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第五話:いっそ死にたい
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「ただいま」
「おかえり~」
あれからなんとなく家にすぐ帰る気になれず、コンビニで漫画を立ち読みして時間を少し潰した後に家に帰った。
荷物を降ろしてリビングに戻ったところで、昨日と同じく食事を食卓に並べていた母さんが申し訳なさそうな顔で言った。
「凌太、ごめんね。さっきそこで涼音ちゃんに会って、その、引っ越すこと言っちゃった」
「――え?」
脳天を鈍器で殴られたかのような衝撃が走った。
「ごめんね、昨日、今日伝えるって言ってたし、てっきり伝わってるものだと思って……」
「あ、あぁ……。それで、涼音はなんて言ってた?」
「びっくりしていたようだけど、特に何も。普通に会話して解散したわよ」
「そ、そっか。それならいいんだ」
涼音にとっては大したことじゃなかったのだろうか、と一瞬考えたところで、すぐに思いなおす。
そんなわけない。きっと処理しきれなくなっただけだ。さすがに長年の付き合いがある分、そこを間違えたりはしない。
そこからは自動化したかのように食事をとり、風呂に入り、部屋に戻った。
これからどうしよう、と悩む。頭がぐちゃぐちゃだ。何も考えがまとまらない。
明日言おうか。いや、そもそも明日は会話してくれるのだろうか。きっと明日は朝、迎えに来たりはしないだろう。そして一緒に帰ったりは……しない気がする。少なくとも誤解がとけるまでは。
もしかしたらこれで昼間の一件は誤解だとわかってくれたか? でもそれだときっと、涼音より先に里香に伝えたと思うよな。あぁ、もう! それはそれで面倒なことになるな、くそ。
頼むから出てくれよ、と一縷の望みをかけて電話帳から『後藤涼音』を選び、タップしてコールする。
すぐに呼び出し音が鳴るが、電話に出る気配はない。
たっぷり三分ほどそのままかけ続け、諦めて仰向けにベッドに倒れ込む。
あーもう、いっそ死にてぇ……。
「おかえり~」
あれからなんとなく家にすぐ帰る気になれず、コンビニで漫画を立ち読みして時間を少し潰した後に家に帰った。
荷物を降ろしてリビングに戻ったところで、昨日と同じく食事を食卓に並べていた母さんが申し訳なさそうな顔で言った。
「凌太、ごめんね。さっきそこで涼音ちゃんに会って、その、引っ越すこと言っちゃった」
「――え?」
脳天を鈍器で殴られたかのような衝撃が走った。
「ごめんね、昨日、今日伝えるって言ってたし、てっきり伝わってるものだと思って……」
「あ、あぁ……。それで、涼音はなんて言ってた?」
「びっくりしていたようだけど、特に何も。普通に会話して解散したわよ」
「そ、そっか。それならいいんだ」
涼音にとっては大したことじゃなかったのだろうか、と一瞬考えたところで、すぐに思いなおす。
そんなわけない。きっと処理しきれなくなっただけだ。さすがに長年の付き合いがある分、そこを間違えたりはしない。
そこからは自動化したかのように食事をとり、風呂に入り、部屋に戻った。
これからどうしよう、と悩む。頭がぐちゃぐちゃだ。何も考えがまとまらない。
明日言おうか。いや、そもそも明日は会話してくれるのだろうか。きっと明日は朝、迎えに来たりはしないだろう。そして一緒に帰ったりは……しない気がする。少なくとも誤解がとけるまでは。
もしかしたらこれで昼間の一件は誤解だとわかってくれたか? でもそれだときっと、涼音より先に里香に伝えたと思うよな。あぁ、もう! それはそれで面倒なことになるな、くそ。
頼むから出てくれよ、と一縷の望みをかけて電話帳から『後藤涼音』を選び、タップしてコールする。
すぐに呼び出し音が鳴るが、電話に出る気配はない。
たっぷり三分ほどそのままかけ続け、諦めて仰向けにベッドに倒れ込む。
あーもう、いっそ死にてぇ……。
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