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第十八話:後輩、怒る
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『今日、どこか遊びに行きませんか?』
土曜の朝――もとい昼に起きると、スマホに都築からメッセージが入っていた。
普段はもっと早く起きるのだが、昨日は紗香が置いていった小説を読んでいたらハマってしまい、久しぶりに夜更かししてしまった。
「やっべ……」
メッセージが送られてきたのは午前八時頃。
意外と律儀なあいつのことだ。もしかしたらずっと待っているかもしれない。
さっさと諦めていてくれよ――そんな願いを込めて返信する。
『すまん、今起きた』
すると送って一分も経たないうちにスマホがけたたましい音を鳴らして着信を告げた。
「うおっ!」
驚いて声が出た。
画面に表示されている名前は「都築藍那」。
ま、そりゃそうか。
怒られるであろうことを予想しながら、受話マークをタップする。
「……もしもし?」
『――先輩っ! おっそい! 今何時だと思ってるんですか!』
「あー……午後の……一時半だな……」
『こんな時間まで寝てるなんてちょっと怠けすぎじゃないですか!? 未読スルーされたかと思っちゃったじゃないですか!」
都築はご立腹のようだ。
理不尽にも思うが、都築にとっては貴重な週末の土曜の午前いっぱいを潰された形になる。
少しくらい腹を立てても仕方がない。
「悪かったよ。それと今日はたまたまだ遅く起きただけで、いつもはもっと早く起きてるって」
『えー……怪しいなあ。そんなこと言って、本当は休日の度に昼まで寝てるんじゃないですか?』
「本当にたまたまだよ。けど、すまん。待たせちゃったみたいだな」
『あ、いえ……勝手に待ってたのはこっちなので。私の方こそ、約束してたわけじゃないのに怒鳴っちゃってごめんなさい』
さっきは勢いもあったのだろう。電話口から察せられる都築の態度があからさまに小さくなった。
言ってみればどちらも悪くないんだろうけど、結果として都築は不利益を被り、俺は何の損もしていない。
そんなのはフェアじゃないし、今日は付き合ってやらないとな。
「じゃあ……どっちも悪くないってことでこの件は終わりな。それはそれとして、今日俺、暇なんだけど、どこか行くか?」
『行きます行きます! どこかご希望ってありますか?』
「そこは好きに決めていいぞ。俺はどこでもいいし」
『どこでもいいが一番困りますっ! ――というのは……まあ本音なんですけど……元々私が誘ったので、それなら私が決めますね』
『うーん……』都築の考えているような声がスマホの向こう側から聞こえてくる。
すぐに何か言われるものだと思っていたら、意外と何も出てこない。
元々単に暇だっただけか、それとも何かやりたいことはあったけど今の時間からはやれないのかの、どちらかなのだろう。
俺が何か考えてもいいんだけど、せっかく決めてくれるって言ってるし、お言葉に甘えておこうかな。
と、そこでふと思い出した。
そういえば俺、昼飯食べてないな。
「考えてるとこ悪い。――都筑ってもう昼ご飯食べたよな?」
『あ、はい。食べちゃいました』
「なら、俺軽く何か食べてから準備して行くわ。今が十三時半だから……十四時半集合でいいか? それまでゆっくり考えといてくれ」
『はーい。わかりま――あ! もう一回確認ですけど、先輩、お昼まだなんですよね?』
返事を聞いて切ろうとしたのだが、途中、都筑が何か思い出したかのように訊いてきた。
「まだだけど……」
『それなら私、今から先輩の家行きますよ。昨日の夕飯の残りでよければ冷蔵庫にありますし。それとも先輩、何か食べる物ありました?』
「ないけど……。え、くれるの?」
『はい。なので先輩は食事のことなんて気にせずに準備しててください。その方が早いです。今すぐ向かっても大丈夫ですよね?』
「ああ。俺はいつでもいいぞ。寝起きでぼさぼさだけど」
『ふふ。そんなの全然気にしないでいいですよ。ではまたすぐに』
「おう」
都筑が通話を切ったのを音で確認してから、俺も終話ボタンを押した。
さて……と。
せっかく都筑もああ言ってくれてるんだ。
少しくらい準備してないとな。
それにしても都筑のやつ、この前会ってから妙に絡んでくるな。
見た目が変わったと言っても都筑は都筑だし、ただ昔馴染みの先輩に会って懐かしさと珍しさから声掛けてきてるだけだとは思うんだけど……。
――他意はない……よな?
土曜の朝――もとい昼に起きると、スマホに都築からメッセージが入っていた。
普段はもっと早く起きるのだが、昨日は紗香が置いていった小説を読んでいたらハマってしまい、久しぶりに夜更かししてしまった。
「やっべ……」
メッセージが送られてきたのは午前八時頃。
意外と律儀なあいつのことだ。もしかしたらずっと待っているかもしれない。
さっさと諦めていてくれよ――そんな願いを込めて返信する。
『すまん、今起きた』
すると送って一分も経たないうちにスマホがけたたましい音を鳴らして着信を告げた。
「うおっ!」
驚いて声が出た。
画面に表示されている名前は「都築藍那」。
ま、そりゃそうか。
怒られるであろうことを予想しながら、受話マークをタップする。
「……もしもし?」
『――先輩っ! おっそい! 今何時だと思ってるんですか!』
「あー……午後の……一時半だな……」
『こんな時間まで寝てるなんてちょっと怠けすぎじゃないですか!? 未読スルーされたかと思っちゃったじゃないですか!」
都築はご立腹のようだ。
理不尽にも思うが、都築にとっては貴重な週末の土曜の午前いっぱいを潰された形になる。
少しくらい腹を立てても仕方がない。
「悪かったよ。それと今日はたまたまだ遅く起きただけで、いつもはもっと早く起きてるって」
『えー……怪しいなあ。そんなこと言って、本当は休日の度に昼まで寝てるんじゃないですか?』
「本当にたまたまだよ。けど、すまん。待たせちゃったみたいだな」
『あ、いえ……勝手に待ってたのはこっちなので。私の方こそ、約束してたわけじゃないのに怒鳴っちゃってごめんなさい』
さっきは勢いもあったのだろう。電話口から察せられる都築の態度があからさまに小さくなった。
言ってみればどちらも悪くないんだろうけど、結果として都築は不利益を被り、俺は何の損もしていない。
そんなのはフェアじゃないし、今日は付き合ってやらないとな。
「じゃあ……どっちも悪くないってことでこの件は終わりな。それはそれとして、今日俺、暇なんだけど、どこか行くか?」
『行きます行きます! どこかご希望ってありますか?』
「そこは好きに決めていいぞ。俺はどこでもいいし」
『どこでもいいが一番困りますっ! ――というのは……まあ本音なんですけど……元々私が誘ったので、それなら私が決めますね』
『うーん……』都築の考えているような声がスマホの向こう側から聞こえてくる。
すぐに何か言われるものだと思っていたら、意外と何も出てこない。
元々単に暇だっただけか、それとも何かやりたいことはあったけど今の時間からはやれないのかの、どちらかなのだろう。
俺が何か考えてもいいんだけど、せっかく決めてくれるって言ってるし、お言葉に甘えておこうかな。
と、そこでふと思い出した。
そういえば俺、昼飯食べてないな。
「考えてるとこ悪い。――都筑ってもう昼ご飯食べたよな?」
『あ、はい。食べちゃいました』
「なら、俺軽く何か食べてから準備して行くわ。今が十三時半だから……十四時半集合でいいか? それまでゆっくり考えといてくれ」
『はーい。わかりま――あ! もう一回確認ですけど、先輩、お昼まだなんですよね?』
返事を聞いて切ろうとしたのだが、途中、都筑が何か思い出したかのように訊いてきた。
「まだだけど……」
『それなら私、今から先輩の家行きますよ。昨日の夕飯の残りでよければ冷蔵庫にありますし。それとも先輩、何か食べる物ありました?』
「ないけど……。え、くれるの?」
『はい。なので先輩は食事のことなんて気にせずに準備しててください。その方が早いです。今すぐ向かっても大丈夫ですよね?』
「ああ。俺はいつでもいいぞ。寝起きでぼさぼさだけど」
『ふふ。そんなの全然気にしないでいいですよ。ではまたすぐに』
「おう」
都筑が通話を切ったのを音で確認してから、俺も終話ボタンを押した。
さて……と。
せっかく都筑もああ言ってくれてるんだ。
少しくらい準備してないとな。
それにしても都筑のやつ、この前会ってから妙に絡んでくるな。
見た目が変わったと言っても都筑は都筑だし、ただ昔馴染みの先輩に会って懐かしさと珍しさから声掛けてきてるだけだとは思うんだけど……。
――他意はない……よな?
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