も、、、」
「も?」
「物語の進行ぐらい読んで行動しやがれ!この嚙ませ犬があああああ!」

俺は胸元に差し込んだままだったボールペンを取り出すと、体の神経部を司る部分をドドンと6発ほど点いた。
ちょっと、、、いや、かなりすっきりした。

「ふう、、、」

今度こそ俺はNPCっぽく教室を出ることに成功した。
そして、俺は逃げ出した!・・・・・・これも成功した!
そして後悔する。

何してんの俺ええええええ!?

報復が怖かったので、しばらく逃げ回っていた。
が、特に彼が追ってきてる話は無かったのでようやく安心して休憩できた。
後悔ばかりが頭を占める。
逆ハー要員とはいえ、普通なら不良漫画の主役を張れるハイパーイケメンである。
そんな彼を小突いたとなれば、死の未来しか思い浮かばない。

ああああああああああああ、校門前で待ち構えてそうだな~
後、朝日奈さんとも鉢合わせると面倒だなー気まづいな・・・しょうがない。裏門通るか。
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